えっ、なにそれ、えっ?
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
家に戻って、ロサの部屋まで行くと、ルーナが二人に突撃した。
それはもう、豪速球とかの比じゃないくらいに勢いよく。それを受け止めた二人は若干バツが悪そうな顔をしている。ルーナが何を思っているのかぐらいは気づいたのだろう。
「あはは.....ルーナ、ただいま。心配させちゃったね。ごめんね?」
ロサが苦笑いして、膝立ちになり、ルーナと顔を合わせて抱きしめる。
「ルーナ、お前には話しておくべきだった。すまん。」
レサはしゃがんでルーナの頭を撫でながら素直に謝る。
当のルーナは、やはり心配だったようで、安心からか、泣き出してしまった。仮に、ルーナがスキルで見ていたのなら、心配させてしまうだろう。
というか、他のスキルすらも騙すことができるのか。『偽装』は。やっぱり強力な能力だな。これを使えるのが味方で良かったよほんとに。敵に回されたら勝ち目ないしな。
泣いているルーナをあやす二人を見て、今は3人だけにしてあげようと、その場を離れる俺だった。
俺は自分の部屋へと戻ると、荷物を机の上に置き、ベッドに寝転ぶ。
なんかね、さっきからちょっと眠いんだよ。モルと似たような感じで副作用みたいなのが出てるのかも。
『いや、確実にそうではない。おそらく、精神的な負担がかかっておったのじゃろう。無理をせず、休むのが良い。』
モルの言葉を聞いて、少し納得する。ある意味、あそこまで感情出したのは久々だったかも。
『全く、お主が雨とやらを降らせたときはヒヤヒヤしたぞ。氷の礫でも降らせるのではあるまいかとな。』
だから、避難するように言ってたのか。あと、ヒヤヒヤしたって、氷とかけてる?
『かけておらん。はあ。今はいいから休め。』
そういうモルの言葉に甘えて、休むことにする。
ベッドの上で目をつむると、やはり、モルの言った通り、精神的に疲れていたのか、ウトウトしてくる。意識が薄くなっていき、もはや何かを考えているという感覚のみが残る。しかし、何を考えているのかはわからない。
そうしているうちに、その感覚すらも完全に消え失せた。
光が差してくる。しかし、その光は目に見えるのに、なにかに遮られて当たることは出来ない。
その何かは少しだけ動いた。具体的な形は逆光になっていて知ることが出来ない。しかし、近いのに遠い、手が届きそうなのに届かないという、奇妙な錯覚を覚えさせる、なんとも不思議なものであった。
「私の名前を知っているか?」
年を取った男の人のようなしわがれた声で質問を投げかけてきた。
俺は、答えようとするが、口が開かない。というより、口に当たる部分の感覚がない。仕方ないので、首を横に振る。
すると、その影は、ふぅっとため息をついたあと、こんなことを言ってくる。
「その世界と管理側の体制が崩れ始めてきているようだ。もとに戻すには***をなんとかするしかない。***を見つけたらすぐに潰せ。時間がかかりすぎると取り返しのつかないことになる。」
わけがわからなかった。いちばん大事そうな部分は聞き取れず、何に対して何を行えば良いのかわからない。質問したかったが、口の感覚がなく、なぜか喋ることが出来ない。
しかし、その意にそぐわず、体が勝手に頷いていた。
その人物は笑っている気がした。
光が閉じ始め、何かがいるという気配すらも消える。光が完全に消えると、真っ暗な世界となった。それと同時に、何かを感じることもなくなった。
意識が浮上する。顔のあたりが熱い。どうやら太陽が高く昇って俺の顔に日差しが降り注いでいるようだ。
布団に深く潜り、その日差しを遮ろうと思い、目を瞑ったまま辺りを手だけで探るが、なにもない。
仕方なく、薄く目を開けてベッドのすぐ横を見てみると、蹴っ飛ばしていたようで、床に落ちていた。
それを足ですくって、体の上に乗せる。全体的に布団が覆いかぶさるように調整して、ちょうどいい感じになったので、布団を頭までかけて再び目をつむる。
なんとなく体勢が苦しく、寝返りを打とうと少し体を横に向けると、少し違和感を感じた。
俺が腕を置いているわけでもないのに、なぜだかベッドが少し沈んでいる感覚がある。しかも、指先で触れてみると、ほんのり温かい。まるでそこに誰かがいるようだ。
また薄く目を開いてみると、布団の向こうに誰かがいる影が見えた。
誰かと思い、布団を持ち上げて見てみると、そこではなぜかルーナが眠っていた。また、ルーナを抱えるようにしてその奥にロサがいた。
なぜここで眠っているのかは謎だが、まあほぼ毎度のことだし、この際気にしない。二人が落ちないように、俺はベッドの端に少しズレて布団にくるまる。
もう一度この眠気に身を任せて眠る......と思ったが、眠れない。どうやら、必要以上に日の光を浴びて
いたようだ。おかげでいつまで目を瞑っていても眠くならない。
だけど、それと反したようにまぶたがとてつもなく重い。眠くないのに目が開かないときがあるのは、無意識的に起きるのを気だるがっているのだろう。
そして、起き上がろうとして、はたと気がついた。
あれ?もしかしてとは思うけど、丸一日寝てたってことはないよね?と。仮に、ルーナとロサが昼寝をするならロサの部屋で寝れば良い。そして、いつもロサがこの部屋で寝てるタイミングは朝方だけ。だったら、俺が丸一日寝てたという可能性も捨てきれない。
そう考えてしまったが、普通に考えてそれはない。寝る前の日差しと比べて、今はそれより高くなってるし、丸一日寝たという腹の空き具合と喉の乾きかたじゃない。
この場合、理由はわからないが、ロサとルーナはここで昼寝をしているということになるだろう。
お腹が空いてきたし、昼をかなり過ぎてそうだから、飯を作らないとな。さすがにもう辛抱できていないだろう。
二人を起こさないようにそっと部屋を出て、昼食を作りにキッチンへと行く。そういや、俺自身のステルススキルはいつ身についたんだろう。なるべく起こさないように忍び足で部屋を出たけど、こっそり行動し始めたのはいつからなんだろうか。
もしかしたら、親の目を盗んで歩いていたことが原因なのかもしれない。真実は定かではないが。
っと、その話は一旦置いといて、今日は何を作ろうか。シンプルに、鶏肉を使った料理にでもするか。鶏むね肉を使うから、カロリーはそこまで高めじゃない。味だけと感覚で言えばなのだが。
なんか、脂っこいものを食べると、なんとなくカロリー多かったなっていう感覚になるんだよね......いや、シンプルに胃もたれしてるだけだわ。
そうそう、肉と言えば、俺ね、地元にそこ発祥の万能調味料があったんだよね。調味料としてはちょっとお高めなのだけども。とりあえず、肉にこれかけたら段違いに美味しくなるスパイスね。味付けに困ったらあれだけでいい。あれなぁ、こっちの世界にも似たようなのがあれば良いんだけど......
そうでなくとも、自分で作れるようになるのが一番なんだけどね。いくら使っても作れるならそれでい
いし。
『ふむ。お主がそこまで気にする味というものを味わってみたいの。』
記憶の中だけの味で我慢しててくれ。正直、あれは病みつきになるから、気をつけたほうがいいよ。絶対なんか危ないもん入ってるって。
『それは......大丈夫なのか?それが普及してるならとんでもないことじゃぞ。』
いや、今のはちょっとニュアンス的におかしいと感じるかもしれないけど、一応褒め言葉だから。
『そうか。それなら良いのじゃが......』
そうなんだよな。たまに思うけど、冷静に考えておかしいなと感じる言葉でも、日本語は成り立つことがあるから意味不明なんだよな。まあ英語の勉強しててもそう思うことはあるけど。
さてと。俺も作りますか。
まずは、鶏胸肉っぽい味の見た目ネギの野菜だか肉だか、分類がよくわからないものを軽く伸ばす。それを醤油とにんにく(もどき)に漬けておく。動物たちは苦手ってことだから醤油・マヨネーズに漬けておこう。
あんまり漬けすぎても味が濃くなるから、十分ぐらいで。このね、あんまり水分調整が難しいものだとスキル使うと高確率で失敗するから、これはもう、時間経過に頼るしかないんだよ。
そして、漬け込み終わった見た目はネギ、だけど、味と食感は鶏胸肉の食材を漬け地から取り出す。
それを熱して油を軽く広げたフライパンに放り込む。
これを焼き目がつくまで焼く。あのね、最近からだけど、別に、スキルを使って料理する時間を短縮しようとしなくても、いいのかなと思い始めてきた。料理って、やっぱ食べる以外にも作る楽しさはあるわけじゃん?それをすっ飛ばすのもなんだかなあって感じなんだよ。
好きな方にすればいいって話なんだけどね。気分によって使うか使わないかは変わりそう。
兎にも角にも、そろそろ焼き色がついてきたので、漬け地を入れて、少し醤油に焦がすぐらいまで中火で焼く。香ばしい香りが漂ってきたら、お皿に取ってこれで完成だ。美味しそう。
これをもう一つの、醤油マヨのようでも同様にやって完成だ。
......大量の焼きネギができたな。これにキャベツ付けてみ?わけがわからなくなるぞ。野菜なのか、なんなのか。というか、こいつの原料は何なんだろうか。というかずっと頭の中で引っかかってたわ。今思い出した。この見た目ネギ、味食感鶏胸肉の食材の名前。ポルック肉だ。今思うと、鳩の鳴き声みたいな名前だな。
とりあえず、キャジャっていうね、レタスともキャベツともどっちつかずの野菜を千切りにして皿に盛り付ける。
そこにポルック肉の照り焼きになったけど、とりあえず完成だな。結局、ポルック肉って言うからには、ポルックっていう生物がいるわけでしょ?どんな見た目なのだろうか。
ワンちゃん食材にスキル使ったらわかるとかある?......流石にないか。いやでも、やってみないとわからない。やってみよう......
“これはポルックの大腿筋にある肉です。ポルックは天敵を見つけると、ものすごい勢いで跳び跳ねて蹴ってから逃走します。しかし、自ら近づくという点で、非常に捕まえられやすい生物でもあります。普段は『ケロケロ』と鳴きますが、警戒心をあらわにすると、『ポrrrrrrrック!』というように鳴きます。”
いかん。最後で吹き出してしまった。唐突の巻き舌やめろ。というか、食材でもいけるんかい。それなら最初からそうすれば
よかったわ。
最後に関しては、絶対にそうとしか聞こえなかった。
というか、ケロケロって鳴くってことは、カエルってことか?確かに、カエルの足は鶏肉に風味が似てるとは聞いたことがあるけど。大腿筋って、ふとももでしょ?あの細いカエルの足でから取れるのかな?いや、案外、元のサイズがデカかったりするか。骨がないのは不自然だけれども。
たまに、なんかゲテモノと聞くと、実際には食べるのが怖いという人もいるだろうが、俺はうまくて食えれば別に元がどうとかは、あまり思わないから、ここ重要ね?あまり思わないから!気にならないタイプかな。
『そうは言いつつ、さっき強調したように、見た目ではなんとかならないものもあるのじゃろう?』
まあね。多少のグロならまだいいけど、どっかの国の料理のバロットっていう、料理とかは見た目からちょっと遠慮しときたいかなって。しかも、倒した動物を解体するときも、内臓が見えたときは結構ね、きつかったね。今は持てばすぐに解決だけど。
『そうじゃな......妾は『酸牙涼水血』が無理じゃな。』
なにそれ?
『どんな動物でも良いのじゃが、歯とその血、肉片を容器に入れて、毒沼に浸したあと、マグマのような灼熱の温度で溶かして、それを冷やした液体じゃ。言い伝えでは、これを飲むと滋養強壮やら長生きできるやら言われておるが、見ただけでかなり吐き気がしそうじゃ。』
うっわ。なにそれ怖っ。
『あまり思い出したくもないが、そうじゃな......とりあえず、この世のものとは思えん味じゃったぞ。』
そこまでいうと気になるけど、絶対に飲みたくないな。
いかがでしたでしょうか?今回は、モルから恐ろしい飲み物を、少しだけですが教えてもらいましたね。果たしてそれはどんな飲み物なんでしょうか?
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
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それでは、また次回お会いしましょう。




