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まぁ、とりあえず大丈夫そうだな。

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 アリサの様子を見に行ったが、少し熱で苦しそうにしながらも、しっかり眠っていた。しかし、おでこを触ってみると、少し温度は下がっていた。でもね、このタイプは、多分夜になって熱が上がるよ。


 部屋から出ようとしたが、水の量が減っていたことに気が付いたので、水を追加して置いておく。


 なるべく音を立てないように気をつけてたのだが、部屋から出るときのドアの音が大きかったのか、アリサが伸びをしながら「うぅ~ん」といううめき声のようなものを上げて起き上がった。


「あれ?ソータ?どうしたの?」


 俺の姿を見つけたようで、出ようとしたときに話しかけてきた。


 ついでに様子を聞いておこうと思い、部屋の真ん中に座る。アリサの顔を見ると、不思議そうな表情をしており、その顔はどこか熱を帯びていて、瞳も終始焦点が揺らいでいたことから、まだ体調は良くないのだろう。


「少しアリサの様子を見に来たんだ。起こしたのならすまん。」


 謝ると、アリサはうんうんと首を横に振った。


「大丈夫。むしろ、看病してくれてありがとう。」


 のどが渇いたのか、水を一口飲んでからふぅっと一息つく。


 それを見ていると、クルル~という子猫が甘えてくるような音が聞こえてきた。


 アリサを見ると、先ほどより少し顔が赤くなっており、お腹をおさえていた。


「アリサ、食欲はあるか?お腹空いたなら何か作るけど。さすがに野菜メインのものだけど。」


 速攻アリサが頷く。俺はそれに承諾し、一旦部屋を出る。飯は食えるうちに食ってた方がいいからな。寝る前よりは体調は良さそうだった。


 キッチンにいき、食材を見てみる。


 風によさそうなものか......地球だとゼリーとかプリンとかを買ってきてたからよかったけど、こっちで作るときねぇ......あとでプリンは作るか。牛乳を速攻買ってこないとな。


 料理ってなったら、おかゆが定番だけど......まあ、生米とかないし、食べやすさ的にはポタージュとかがいいのかもな。


 ってなわけで、初めて使うが、このサツマイモもどきを使おう。これはね、柔らかくして食べてみたけど、カボチャの味だった。見た目は普通にサツマイモ。


 正確なポタージュの作り方は分からないけど、火を通したカボチャに牛乳を入れて、味付けをして細かくすりつぶす感じだった気がする。


 ついでに人参も入れとくか。


 ってなわけで、ゲートで速攻牛乳を買ってくることにした。


 もはや最近顔なじみになってきている今日この頃、この市場のおっちゃんに声をかける。


「おっちゃん、ミルクまだある?今すぐ必要なんだけど。」


 すると、奥を見つめるように目を細めていたいかつめの男性が、俺の方を振り向いた。


「お~、ソータじゃんか。ミルクだな?あるぜ。ちょっと待ってろすぐに持ってくるからな。」


 そう言って、店の奥に引っ込んでいった。


 ちなみに、俺がおっちゃんと呼んでいるのは、本人の要望があったからだ。そのため、この店の客はほぼほぼ全員が『おっちゃん』と呼んでいる。


 ここの牛乳ね、結構味が濃厚で美味しいのよ。バターも生クリームもそうなんだけど。牛じゃないらしいけど。


 独自の入荷ルートがあるらしい。教えてはくれなかった。そりゃそうか。


 そのまましばらく待っていると、おっちゃんが戻ってきた。


「ほら、ご所望のミルクだ。また来てくれ。」


 お金を渡すと、それだけ言って、他の客に呼ばれ、店の中のどこかに消えた。


 俺も人目につかない所でゲートを使って家に戻る。


 サツマイモもどき、まあ、パンプテトって言うんだけど、このパンプテトに火を通して柔らかくする。これを鍋に入れ、鍋を持ってすりつぶすイメージをして、ペースト状にする。人参入れ忘れてたので、人参もペースト状にして混ぜる。


 それに牛乳、コンソメ、塩、黒コショウを入れて混ぜる。とろみがつくぐらいまで煮込んだら完成だ。とは言っても、牛乳入れた時点でそこまで緩くなかったから、元からとろみは結構あるんだけどね。


 次に、食後のプリンを作っておく。カラメルは作るの苦手だから、作らないとして、プリンの本体だけ作るか。


 まずは、卵を溶き、どれぐらいかはいつも計らないけど、まあお好みの甘さで。今回は甘さ控えめ。それを40度程度の温度にあたためた牛乳に入れる。


 それを一度灰汁取り網に通す。これをすることによって、表面の大きい気泡や卵のカラザという白いなんか細いやつを取る効果がある......と思う。


 これをすれば、しない時よりかは口あたりがなめらかになる。今までに何回か試したが、この工程を挟まないと、口あたりが悪くてかなり気になったしな。


 これを型に入れて蒸しておくのだが、普通に蒸した方が良さそうなので、普通に蒸す。時間は多少かかるけど、冷やすのは結構早くできるしな。


 一旦ポタージュはできたので、アリサにポタージュを持っていく。


「アリサ~、とりあえず食べやすそうなものにしておいたぞ。」


 俺が持っていくと、アリサは座っていた。俺に気が付いたのか、俺の方を向く。


「あ、ソータ。お帰り。いい匂いがする。」


「食べやすいような料理にしておいたぞ。ゆっくりでいいから落ち着いて食べなよ。おかわりが欲しかったら言って。」


「うん。ありがとう。おかわりは多分大丈夫そう。」


 スプーンと共に器を渡す。何となくこういうポタージュは、木のスプーンのイメージがあるから、木のスプーンにしておいた。


 アリサが食べ始めたのを見届けてから、部屋を出る。


 部屋を出て、今日の夕食を作る。まあ、これをかさましするだけだけど。


 かさましすると、みんな分ぐらいの量になった。最初より少しミルク感が強くなったが、それはパンプテトの追加によってどうにかした。肉がないとか騒ぎそうだけど、ミルクが好きなようだし、まあ文句は出なさそうだけど。


 できたけど、まだ日も沈んでないし、夕飯の時間まで本を読んでおくか。


 自室に戻り、本を取って椅子に座る。本を開き、しばらく様々な種族のちょっとした知識を頭に詰め込んでおく。


 ふと顔を上げると、外が暗くなっていて、お腹もグ~と、音がなりそうな感じで小さく震えていた。


 そんなわけで、全員を飯に呼ぶ......前に、一度アリサの部屋へと向かう。


 部屋に入ると、アリサは寝ていた。呼吸が若干荒い様子から熱が上がってきたのだろう。しかし、表情は穏やかであることから、症状が緩和していることもわかる。


 机の上には器が置かれており、中身は空っぽだった。ちゃんと食べきってくれたみたいだな。


 これを流しまでもっていって、洗って器を元の場所に戻す。


 そして、全員を呼んで、夕飯を食べる。


 食べ終わって、片づけをした後、今日はみんな洗われてすねてるのか、そそくさと逃げて行ってしまった。ライアとシルグのみその様子を見て苦笑してたが。みんな......そこまで嫌がらなくても......


 まあいいや。本の続きを読むか。


 またしばらく読んでいると、ガチャッとドアが開いた音が聞こえた。誰かと思い、顔を上げると、ロサだった。


「ソータ、今何してたの......って、本読んでたんだね。」


「うん、そうだけど、どうしたの?」


 俺は、本にしおりの代わりに乾燥させた葉っぱを挟み、本を閉じる。


「暇だったからかな。お姉ちゃんはまた変なことしてて、ルーナも寝ちゃって、アリサも熱出てるから、暇なんだよ。だから、何かちょっかいでもかけようかなって。」


 そのちょっかいをかけるということを口に出すのはどうなのだろうか。


 そして、机の上に置かれた本に興味が惹かれたのか、ロサはなんとなしに一番上の本を手に取った。そして、パラパラと開いてみて一言。


「何これ。」


と。ロサが開いたのは、なぜか日本語で書かれたあの古い本だった。そして、絵を見て鳥肌でも立ったのか、すぐにおいて腕をさする。


「なんか、これ怖いんだけど。しかも僕には絶対に読めないような字だったし。ソータはこれ読めるの?」


「所々汚れてて全部は読めないけど、汚れてない所は読めるよ。」


「ふ~ん、そうなんだ。ソータって頭いいんだね。」


「いや、俺の故郷の文字と同じだったから読めただけだよ。」


 事実、これを書いたのは日本人だろう。江戸時代に書かれたと言われても違和感のないぐらいの書かれ方だった。しかも、俺が読めたのも辛うじてというレベルだ。


 その後、色々と本を開いてみるも、ロサの性に合わなかったのか、苦い顔して結局本を置いた。


 そしてなぜか俺にもたれかかってきた。


「ねぇ~暇だから僕に構ってよ~。」


「なんでだよ。それに、なにかってなに?」


「う~ん、分かんない。なんだろうね......そうだ、僕の話に付き合ってよ。」


「話って?」


「僕の昔の話とかだよ。ソータに僕の昔のこととかあまり話してないしね。」


 まあそれはたしかに。でも、なぜ今このタイミングなのだろう。


 どことなく違和感を感じつつも、ロサの話に耳を傾ける。


「えっと、ソータにルーナが連れ去られる前の話はしたよね?」


 俺はコクリと頷く。


「じゃあ、今から話すのはそれより前の話なんだけど、あの時は僕たち四人で暮らしてた。」


 思い出しているのか、首を少し傾げ、上を向きながらつぶやくように話す。


「僕たちの父親もね、物心ついて少ししてから、いなくなっちゃったんだ。でもね、別に僕たちが嫌になって出ていったってわけじゃないと思う。お母さんからの話で聞いたんだけど、ほぼ同時に僕たちの叔父さんもいなくなってたらしい。」


 今聞いた情報だけだと、まだ何も分からないな。


「叔父さんとはそこまで関わりなかったけど、会うたびに僕たちに不愉快な目を向けてきたから、正直嫌だった。でね、その叔父さんなんだけど、この前お姉ちゃんの記憶を見た時にそれっぽい人影が見えたんだ。」


 え、それ完全に黒じゃん。しかも、さっきセクの部屋で立てた仮説と通ずる点もあるし。


「その顔......やっぱりソータも怪しいって思うよね?だって、僕たちは吸血鬼族(ヴァンパイア)。もしも外部の人に見られたとか情報を知られたとかなら、記憶を取るまで絶対に逃がさないんだよ?そんな僕たちが、人間が集落に近づいてきたことに気付かないなんて思う?」


 そうなんだよな。絶対にないとは言えないとはいえ、誰かしら外部の人が近づいてきたのなら、気付きはするもんな。


 俺は首を振り、ロサの問いに答える。


「そう、ありえないことじゃないけど、わざわざ人が戦力を引き連れてくるような場所でもなかったんだ。そもそも仮に吸血鬼族(ヴァンパイア)だと知ったとしてだよ?知っただけでまともに情報もないのに人員を投入するかな?」


 するわけがない。いや、そういう立場になったことがないから分からなくはあるんだけど、人の命に関わりかねないことだよ?仮にメリットがあってもデメリットの方が大きすぎると思う。


 その旨を伝えると、うんとロサは頷いた。


「そう、どうしても釈然としないんだよ。情報がないってことは、争っても勝ちが見込めない。逆に負ける確率の方が大きくなるだろうね。だから、少なくとも僕たちの集落から人間に情報を渡した人物がいるんだろうね。」


 そう、ちょうど俺と同じ結論だった。ふと疑問に思ったことだが、考えてみれば少し辻褄の合わない部分が見つかる。しかし、そのロサたちの父親と叔父が出ていったことを考えればあり得る話かもしれない。


「ちなみに、ロサたちのお父さんと叔父さんがいなくなったのはいつ頃なの?」


「分かんない。小さいときってことしか分かんないんだよね。でも、叔父さんがいなくなったタイミングによるけど、今一番疑わしいのは叔父さんなんだよね。」


 どのみち、ロサたちの父親がいなくなった理由が少し気になるけど。


「まあ、一区切りして僕も気になっちゃったから、今話したんだけど、どうしても釈然としなかったからソータに話したんだよね。」


 まあでもたしかに、そういう悩みは自分の中だけで抱え込みときたくないよな。


「それだけ話したかったんだ。僕にはどうしても解決できない悩みなんだよね。」


 やっぱり、何かおかしい。今ロサが言った時も目を若干伏せていて、何かを隠している気がする。


 その疑問の正体を尋ねようとしてみたが、それより先にロサが部屋を出て行ってしまって、尋ねることができなかった。




 いかがでしたでしょうか。今回は、ロサが蒼太に過去の話をしましたね。前に蒼太がたてた仮説を紐づけるような話でしたね。


 そして、気づけばもう100エピソード目です。意外と早い気がして、最初に比べ、少しでも文章力が成長してたのなら嬉しいです。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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