やっぱり私は、殿下の事が嫌いです!
ラストです!いつもより長いです。スイマセン。
あれから数日がたった。
私は今、ロットと居る。
厳密には、ロットを監視しながら、コンラート殿下と荷馬車の御者席に座っている、だ。
「何で私がこんなことを…」
ぶつくさと文句を言いながらも、思いの外手際良く荷を積み込んでいく。
両陛下から彼に課せられた罰は、陸軍で初級編から上級編までの剣技・体術訓練フルコースを30日間と、私の小間使い20日間、というものだった。
でもさぁ、根性のひねくれた貴族のお坊ちゃまが何の役に立つと?
いい迷惑なのだけれど、流石に「邪魔だから要りません」とは言えず、学業と遠慮した呈で、半分の10日間と店の手伝いに切り替えて頂いた。というわけで、ロットには広場の店と公園で使う食材の運搬をさせている。
というか、それ以外させられない。
我が家の経営モットーは、風通しの良い雇用関係である。ロット伯爵令息に対し、私とほぼ同じ印象を抱いた雇っている店主達に、アレは要らぬと言われては、無理にねじ込む訳にもいかない。そりゃあそうよね、店員はお客さんに失礼があったら困るし、キッチン担当は衛生と味の面で嫌だし、小銭とか見たことすら無さそうだから、会計なんて出来そうにもないし。唯一出来そうなのは、馬を扱う荷運びだ。
馬は乗るだろうから大丈夫だろうと思っていたけれど、指示を出さずとも積み込みに無駄がないのは、有難い誤算だった。
両陛下から私の言うことを聞くようと命令されているが、本当に指示を聞くか怪しいからと、コンラート殿下と多分どこかその辺にいる護衛が付き添って下さったが、無駄になってしまった。
「自業自得じゃないか。」
ぶつくさとうるさいロットをコンラート殿下が睨む。
「チビ助うるさい」
歯牙にもかけないロット。
「…母上に言いつけるぞ?」
「っ!狡いぞ!!」
市場に着くまでも着いてからも、既に十数回同じやりとりが行われている。良く飽きないなぁ二人とも…
先日シャルル様から聞いた話によると、あの日、私が退席下後、マレルリアート侯爵とロット伯爵夫人が王宮に乗り込んで来たそうで、そのまま親族会議となったらしい。
レオンハルト第一王子とロット伯爵令息は、ずいぶんと絞られたそうなのだが、そこで語られたロット伯爵令息の自白が、まぁ馬鹿らしくて、更に怒られ、最終的にロット伯爵夫人にひっぱたかれたらしい。小さい子の様に、お尻を。
ロット伯爵令息、妃殿下のことをずーっと好きだったんですって。それこそ、子供の頃から。よくある話だ。『大きくなったら隣のお姉ちゃんをお嫁さんにするぅー!』的な。近所のマシューくん4歳も私に同じ事を言っていた。
それを陛下にかっさらわれた、と。
『王位しか取り柄も無く、パッとしない男のくせにサァを盗った!レオは顔がサァそっくりなのに中身がパッとしない父親そっくりで、腹が立つんだ!コンラートは頭の出来はサァそっくりなのに、見た目は父親そっくりで、頭にくる!サァは僕のお嫁さんになるはずだっんだあっ!』
この発言に、思うところでもあるのか、陛下と侯爵様は残念なモノを見る目だったそうだ。
「兄上、大丈夫かなぁ…」
独り言とも、私に話しかけたとも取れる声量でコンラート殿下が呟いた。
罰せられたのはロットだけではない。レオンハルト殿下もやっぱり罰があった。
当初私が希望していたデート広告作戦、の後に、王都から早馬をとばしても三日はかかる海軍基地で初級編から上級編までの操舵・剣技・体術訓練フルコースを30日間と、その30日間学園を休んだからといって学園での成績を落とさないこと、落とした場合は正式に婚姻するまで、公務以外でのシャルル様への接触は禁止というペナルティ付。
「まぁ、大丈夫じゃないですか?シャルル様に会えない以外は。」
シャルル様曰く、毎日便箋10枚以上の手紙が届くとのこと。恋心を自覚した今、彼にとって、王都と基地の物理的な距離は果てしないものだろう。
「気が触れて帰ってきたらどうしよう…」
また振り回されるんだろうね、コンラート殿下は。弟だもの避けられる訳がない。頑張れ、第二王子!
「おい、終わったぞ。」
いつの間に来たのか、ロットが荷台から声をかけてきた。見れば、既に荷は無駄なく無理なく詰まっている。そのまま荷の隙間に座り込もうとするロットを、コンラート殿下が止めた。
「お前はコッチ。荷を運搬し終えるまでが仕事だろ!」
「休ませろ」
「働け。伯母上に言いつけるぞ?」
「チッ、今度は母上かこのクソガキ!」
「フン、何とでも言え。」
睨み合う視線が、突如私へ向く。
「じゃあせめて、隣に来てくれないか?ライナール嬢。」
「え。」
やだなぁ。
「お前なんかに近寄らせる訳がないだろ!」
「さっきからお前だけ可愛い女の子と過ごして狡いだろ」
「お前がリアにどれだけ迷惑をかけたか!反省してないだろっ!」。
「ソレとコレとは別の話だ。知らんのか?可愛い女の子は隣で眺めるだけで癒やしになるんだぞ。見ろ!長い睫毛が縁取る黒目がちな瞳!艶やかなオニキスの髪!血色の良い健康そうな肌も、貴族の娘とはまた違う趣があって実にいい!力仕事を終えたのだから、労われるべきだろう!!」
エロオヤジのような発言。そういえばシャルル様にちょっかいを出していたのも、可愛い女の子は平等に口説く事をポリシーとしているから、という理由だったって、困惑顔でシャルル様が言ってたな。
「黙れ色ぼけ!この色情魔め!さっさと仕事しろ!!」
なおもぶつくさとうるさいロットへ手綱を押しつけ、御者席から荷台へ移動が済むと、荷馬車は動き出した。
幌を開けて外を見るコンラート殿下の髪が赤く光っている。式典の時だけでも照明で照らし出したとしたら、わが国の王子は二人とも見目麗しいと言われるのだろうなぁ。まぁ、第一王子を差し置いて第二王子を照らすのも妙な話になってしまうから有り得ないけど。実に残念だ。
「なあ?リア?」
無駄に眩しいコンラート殿下をぼんやりと眺めていると、少し控えめな声で呼ばれた。
「何ですかー?」
「シャルや僕らと、付き合っていくのはこりごりとか、思うか?」
完全に外を見てしまっていて、私から顔は見えないけれど、難しい顔をしてるんだろうなと想像のつく声音だった。どうもコンラート殿下は思い詰める、又は思い込む質だから。
「思ってませんよ。お友達、ですからね。」
「そうか」
振り向いたコンラート殿下は、それはそれは愛らしい顔つきで微笑んでいた。
このくらい常に可愛かったら、弟欲しいなぁ。
「なぁ、リア?」
「はい?」
「卒業したら、僕の補佐官として宮廷で働かないか?というか、働いてくれ!」
瞳をきらっきらさせたままにじり寄ってくるコンラート殿下。待て待て待て待て!
「何おっしゃっちゃってるんですか!いくら首席って言ったって、私、貴族の息子じゃなくて商家の娘ですよ?!役人とか無理無理!」
「爵位を授ける!僕が何としてでももぎ取る!だから頼む!!」
「いやいや!いらないですし!私店あるし!」
「兼業で構わない!」
「ダメでしょう!ソレ!」
「友達だろ!助けて!!どう考えても、あの兄上を僕一人で補佐し続けるのは厳しい!頼れるのはリアだけなんだ!お願いっ!」
涙目で縋ってくるコンラート殿下。今度は泣き落とし?短期間でずいぶん小癪な手を使うようになったものだ。
なんて、場合ではない。少しはマシになったとしても、馬鹿王子を真っ当な王にするだなんて、骨が折れるどころか砕けて無くなるに違いない!友達といえどもそんな割に合わない話、冗談じゃない!
「イヤですっ!!!!」
ああもう!居ても居なくても忌々しい馬鹿王子!
やっぱり私は、殿下の事が嫌いです!
-fin-
無理やり感は否めませんが、とりあえず、初投稿連載終了です。
拙い文で、読みづらい、分かりづらい所も沢山あったと思いますが、お付き合い頂いた皆様、本当にありがとう御座いました!




