10話 スク水を求めて 前編
全中後編です。
王立劇場が公演を行う日取りは決まっている。
今すぐにでもサラに会いに行きたいところではあるが、かといって、いつでも乗り込める場所ではないのだった。
そんなわけで、サラの事情も気になるし、脚本家メルクにも接触したいのだが、それは一旦お休みだ。
息抜きや娯楽も、国の改革と同じくらい重要なのである。
「うーむ」
スク水の試作品ができたと聞いたので、ジルへのセクハラを捗らせるべく、服屋を訪れた早朝。
期待とは裏腹に、スク水の出来はいまいちだった。
「なんつーか。伸縮性が足りないんだよな」
「伸縮性、ですか」
「ああ。あと、濡れたときにヌメヌメと光る感じが欲しい」
縫製はよくできている。問題は生地なのだった。
服屋に生地サンプルを見せてもらいつつ、最適な素材について議論する。
その中で、一切れ、水着の生地によく似た食感のものを見つけた。
「これは?」
「南のエルヴァ山に出没する魔物の皮膚を加工したものです。ヘケトと呼ばれる非常に強力な生物なのですが」
「今、生地に在庫はあるか?」
「残念ながら、ほとんどありませんね。強い魔物ですので、そう簡単に入荷することはできないのです。どうしても、と言うなら、腕利きの傭兵を探すほかないでしょう」
うーむ。
こういう場面でこそ、俺が思い描くギルド構想が有効なんだけどな。兵隊ってのは危険が迫らないと魔物退治ができないが、ギルドなら魔物の生息地帯に踏み込んでハンティングすることができる。
そうなれば、希少とされている素材も市場に出回るようになり、技術・文化の発展が見込める。
ギルド設立の優先順位を、ワンランクアップさせた方がいいかもしれない。
「……仕方ない。俺が取ってこよう」
「旦那が?」
「ああ。魔法にはそこそこ自信がある」
王都に居を構え、生活が落ち着いてから、神器リベラリタスの扱いについても勉強している。
試行錯誤する中で、その反則じみた機能の使い方も、だんだんわかってきたのだ。
たぶん、リベラリタスのチート能力は、使いこなせば一人で一国を相手取ることができるレベルだ。
「しかし、旦那。一人で魔物退治というのはオススメできません。どんなに熟練の魔法遣いでも、近接戦に優れた協力者は連れていくべきかと」
「そうか?」
「とくにヘケトの場合は必須と言ってもいいでしょう。若い女性の前衛。できれば乳房の豊満な者を」
「は? どうして」
「だって」
ヘケトは、獲物の動きを封じるために、ねばねばした粘着質の白濁した唾を飛ばすのです。
あまりにゲスすぎる服屋の魂胆にちょっと引いた。
どうやら俺がセクハラ大好きな性の探求者であると誤解しているようだが、それは間違ってる。これだけは断固として主張するが、俺はジル以外にセクハラするつもりはないのだ。
でも、せっかくのアドバイスを無駄にするのも悪いな、うん。
前衛は連れていくことにしよう。
「で、旦那。相棒に心当たりはおありで? なければ、うちの顧客で腕利きの冒険者がいるので、紹介して差し上げることもできますが」
考えてみる。
アイラとナーシアは王都を離れていて。
ジルやモニカは戦闘能力など皆無。
他にろくな知り合いなんて……いや待て、そういやナーシアの部下を一人、紹介されていたのだった。
『あの子』なら、ナーシアほどでないにしろ、それなりに戦えるはずだ。
アイラが国を作り変えるべく動いていることも知っているし。
最適な人員と言っていいだろう。
「心当たりは……ある」
でも、あの子に会うには、王宮まで出向かなきゃいけないんだよなぁ。
マナーとかわかんねぇし、なるべく踏み込みたくない場所ではあるのだが……仕方あるまい。
「そのヘケトって魔物について、他に知ってることがあれば教えてくれ」
ジルにセクハラを敢行するために、この魔物退治は避けて通れないイベントだ。
俺は気合を入れて、魔物退治の作戦を立てることにした。
昨日キャラクター資料集の更新がきちんと反映されていなかったので加筆し直しました。
・レン、ジル、モニカ、サラのプロフィール
・ジルのイラスト
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