柳生十兵衛参上
おじいさんのありがた~い おはなし。
一行は無事転送されたようだった。
「ここが京?」
「なんか見たことあるだ。」
「又八さん、京に行ったことあるの?」
「いや、ここは……。」
一行は、何か見覚えのある竹林の真ん中に転移していた。
「おや、みなさん、どうしてこんなところまで?」
右目に眼帯をつけた少年が、気配を感じてやってきた。
「もう、あのバグうさぎ、また間違えてる。」
「まだ、土の中に転移されなかっただけラッキーね。」
「でも、ここから京は遠くはありませんよ。」
「ええ、われの足なら一日も歩けば、でもなぜ京に?」
事情が分からない十兵衛に金さんが事情を説明した。
「京の土御門家と大江山、異界の門の封印か。でも、土御門は会ってくれるかな。」
「まあ、いざとなれば、これを見せれば……。」
金さんは自分の脇差をポンと叩いた。
「まあ、われも」
十兵衛は自分の眼帯をポンと叩いた。
「おいらも」
又八は自分のお腹をポンと叩いた。
「又八さん、どうしたの?」
「こっちがいい音するだ。」
安倍晴明の子孫は、晴明から14代目である有世が、室町幕府三代将軍足利義満に重用されて以来、当主の屋敷が京の土御門の地にあったため、代々土御門を名乗り、江戸時代になってからは、全ての陰陽師の支配、任免を独占する陰陽道宗家として栄えていた。ただし、その役割は天文、歴作成が中心であった。
一行は京に着くと、土御門の屋敷に向かった。
立派な屋敷の中に入ると、当主は多忙のため会うことはできないと断られた。
十兵衛が柳生を名乗り、金さんが官位である左衛門少尉を名乗っても無駄であった。
「相手は公卿様だからな。」
「おれの官位低いからなぁ。」
仕方なく十兵衛が、葵のマークをつけた眼帯を見せると、
「こんないたずらをしてはいかん。」
と叱られ、金さんが、葵の御紋の入った脇差を見せてやっと、3日後の面会の予約を取ってくれた。
「記録だと、門番は式神だったらしいけど、ここの人は普通の人間ね。」
ムーンが マーキュリーのスキャンしている端末をのぞいている。
「安倍晴明の屋敷はこの場所にあったわけではありませんからね。」
「とりあえず、異界の門があった場所を見つけて」
「どうやって見つけろっていうのムーン!」
そもそも異界の門のあった場所を確認して、封印が解けてないかを確認するにも、誰も霊視ができる人間がいない。霊視するためのヒントが晴明だったのだ。
「資料によると源頼光たちは、晴明からもらった呪符で見ていたみたい。」
「ね。又八さん、じゅふって何?」
「たぶん、昔のお菓子だ。」
「どんな味がするの。」
「なんか水っぽい感じがするだ。」
「お札よ、お・ふ・だ! 怨霊退散!!!」
あまりのボケボケした会話にジュピターが、いらいらしながらつっこんだ。
「お札って食べれるんか?」
「食べないから!」
「あっ、あそこの叔父さんならわかるかも。」
十兵衛は、自分の叔父にあたる幸徳井友景の屋敷に一行を連れて行くことにした。幸徳井家は安倍晴明の末裔の家系で、その養子として入ったのが友景だった。
「おじさん、遊びに来たよ。」
「おう、宗矩のところの子か。どうしたんじゃ?」
「この人たちが、安倍晴明の呪符について知りたいんだって。」
「なぜ、それを知っているんじゃ。幸徳井家の家宝じゃぞ。」
「呪符があるんかい?」
「晴明公の遺品と思われるものはほとんどなくてな。あっても土御門家が独占しとるんじゃ。で、わが幸徳井家に伝わっているのは、何に使ったかわからん紙切れが一枚じゃ。」
「紙切れって、呪符なのかい?」
「あなたは?」
「おいらは、遠山左衛門少尉、江戸町奉行遠山金四郎さ。」
「そのお奉行さまが、何の御用で?」
金さんは江戸の町で起こっていることと、霊や異界の門が見える呪符のことを話した。
「そうですか。でも多分うちのはそんな立派なものじゃないみたいですな。」
「おじさん、とりあえず見せてよ。」
「まあ、紙切れでも家宝じゃからの。特別じゃぞ。」
と、いうわけで一行は、幸徳井家の家宝「晴明の呪符(?)」を見せてもらうことにした。
ここで十兵衛合流