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辺境伯令嬢は理想の伴侶を探す  作者:
おまけ2(追加の番外編など)
66/66

伯爵令嬢は友情のお茶会を開く 裏話(4)役割分担をしよう!


「役割分担しまーす。まず、ソレルは執事役ね!」

「執事?」


 ソレルが不思議そうな顔をする。

 ソレルが前日からお茶会の準備などに専念して手伝ってくれる、ということで、ローラと三人で具体的な役割分担をすることにした。とりあえず、お茶とかお菓子の準備はなんとかなりそうだ。あとは人員配置か……。


「執事……、どちらかというとフェデルの役じゃない? それ」


 ソレルが首を傾げた。

 この屋敷に執事はいない。執事っぽい役割はフェデルとソレルが分担して行っている。

 まあ、執事どころか侍女も下働きもいないけどね!

 だから、人手不足なんだよ! ああ、もう!


「いや、フェデルは戦力外だから」


 頭数に入れたら殺される。


「うん、まあ、いいけど」

「それっぽい格好してよ? アーヴェルの執事さんを偵察に行ってきてください」

「うん? まあ、格好は真似してもいいけど。――出迎えるでしょ? 案内して……、その間来ちゃう人はどうするの?」

「うっ……、そ、そのへんは招待状で調整する。で、できるよね、ローラ?」

「――まあ、文面は考えましょう。とりあえず、正門で揃うまで待たせとけばいいのではない?」

「い、いいの、かなあ? それで」


 若干の不安。完璧、を目指してるはずなのに、穴が多すぎる。

 それもこれも使える人材が少なすぎるから!


「我が手伝おう」

「ギャッ……! と、突然現れないで、ギル!」


 いつの間にかギルがそばにいた。


「なんだか面白そうではないか。我にも参加させろ」

「いや、ギル関係ないでしょ!? だいたいそんなキラキラ光ってて、普通の使用人役なんてできないでしょ!?」


 ギルがにやり、と笑う。


「誰にものを言っている。どれだけ王宮の使用人を見てきたと思っているのだ。執事のふりなど簡単だし、要は気配をなくせばよいのだろう? あの者達のふりなど造作もない」


 ほら、と言ってギルがフェデルの姿に変身した。

 キラキラもようく目を凝らさないとわからない感じにはなってる。


 ――そ、そうか。つい忘れちゃうけど、この人すごい魔力の持ち主なんだよな……。意識して目立たなくもできるのか……。


「そら、どうだ?」


 にやりと笑うフェデリタース、という滅多にない状況から更に、なんか企んでそうな感じのソレルに変身。


「……うん、すごいのはわかった。わかったからやめて」


 ドヤ顔で「ふふん」とか笑うソレル、コレジャナイ感すごいから!

 どうにかいつものキラキラに戻させて、私は頭を抱える。


「ギルは厨房待機!」

「えぇ?」


 不満そうにギルが言う。


「転移陣でお茶とかお菓子とか送り込む係ね」

「見られないとつまらないではないか」

「なんかそのへん、適当に自分で工夫して! いくらでも覗ける方法あるでしょ!? とにかくギルは表に出てきちゃ駄目!」


 なんとか、不満顔のギルを黙らせた。

 

「ローラ、お茶会の時、給仕にエマさん借りれる?」


 もともと、着付けとか化粧とかでローラ付きの侍女のエマさんは当日来てもらえることになっていた。

 エマさんはいつもローラが来る時一緒についてきてて、使用人の待機所で待っててくれる。庭での給仕なら、ヴァシルも構わないだろう。


「アーヴェルの人を使うのは申し訳ないけど。その分のお給金は払うから」

「うちは構わないわよ。ただ、馬車置き場とかはどうするの?」


 整理すると――。

 正門で令嬢を降ろす。

 ある程度揃うまでそこで待機させる。

 ソレルに案内させて、温室に到着。

 温室での給仕はソレルとエマさん。


 ――その間、令嬢方が乗ってきた馬車や使用人の待機場所の案内は?


 だから! 人が足りないんだよ!!


「はい、そこで我が登場!」

「ギルは駄目!」


 隙あらば関わろうとするな。ややこしくなるからやめて!


「……フェデリタースに交渉したら?」

「うっ……」


 ローラの提案はもっともなんだけど、思わず言葉に詰まった。

 フェ、フェデルねぇ……、無理、じゃないかなぁ……。

 ヴァシルが命じれば手伝ってくれるとは思うけど、ソレルを既に貸してもらってるしなぁ。

 悩む私に、ローラが溜め息を吐いた。


「わかりました。バル兄様を使いましょう」

「えっ……、で、でも」

「交渉のネタにしてもいいわよ」

「か、勝手に?」

「まあ、いいのではないの? ――一緒に行くわ」


 妹、強いな!


 ローラと一緒にフェデルに交渉しに行った。

 なぜだかギルもついてくる。

 庭仕事をしているフェデルに、事情を説明してみた。


「断る」


 ジロリ、と見下ろされて嫌そうな顔をされた。

 で、ですよねー!?

 

「バル兄様が王都に戻ったら、必ずこちらにも寄らせるわ。あなたとの稽古の時間を取らせましょう。それならどう?」


 ピクリと、フェデルが反応した。

 フェデル、剣術大好きなんだよね。実はいつでも、強い相手との稽古を望んでるのだ。ディリエ様とかバルトルトとかと本当は稽古したいといつも思ってるはずだ。

 たまに来るふたりと、手合わせできるとなるといつも目に見えてソワソワしちゃうもんね。

 ――これは、もう一押しだな。


「屋敷内に勝手に馬車とか入りこませていいの? 使用人とかウロウロしちゃうかもな~」


 私もすかさず言い添える。

 フェデルが心底嫌そうな顔になった。

 更に頼んでもいないのに、ギルが援護射撃。


「我がお前の格好をして案内してもよいぞ?」


 上機嫌で面白そうに言うギルに、フェデルは眉を顰めた。


「……わかりました。あなたにそのような役割はさせられません」


 むしろやめて! というのが顔に出ちゃってるね、フェデル……。


「え? いいのに」


 むしろやりたい! とギルの不満もダダ漏れです。


 フェデルが大きく溜め息を吐いて、剣呑な目で見下ろしてくる。


「……貸しにしといてやる。詳細を教えろ」

「あ、ありがとう、フェデル~! 助かる~!」


 ということで、フェデルもちょっとだけ手伝ってくれることになりました。

 やったね!


 ギルだけちょっと不満そうでした。

 裏方で我慢してよ……。


「……まあ、クロエに会えるからいいか。後で我もそのお茶会に参加させろよ?」

「えー? 女子会なのに……」

「希望なら女の姿で行こう」

「ソウジャナイ……」


 当日なんとかなるか、とりあえずは不安しかないけど。

 その後、ローラやソレル達と綿密に打ち合わせしたのだった。

 が、頑張れ、私……。






◆◆◆






 クロエがくすくすと笑みをこぼした。


「大変でしたねぇ、アート」

「本当だよ……。まあ、行儀作法のお稽古はまだ全然合格点貰えてないんだけど……」

「夫人が先生なら間違いありませんよ。――でも」


 クロエは少し考えるようにしてからローラを見た。


「どうかしら、ローラ。わたくし、少し心配なの。こんなお茶会を開いてアートは大丈夫? わたくしなら闇討ちされても返り討ちにできますから心配ないのですけれど。アートは余計な恨みを買ったのではなくて?」


 ぎく。

 そ、そうかな? いろいろ考えたつもりだったんだけど。

 貴族っぽくさ、直接的なことは言わずに権力チラつかせる的な?

『口は災いの元ですよ』って注意したつもりだよ?

 かといって闇討ちされるようなキツいことはしてないよね!?


 訊かれたローラは涼しい顔でこくり、とお茶を飲むと軽く肩を竦めた。


「――さあ。どうかしら。注意としては、まあまあ効いたのではないの? 闇討ちされるほど貶めるやり方でもなかったと思うわ」

「そう、かしら?」

「あの方達も馬鹿ではないから、圧倒的差があることは身にしみたでしょう。うまくすればアートを派閥に引き込める、とでも考えてほいほいお茶会にまで来たのでしょうけど。あなた達に手を出したら痛い目を見る、という警告にはなったのではないの?」

「ならいいのですけれど……」


 ほっ。だ、だよね?

 気をつけたよ、私! 頑張ったよね!?


「まあ、早いところ結婚したら? さすがに公爵夫人に手を出そうとする人もいないでしょう」

「う、うーん?」


 結婚、ねぇ?

 そのあたりはヴァシル様次第だからなあ。

 本当に結婚なんてするのかな?


「そろそろ我にも参加させろ?」


 その時、テーブルのそばにギルが現れた。


「ギ、ギル!? だから、突然現れないでってば!」

「……ずっと待っていたのだが……」

「ご、ごめん」


 クロエが立ち上がって優雅にギルに貴婦人の礼を取った。


「ギル、ご無沙汰しております。今回はずいぶんとお手伝いくださったのですってね」

「ああ。まあまあ面白かった」


 そう。それは良かったよ……。


「さあ、お茶をどうぞ」

「――いただこう」


 偉そうに座るギルにクロエは楽しそうに微笑んだ。


 ――今回のお茶会の顛末は、こんな感じ。


 うん、もう二度とやらないよ!




お読みいただきありがとうございました。


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