第17話 弱点
自動販売機に小銭を入れる。
水のペットボトルを買い、私はそれを持ってベンチに駆け戻る。
そこには……膝に肘をついて顔色を悪くしている美雪さんの姿があった。
「うぅ……」
「大丈夫ですか?」
私がそう言いつつペットボトルを差し出すと、彼女は弱々しく笑って「ありがとう……」と言いながらそれを受け取った。
それから蓋を開け、数口飲む。
しかし、まさか美雪さんに乗り物の弱いという弱点があるとは思わなかった。
ジェットコースターから下りた瞬間、真っ青な顔で腰を曲げ、口に手を当てた。
すると美香さんがすぐにビニール袋を差し出し、その中に、その……胃液を出させていた。
しかしそれでは足りなかったようで、すぐに二人でトイレに向かい、美香さんが介抱していた。
かなりの量が出ていたみたいだし、今もまだ気分が悪そうだ。
というわけで、白田さんと美香さんには美雪さんが回復するまでの間その辺を遊んでもらい、私達はこうして休んでいる。
……あれ? こうしてみると、私と美雪さんって、今二人きり?
そう思った瞬間、顔が熱くなる。
一度意識してしまうと、一気に気が動転してしまう。
バクバクと高鳴る心臓を抑えるように深呼吸をしていた時、美雪さんがチラッとこちらを見てきた。
「……? どうかしましたか?」
私がそう聞いてみると、美雪さんはハッとした表情で「な、なんでもないっ」と言って顔を背けた。
それから、静寂が訪れる。
突然何も言わなくなったせいか、尚更緊張してしまう。
「それにしても、まさか美雪さんがここまで乗り物に弱いとは思いませんでした」
緊張を誤魔化すように、そう言ってみた。
すると美雪さんはキョトンとした顔で「そう?」と聞き返してくる。
彼女の言葉に、私は頷いた。
「ハイ。……美雪さんは、私と違って、様々な乗り物に慣れてそうですし」
「そんなことないよ。まぁ、乗り物酔いって慣れで治ったりもするとは聞くけどね。でも、私の場合は単純に、体質的な問題かなぁ」
美雪さんの言葉に、私は「そういうもの、なんですか?」と聞き返した。
すると美雪さんは「うん」と軽く頷く。
そして続けた。
「まぁでも、自転車に乗ってて酔った時は流石にビックリしたけど」
「自転車で、ですか?」
まさかの武勇伝に、私は流石に冗談だと思いそう聞き返した。
しかし、それから話してみた感じ、どうやら冗談ではないようで、美雪さんはスマホをしながら自転車に乗っていたら酔ったという話をしてくれた。
どうやらそれは実話らしく、可笑しくて、私は笑った。
美雪さんもそれに釣られて笑っていたが、何かを見て、唐突にその顔から表情を消した。
どうしたのだろうか……と不思議に思っていた時だった。
「お嬢ちゃん達」
そう声を掛けられ、私は声がした方に振り向いた。
見ると、そこには二人組の男性がニヤニヤと笑いながら立っていた。




