第30話 遊園地
週末になり、私達四人は遊園地に行った。
シロと美香、シロとクロは多少の面識はあるが、美香とクロの面識は一切ない。
誘っておいた身で何だけど、正直この二人がぎこちなくなるか不安。
「これが本物の遊園地ですか……」
「え、花織お姉ちゃん遊園地来たこと無いの?」
「はい。だから、分からないことばかりで……」
「へぇ~、なんか意外。何でも知ってそうなのに」
「そうですか?」
「そうだよ~」
……めっちゃ馴染んでるやんけ。
つい言葉遣いがおかしくなる程度には二人は馴染んでいた。
え、いきなりお姉ちゃん呼びにタメ口? どうした!?
「え……美香、クロとは初対面だよね?」
「うん? そうだよ?」
「でも、そんな……お姉ちゃん呼びにタメ口なんて」
「え~……だって花織お姉ちゃんって、お姉ちゃんのお友達なんでしょう? だったら私のお姉ちゃんみたいなものかなって」
「でも……!」
口を開いた時、美香が私の耳元に口を寄せ、囁いて来る。
「大丈夫だって。お姉ちゃんの恋路は邪魔しないからさ」
「いやそういうことじゃ……」
「美雪!」
美香と言い争いを始めようとしていた時、シロが私の手を握って来た。
見ると、シロはキラキラした目で満面の笑みを浮かべて私の顔を見ていた。
「美雪っ! まずはあれに乗ろ!?」
そう言いながら、早速ジェットコースターを指さすシロ。
……いきなりジェットコースターか……。
私は、正直言うと乗り物には滅法弱い。
何を隠そう自転車に乗っていても酔ったことがあるくらいだ。
いや、正直あの時は本気で驚いた。
スマホをしながら自転車に乗っていたのが原因だろうから、十割私のせいであることには違いない。
自業自得ってやつだね。
しかし、まさか自転車に乗っていて酔うとは思わなかった。
「美雪~」
何と答えようか渋っていると、シロが催促するように私の体を揺する。
それに私の頭の中はグワングワンと揺れて、気分が悪くなる。
「あー……ハイハイ分かったから。一回落ち着いて」
「むー……」
頬を膨らませるシロの頭を撫でてから、私はクロと美香に視線を向ける。
「シロがジェットコースターに乗りたいみたいだから、最初はジェットコースターで良い?」
「えぇ……私は構いませんが?」
「私も……仔犬お姉ちゃんが乗りたいなら」
美香はそう言いながらシロを見つめている。
頬は淡い桃色に染まり、明らかに恋する乙女の顔だ。
それに対し、シロは特に気にしていない様子で「やった~」と言いながら小さく飛び跳ねてる。
シロが嬉しそうで何よりだ。
というわけで、私達は早速ジェットコースターに乗った。
……今日の朝食をリバースするハメになった。
 




