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てんくーじょーのあるじ  作者: 記角麒麟
5/13

不法侵入、そして依頼。お金って、従順な労働奴隷を作るための立派なツールだと思うの。

 なんとか自称ケンタウロスのサハギン(鮎)を振り切ってアパートに戻ってくると、部屋の中でお茶を啜っている銀髪メイドが居た。


「あ、おかえりなさいませ、千羽様」

「ただいま……って、どうして貴女が居るんです?

 普通に不法侵入ですよね、これ?」


 すると彼女は、頭上に疑問符を浮かべて……そして、何事もなかったかのように、またお茶を啜った。


「それはそれとして、千羽様」

「スルー!?」

「この家は、お客さんに茶菓子の一つも出さないのですか?」

「勝手に侵入したのに何言ってんのこの人?

 てか、どこから入ったんです?鍵閉まってましたよね?」

「鍵……?」


 いやいや、疑問符浮かべないでよ!?


 私は肩をすくめると、諦念して彼女の前に腰を下ろした。


 ……このちゃぶ台どこから持ってきたし。


 もうツッコミどころ満載すぎて何も言えないわ。


「それで、どうやって入ったんです?」

「そこの畳の下からですが」


 そう言うと彼女は、部屋の右奥にある、一枚の畳を指差した。


「は?」


 畳の下?

 意味わからないんだけど。


 そんな怪訝な私の感情を察したのか、銀髪メイドは、その畳と畳の隙間に指を入れて、クイッと持ち上げてみせた。

 するとそこには、おそらくアパートの一階の部屋へと続く階段が見えた。


「わーお、くり抜かれてる〜」


 ……いや、そうじゃなくて!


「何してるんですか!?」

「まあまあ、落ち着いてください。

 順番に説明してあげますから」


 なんか上から目線でちょっと腹立ってきた……。

 常識人だと思ってた私が馬鹿みたいだよ、ホント。


「それで、どうしてこんな事を?」

「…………趣味?」


 おい。


 ちょっとイラッときたので、メイドの頬を抓ってやった。


 閑話休題。


「まずは、なぜ私達が貴女をアルドラへ招待したか。

 その理由から話しましょう」


 日向さん(メイドさんの名前)はズズッとお茶を啜ると、姿勢を正した。

 彼女の放つ、真剣味を帯びたオーラに気圧されて、私も佇まいを直す。


 何だろ、嫌に緊張するなぁ……。


「私たちは、あの浮遊城アルドラ――正確に言えば、元は単なる娯楽の為にご主人様(ケダモノ)がお創りになられた遊具だったのですが」


 あ、まだケダモノって呼ぶんだ。


「最近……地球の時間単位で、ここ数百年は世界の管理という仕事もしていました」


 ……アレ?

 いきなりスケールが大きくなった?


 いや、あのお城(しかも空を飛んでる)が単なる遊具扱いだったっていうのも十分驚きなんだけれども。


「ですが、程数年前から、管理している世界の一つ、所謂、剣と魔法の世界と呼ばれるジャンルに属する、アミューという名の世界の住人が、この世界に飛ばされるという災害が起こりました」


 ……ん?

 なんか、心当たりがあるような気が……。


 なんだろ、このもやもや感。

 頭の奥の方で、何かが燻っているような、変な感じ。


「それで、ここからが本題なのですが――」


 日向さんはもう一度お茶を啜って、一拍置いて、要件を話した。


「――千羽様。貴女には、この地球に連れてこられたアミューの住人を見つけてきてほしいのです」

「ごめんなさい。無理です」


 正直面倒臭いし、あなた異世界人?とか聞いて回るとか、完全にイタい子だし。


「見つけてきてくれたら、報酬を出しましょう」

「……どれくらい?」

「その時時によっても異なりますが……まあ、最低でも十万円は出しましょう」

「やります!!」


 お金に負けた。




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