少女のスペック
「はあ、」
召喚の儀の後、とりあえず部屋に戻された沙夜はため息をつく。
彼女には、昔から魔法や戦闘に関してはその辺のものには負けないと自負する程度には自信があった。
それには三つほどの理由がある。
一つ目は彼女のスキル。
スキルというのは一部のものが生まれつき持つ特殊な力であるが、守護精霊を召喚したときにも、その精霊によって様々なものを得ることができるが、こちらはすべての人が得られるだけに当たり外れが激しいらしい。
そして彼女が生まれつき持つスキルは
詠唱不要…魔法を使うときは普通詠唱しなければならないが、このスキルを持つものや、熟練のものの中でもほんの一部の素質を持つものはその詠唱をせずに魔法を使うことができる。
古の知…このスキルを持つものは、古代から現代に至るまでのいかなる魔法の知識も有する。ただし、その情報量の多さ故に、後天的に授かった者は気が狂ってしまうこともあるらしい。
魔に愛されしもの…まず、魔法という者ものにはランクがある。ランクはD~SSSまであり、Dの基本の魔法は誰でも使えるが、ランクが上がるごとに素質のないものは使えなくなっていく。魔法は組み合わせると威力が上がったり、性質を変化させたりできる。そのためDランクの魔法しか使えないものも工夫次第では強くなる。しかし、このスキルを持つものはどのランクの魔法も使えるようになる。
の三つである。
普通先天的なスキルを持つものは千人に一人ほどであり、複数のスキルとなると、もはや一国に一人いるかいないかのレベルである。
そして今回フェリウスとの契約により彼女が授かったスキルは
魔力超回復…魔力をすべて使い切ってしまったとしても、一瞬で回復させてしまうスキル。
…、意図的でないのはわかっているが、魔王でも目指しているのだろうか
二つ目は、生まれつき持つ圧倒的なまでに多い魔力だ。常人の百倍は確実に持っている。
もはや彼女が魔王だと言われても納得してしまいそうである。
三つ目は、家の方針により鍛えさせられてきたが故の戦闘技術や、野営術、自らの魅せかた等の様々な術。
彼女の家はかつては忍びの一家であり、現在も習わしが続いているため、幼い頃から鍛えられてきた。泣いてもわめいても止まらなかった訓練のせいで、彼女の感情の起伏は極々わずかとなってしまった。召喚の儀の時のあれは、異例中の異例である。
ただし、そんな訓練のおかげで、小動物のような見た目や雰囲気とは裏腹に、何かあってもたいていの状況下なら生きていける程度のしぶとさと図太さを獲得した。
ついでに言うと、男を落とすようなテクニックや、ちょっとした実践もやらされているが無意識下に刷り込まれているため、本人は気づかぬうちに男に対して多種多様な被害を出している。
古の知と魔に愛されしもの、詠唱不要、圧倒的な魔力量のせいでどんな魔法でも一瞬で使えてしまうと言うのに、さらに今回の契約で得た魔力超回復により、もはや人間をやめているレベルですごいのだ。
しかも彼女は戦闘になれていて、技術も持っている。
そんな世界の二つや三つ余裕で滅ぼしてしまえるような彼女は、周りに騒がれ、国のためにいいように使われることを嫌がった。だからこそ目立たないようにしてきた彼女は、今回フェリウスとの契約により否応なく目立つことになってしまった。
そのため彼女は、
フェリウスをいやがっている。
そんなフェリウスは、
真っ正面からそれを言われて
部屋の隅でうずくまって落ち込んでいる。
これが最強の精霊と言われて誰が信じるというのか
世の中とは残酷である。