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「ボクたちがその依頼を買おうじゃないか」

 依頼を買う?


「どういうことホイヤーさん?」

「そのままの意味さ。冒険者は冒険中に他の依頼を頼まれることもある。そんなとき手の空いている冒険者に冒険を売ることがあるんだよ」

「ふ~ん、初めて聞いた。レモン知ってた?」

「オレも初めて聞くぜ」

 流石ホイヤーさん長生きしてるのは伊達じゃないね。


「もっともそんなに都合良く手透きの冒険者が見つかる訳じゃないから冒険者の宿なんかに売るんだけどね」

 それで冒険者の宿に依頼が貼ってあるのね。


「これでどうだい。ボクたちに依頼を売れば君たちに不名誉な噂は立たないし、今後コボルトが現れてもボクたちの失態になる」

 え? そうなの?


「なるほどな、確かに兄ちゃんの言うとおりだ。だが、依頼はほぼ終了している。報酬額の一割り増しだぜ」

「やむを得ませんね」

 報酬額の一割り増しって、報酬額の方が少なくなるじゃない。


 何で売買が成立するの?


「ん? 不思議そうだねミーちゃん。報酬額のことかな?」

 コクコクと首を縦に動かす。


「今回は特別さ。ほぼ終わっている仕事を売ってもらうわけだからね。知名度上げたり……まあ大人の事情がある場合報酬額に上乗せして仕事を買うんだよ。普段は報酬額の一割程度で仕事を取り引きしてるんだ」

「お、大人の事情って?」

「ミカンはまだ知らなくていい」

 ぽんとレモンの手が私の頭に乗せられた。


「で、報酬額はいくらなんだい?」

 そうそう、気になるお値段。


「一人頭銀貨一〇〇〇枚の仕事だ。俺たちは三人だから三〇〇〇枚の仕事だな」

「つまり、三三〇〇枚で買い取りだね」

「そう言うわけだ」

「よし、夕方迄に準備しよう。それまではコボルトを襲わないと約束してくれ」

 うんうん、そこ大事だよ。


「ああ、いいだろう。今日の日が沈むまでだ。俺たちはここで呑んでる。日が沈むまでに用意できなければコボルトを狩りに行く。文句はないな」

 兄貴はグラスをあおった。


「わかった日が沈むまでだな」

 ホイヤーさんが席を立つ。

 慌てて私も席を立つ。


 ジャラっと円卓に袋を置くホイヤーさん。


「一〇〇枚入っている、ここの飲み代だ」

 ええ~、それも払うの?


「気前がいいな。ありがたくもらっておくぜ」

 兄貴がオーダーをかけると、マイヤーとアイヤーもちゃっかりオーダーする。

「よし急ごう」

 マイヤーとアイヤーを残して私たちは店を後にした。


 ちょ、いいの?


「ホイヤーさんいいの? マイヤーとアイヤー残してきて」

 先頭を歩くホイヤーさんに訪ねる。


「ああ、彼らは監視役でもあるんだ」

 監視役?


「口約束は信用できないからね。飲み代渡してあそこに留めておく。マイヤーたちはその監視役だよ」

 な~るほど。だから飲み代も出したんだ。


「こっちがいない間にギャリたちを襲われたら本末転倒だからね」

「確かにそうだね」

 そっか、そんなことまで考えてたんだ。


「ホイヤーさんすごいね」

「なあにミーちゃん。やっとボクのすごさがわかったかい」

「うん、伊達に歳とってないね」

「歳って……」

「ところでえせ占い師これからどこに行くつもりだ?」

 レモンが笑いながら訪ねると。


「村長の屋敷さ」

「村長さんの屋敷?」

 今更なぜ?


 あ、でもお金を用立てないといけないか。


 頼れるの村長さんだけだもんね。


「そう言えばあいつらも村長の屋敷から出てきたな」

 あれ? そうだっけ?


「そう、ちょっと気になってね」

 うん確かに気になるね。


「ま、本人に聞けばすむことさ」

 ホイヤーさんはウィンクすると先を急いだ。


 太陽は真上にある。急がないと時間もないからね。



コンコン


 牛の顔をかたどった呼び鈴を鳴らす。

 いつも通り使用人が出てきた。

 私たちを見ると警戒したみたいだけどすぐに安堵の表情を見せる。


 何だろこの反応?


 いつものように応接室に通される。

 しばらくすると村長さんが現れた。


「わしゃしらんよ。かってにあいつらが計画を進めておるんじゃ」

 私たちの顔を見るなりこの一言。


「「「なんの?」」」


 私たちは思わずハモってしまった。


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