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「フーリクスさん……」
涙が枯れるって言うけどあんなの嘘。
私の涙は止めどなくあふれてくる。
「フーリクスさん、フーリクスさん……」
パシン
私の頭に衝撃が走った。
な……に?
「ギャリ……さん」
この時初めてギャリさんに頬を打たれたと認識できた。
ジンジンする頬。でも痛みは感じない。
「コボボコボコボボ!」
「しっかりしろ。これじゃフーリクスが何のために命を賭けたかわからない」
ドリアンさんの通訳……ううん、そんなのなくてもわかった。
本当に泣きたいのはギャリさんだもんね。
うっすらと涙を浮かべるギャリさん。
そのギャリさんが私に喝を入れてくれたんだ。
びっくりして涙が吹き飛んだ。
そう、ギャリさんの言うとおりやらなきゃいけないことが残ってるよね。
フーリクスさんが守り抜いたものを守らなくちゃだね。
もう一度横たわったフーリクスさんを眺めると、心の中で決意を固める。
「先ずは奴らの依頼主を突き止めることだな」
「ああ、スマルの村でないとは思うが……」
レモンとホイヤーさんが向き合って話をしてる。
私はまだ……なんだか目の前の出来事が夢のようで現実感がない。
「そう言えばやつらは宿屋がどうのとか言っていたぜ」
「宿屋? 何のことだろうか? 明日にでも村長に聞いてみよう」
レモンとホイヤーさんが段取りを決める。
ドリアンさんはフーリクスさんを埋葬するための穴を掘っている。
ギャリさんはおびえる子供たちをなだめている。
私にできることって……何だろう?
ただただ目の前で繰り広げられていることを見てるだけ……。
こんなことはフーリクスさん望んでないよね。
考えなくちゃ。私ができること。
ギャリさんや子供たちが安心して過ごせる様にする事を。
考えなくちゃ。
埋葬するための穴ができあがった。
フーリクスさんの亡骸を穴に横たえる。
ギャリさんが思い出の品を添える。
子供たちは花を添えた。
ザッ
ドリアンさんが土をかぶせる。
次はホイヤーさん。次はレモン。
次は……私。
レモンからスコップを受け取る手が震えてしまう。
涙でかすんでよく見えないよ。
「ほら」
レモンが私の手を掴んで一緒に土をかけてくれた。
次はギャリさん。
子供たちは訳もわからず手で土をかけている。
「ギャリさん?」
肩をふるわせ涙を流している。
まるで固まったかのように動けないでいる。
ギャリさん。
私はギャリさんの手に自分の手を重ねる。
カランカラン
スコップを落とし泣き崩れるギャリさん。
今まで我慢してたんだね。
そっとギャリさんを抱いてあげる。
「コボボコボ」
ギャリさんはそのまま声を上げて泣き出した。
こうしてささやかだけどフーリクスさんの埋葬は終わりを迎えた。
盛る土の上にフーリクスさん愛用の槍が立てかけられた。
なも無き戦士の墓標はこんなものだ。
よくおじいちゃんから聞いていたけど、そのたびにこんな苦しい想いをしていたんだね。




