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「何か収穫はあっのか?」
「ふっ、何もない」
ホイヤーさん……。
思わず期待した私がバカみたいじゃない。
「何やってんるんだよ。こっちはもう少しで危うくミカンが店に出るところだったんだぞ」
「ミーちゃんが? 似合うだろうな」
ホイヤーさん、目がいやらしい。
「まぁ、それは置いといて。収穫というほどではなくとも前進はしている」
「話を聞かせろ、えせ占い師」
うん私も聞きたい。
「つまりだ……」
「「ふむふむ」」
私とレモンが詰め寄る。
「あの店のような宿屋をもう一軒出店したいそうだ」
「あのな、何の話をしているんだ? このえせ占い師」
「しかもスマルの村にだ」
「なんとワシの村にか、う~むそれは興味深い……あ、おほん」
村長さんににらみを利かせる。
「冗談じゃないわよ、あんなお店を出店だなんて」
リカーのような不幸な人が増えるってことじゃない!
「ど、どうしたんだよ。ミーちゃん。そんな怖い顔して」
「怖い顔にもなります。よりによってあんなお店」
そう、ウィスキーのように赤ちゃんさえ邪魔者扱いになるお店なんて。
「私は断固反対します!」
きっぱりと言ってやった。
「どうしたのさ。ミーちゃん楽しめなかった?」
「楽しくなんてないよ!」
そう、リカーのような人たちがたくさんいるんだ。
楽しいわけない!
「どういう話になったら、出店の話になるんだよ。えせ占い師」
「よくぞ聞いてくれました。あの悪党どもをけしかけてきた話を持ち出したのさ」
悪党? そういえば鍵を狙って襲ってきた人たちだよね。
「ケルトの村長の誤解が解けた途端に、銀の鉱石だけのさびれてた村じゃかわいそうだからっと二号店をスマルに出店しようっという話になったんだ」
「どういう経緯か想像はできないが、とにかくあの幸せの鍵は本物だったんだな?」
「ああ、間違いなく本物だった」
「なら、報酬をもらって帰れば済むことじゃないか?」
「ノンノン、そこが甘いんだよレモン君。報酬は一時の収益。しかし宿屋は存続する限り収入がある」
「ちょ、ちょっと待ってよ。ホイヤーさん、あそこで働いている人たちがどんなにつらい思いしているかわかっているの?」
「つらい思い? 楽しんでいるんじゃないかい?」
「楽しんでいる人なんて限られているわ。ほとんどの人たちが苦しんでいるのよ。それをまた増やそうなんて私は断固反対です!」
「ミカンがここまで言うんだからな。仕事の裏側を見ているミカンの意見は無視できないぜ」
「う~ん。ミーちゃんがそんなに反対するとは思ってもみなかった。けれど報酬は銀貨十万枚なんだよ」
「それでも充分だろ。これ以上ここにかかわるのは考え物だ」
「村長さんはどう思いますか?」
「う~む、宿屋の話は惜しい気もするがミカンちゃんがそういうなら仕方ない。今回はあきらめるとするか」
「それなら明日、報酬をいただいてスマルの村に戻るぞ」
レモンの言葉に全員がうなづく。
全くホイヤーさんはろくなことを考えないんだから。ぷんぷん。
頬をふくらましてぷんぷん起こって見せる。
「ミカン可愛い。もう一回やって」
しまった、またやっちゃった。
こうして夜は更けていくのだった。
翌朝、応接室に通された私たち。
ケルト村の村長さんが現れるなり設計図を広げ始めた。
「ここに厨房があって、ここに接客食堂。こっちが寝室で、地下にはお仕置き部屋がある。基本はここと同じつくりにしてある。姉妹店ということで、こっちの店でも宣伝をするから客の入りはばっちりだ」
鼻息荒くケルト村の村長は話し始める。
「それについてなのですが」
レモンが切り出した。
「その件は辞退いたします。我々は報酬をいただければそれで構いませんので」
「な~にを言っている。報酬の何倍もの金が転がり込んでくるんだぞ。こんな機会をみすみす逃すのか?」
「ケルト村長さん、華やかな宿屋はわかります。でも、そこで働いている人たちの苦しみを考えたことがありますか?」
思わず黙っていられなかった。
「何を言っているんだい。彼女たちは奴隷だよ。人買いから買った奴隷だ。主人である私の命令には絶対服従なんだよ」
「それが子供を堕すことになってもですか?」
ウィスキーが子供を堕ろしてまで、店で働くさまが脳裏に浮かんだ。
「こどもなんて何の役にもたちゃしない。それよりも成熟した女性だ。客とりもできる。こんな宿屋はそうそうはない」
ケルト村長は、自分の世界に陶酔しきっている。
「人買いにかわれたって、人の子。奴隷だって人の子なんですよ。それをわかってください!」
「何を言っている。奴隷を買ったのは買った主人に忠誠を誓うため。どんな扱いを受けても文句は言えまい」
「あなた本当に人間ですか? 苦しんでいる人のことを考えたことありますか? 今のあなたは人の血が流れていない!」
「落ち着けミカン、やめるんだ。何を言っても無駄だ」
「そんな、レモン」
だってリカーやウィスキーが……。
「とにかくこちらは報酬さえいただければそれで構いません。新たな宿屋の計画は白紙撤回してください」
「本当にそれでいいのか? スマルの村長」
「う、う~む」
「さびれゆく村を活性化させたいとは思わないのか?」
「た、確かに……それは……」
「村長さん、まだそんなことを言っているんですか!」
「ミーちゃん。村長も村の存続も重要な課題なんだよ。それもわかってやってくれ」
「でも……」
私は何も言えなくなってしまった。




