第15話『緊張から解放され今日最後の作戦』
目的の雑誌は手に入れることができ、後は寮へ帰るだけ。
紆余曲折して思わぬ顔合わせがあったものの、順調順調。
これで表ルートを進行させることができるだろう。
と、安堵しきった俺は周りの目を気にしつつ足を進める。
「……」
いやぁ~、それぞれ2人と別の場所であったが……さすがにビックリした。
でもそうだよな、ゲームの世界だと主人公が体験する流れしか把握できないけど、その間も登場人物の時間は進んでいく。
だから今回みたいに、アクシデントとは言わないけど、俺にとってのイレギュラー的な展開が置き続けるだろう。
しかし歯痒いな。
ゲームで遊んでいたときは、場面切り替えで時間をスキップできるけど。
当然ながら、自分の意思と足で移動しなくちゃダメだ。
そして自分の能力を把握しているにもかかわらず、周りの目があるから人間離れした能力を想うがままに扱えない。
「――!?」
な、なんだとぉ!?
リラックスして歩いていると、目線の先に天敵であるカリナ姉さんを発見してしまった。
しかもキョロキョロと辺りを見渡しいて……う、嘘だろ……もしかして……。
お、俺を探しに……わざわざショッピングモールまで来たっていうのか!?
いや、まだだ。まだ別の可能性が――。
何人から告白されようとも絶対に誰とも付き合わず、交友関係のある同性から誘われたとしても断るような人間に、可能性なんて期待するだけ無駄か。
なんせ全ての優先順位が俺が最上位であり、誰と話をしていたとしても俺が視界に入ると目線で追うような姉だ、疑う余地などない。
「……」
逃げるしかない。
くっ……周りの目があるから超跳躍はできず、魔法を発動させることも無理だ。
都合よく騒動が起きてくれたら助かるが、物語の主人公じゃあるまいし期待できない。
だから、人の波を活かして早歩きするだけだ。
時間帯は俺に味方してくれている。
完全に夕方と言っていい時刻であることから、帰宅ついでの大人や学校終わりの学生もチラホラと居る。
遠回りになってしまうけど、このまま人の陰に隠れながら足を進めていくしか――。
「!?」
な、なんだっていうんだぁ!?
まさかのまさか、姉さんは俺を目視していないはずなのに追従してきている。
振り返っても目線は会わないし、き、嗅覚なのか!? 俺の残り香を辿って来ているとでもいうのか!?
なんという追尾性能、さすがは天敵というべき存在。
しかし捕まるわけにはいかない。
俺は今、発見されたらマズい代物を抱えている。
パッと見ただけでは、ただのファッション雑誌。
だが中身を精読されてしまうと、カリナ姉さんは確実に没収するだろう。
そんな未来が訪れようものなら、生き残ることができる表ルートを進行できなくなってしまうじゃないか!
絶対に逃げてやる、逃げてやるぞ!
「――」
くっ……距離はそうでもないはずなのに、追われて緊張しているからか長く感じてしまう。
体力面では余裕だというのに、次に振り返ったら目線があってしまう可能性に恐怖して背中がソワソワする。
全身を支配する緊張感は、絶対に失敗できない重圧も相まって冷たい汗へと変わっていく。
「――今だ」
偶然にも発見した路地裏へ進入することができ、暗闇へ一気に駆け出す。
追ってくるような足音は聞こえず、チラっと振り返り姿がないことを確認して屋上まで跳躍。
寮の方角を確認し、超跳躍で離脱成功。
寮付近の森の中に着地後、一応周りを見渡すも誰もおらず。
そのまま平静を装って無事に帰還を果たした。
廊下を進み、真っすぐカイトの部屋へ向かい――ノック。
「はい、どうぞ」
爽やかな返事を聞き取り、部屋に入った。
中には当然、今日も今日とてモテモテな羨ましいイベントを終了して何食わぬ顔で座っているカイトが居る。
ニコッと笑った際に見える歯は、まるで光を放っているかのようだ。
いちいち全てがキマッてるのが腹立たしい――と、さっきまでの苦労を考えると頬がピクッと痙攣してしまう。
「例のものは、手に入った?」
「ああ」
人の苦労も知らないで、とのツッコミは口に出さないでおく。
なんせ、俺にとっても重要なイベントだからな。
カイトへ雑誌を手渡し、ワクワクした無邪気な好奇心のままページをめくり始めた。
でも一応はファッションにも興味があるようで、すぐさま目的のページまで飛ばさず「ほおほお」と頷き学びの姿勢も見せている。
であれば俺も一緒に目を通したいものだが、目的のページを一緒に見てしまうのは抵抗が勝ってしまう。
というか、部屋に俺が居る状況でエロを嗜むってどうなの?
「じゃあ部屋に戻るよ」
「え、一緒に見ないの」
「さすがに独りで楽しみなさいよ、気まずい」
「それもそうか」
男が興奮している姿を前に、俺はどうしろって話だよ。
「買ってきてありがとう。この恩は必ず返すよ」
「ああ、盛大に期待している」
ミッションコンプリート。
何事もなかったわけじゃないけど、やっと緊張から解放されてホッと一息つける。
しかし廊下を歩きながら、姉さんの追尾性能を思い出してしまいハッと振り返る――も、男子寮に居るわけないか。
というか俺と同じ速度で移動できるはずがないわけだし、考えすぎだよな。
そう安堵して自分に言い聞かせても、恐怖心は未だ消えない。
本当に怖かった。
通信機器がないから、GPSがあるわけでも盗聴器を忍ばせてあるわけでもない。
あのときは思ったけど、正直嗅覚で追ってきてた線も考えすぎだ。
であればカリナは、直感という名のセンサーだけで俺の居場所を察知し追ってきたことになる。
カイトからの「『用事がある』と言っていた」という言葉を信じすぎた、か。
「……?」
用事が終わってすぐ、なんの情報もなしにショッピングモールへ直行したというのか……?
な、なんて恐ろしい……。
執着、行動力、直感――探偵ですか?
ま、まあカリナの潜在能力は一旦置いておいて。
表ルートを順調に侵攻できているようで、本当に一安心だ。
裏ルートとエンドコンテンツルートは先回りして潰すことができたし、このまま学園生活を謳歌しつつ、ハッピーエンドへ一直線と行こうじゃないか。
ここまで読み進めていただき、本当にありがとうございます!
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