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英雄になるまで  作者: モカ


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第一話

「起きなさいルーファス」


その声で俺は目覚めるのだが眠い。

なので俺がやる事は1つ。


「リリーもうちょっとだけ寝かせて。」


甘えた声で言うが俺の期待は見事に裏切られる。


「ダメです。」


その声と共にリリーは俺の頭を枕から引っ張り上げ、その金髪のサイドテールで俺の顔をぴしゃりと叩く。やたら元気だ。朝日の光が窓から差し込んでいるせいか、俺を見る彼女の青い瞳は輝いている。


「昨日だって『今日から頑張る』って言ってたじゃないですか。冒険者ギルドに登録するんでしょ?」


「そりゃそうだが……」


俺は布団の中でもぞもぞしながら言い訳する。昨夜は長旅で疲れていたし、共和国という新しい場所に来たばかりで、心身ともに疲労していた。だからあと数分……いや、数時間あれば……


「ダメです。起きなさい。」


今度はリリーが俺の腕を掴み、本気で引っ張ってくる。この女、見た目は可愛らしいのに力がある。こんなことなら、帝国にいた時から知っているこの女のことをもっと警戒しておくべきだったと、ぼんやりと後悔する。


結局、俺は布団から引きずり出される羽目になった。


冷たい床に足が着いた瞬間、俺は完全に目が覚める。これが狙いだったのか。リリーはどこか満足げに微笑んでいる。


「朝食の準備ができています。食べたら、すぐに出かけましょう。」


「わかったよ。」


俺は寝ぼけた声のまま返事をする。朝食はどうやら既に用意されているらしい。帝国にいた時とは違い、ここは小さな家だ。豪華さはないが、どこか温かみがある。


リリーが先に厨房へ向かい、俺は着替えを急ぐ。昨日着ていた衣装から、今日の冒険に向けた格好へと着替える。元貴族らしい綺麗な服装だが、共和国では目立たないようにと、前々から用意していたものだ。


窓から外を眺めると、共和国の朝の街並みが見える。帝国とは違う空気感。この場所で、俺は新しい生活を始める。


この地で俺がやることは決まっている。


冒険者として俺は生きる。何者でもない状態から英雄になる。そうすればきっと…。


その目標を胸にしまい、急いで厨房への道を進む。


共和国に来て2日目、色々やる事はあるがとりあえずは飯だ。


厨房に着くと、既にテーブルの上には朝食が並べられていた。黒パンに、ハムのようなもの、そして野菜のスープだ。帝国の豪華な食卓とは比べ物にならないが、何故か懐かしい味がする。


「早いですね。」


リリーが笑顔で言う。その言葉に俺は少し頭を傾げた。


「お前が急かしたんじゃないか。」


「あ、そういえばそうでした。」


彼女はケラケラと笑う。こういう部分が、リリーらしいというか。帝国にいた頃から変わらない。自分のペースで、自由に生きている女だ。


「ほら早く食べましょう。せっかくのご飯が冷めちゃうわよ。」


そうして俺達は椅子に座りご飯を食べ始める。何から食べようか迷っていたが、俺はとりあえずスープを口にした。スープの温かさで冷えていた体が、少しずつ温まっていく。


「ところで、ギルドに登録する時に何か気を付けることはあるか?」


俺は食事をしながら訊く。リリーは顎に手を当てて考えた。


「そうですね。冒険者ランクというものがあるので、最初はEランクから始まります。危険な仕事は避けて、経験を積んでランクを上げていく……というのが通常ですが。」


「だが、俺は急ぎたいんだ。」


俺が言うと、リリーは少し真剣な表情になった。


「そうですか。でしたら、ギルドの職員に直談判してみるのもいいかもしれません。冒険者としての適性を見てもらえば、初期ランクを上げてもらえる事があります。」


「なるほど。」


この情報は有用だ。帝国にいた時、リリーは俺の相談役だった。その役割は、ここでも変わらない。


俺は食事を急いだ。朝日が高くなるにつれ、街も活動を始めるはずだ。そうすれば冒険者ギルドにも人が増えるだろう。なら、早い時間に行った方が、ゆっくり話を聞けるかもしれない。


「行きますか?」


リリーが言う。俺は頷いた。


「ああ。」


リリーの着替えが終わり、俺たちは家を出た。共和国の朝の街並みが迎えてくれる。石造りの建物が並ぶ通り。所々に商人の露店が出始めている。帝国とは違う活気があった。


道中、俺はリリーに従った。彼女は共和国に長くいるので、地理については詳しいはずだ。狭い路地を幾つも抜け、やがて大きな建物が見えてきた。


冒険者ギルド。


茶色の木材で作られた、三階建ての建物。入口には「冒険者ギルド 共和国支部」と書かれた看板が掛かっていた。


「ここですね。」


リリーが言った。俺は深呼吸をする。ここから俺の新しい人生が始まるんだ。


建物の中に足を踏み入れると、意外に人がいた。朝のこの時間でも、冒険者たちが掲示板の前に立ち、依頼内容を眺めている。剣戟の音が奥から聞こえてくるあたり、訓練場もあるのだろう。


「いらっしゃいませ。」


その声と共にカウンターの奥から、青髪青眼の男が現れた。年は俺より上だろうか。服は特殊な服を着ている(リリーが言うにはギルド職員が着る服らしい)


「新規登録ですか?」


男は訊いた。俺は頷く。


「ああ。冒険者として登録したい。」


「わかりました。では、こちらへ。」


男は俺たちを奥へと導いた。そこには簡素な机と椅子がある。


「簡単な書類と、適性審査を受けていただきます。」


男は説明を始めた。その名前は、ルトというらしい。


俺は、ここから俺の人生を変えるんだ。




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