第96話 終わりの始まり
「結果的に僕たちも現実世界に戻ってきてしまったけど、どう? 穂美香」
「うーん、現実世界は面倒だな」
「確かにそうだね、僕たちはゲーム世界に戻るとするよ」
「ちょっと、待てよ。ゲーム世界に帰っちゃうのか」
「うん、今回の件でゲーム世界と現実世界が行き来できるようになった。どっちで過ごすかっていったら、ゲーム世界かな」
「はあ? どういうことだ?」
「ゲートが開通したんだよ。僕たちはその方法を瞬時にプログラムとして学んだんだ。これならいつでも僕たち2人だけなら現実と行き来できる。僕たちはユートピアに帰るとするよ」
「そういうこと、みんなまたねー」
内村礼と国城穂美香はそういうとゲームの世界に帰っていった。
「春樹! やったわね」
「ああ」
麗美の影がなくなると、みんなが無事だったことに気づいた。
「まったく、あんな霧を出して麗美さんの影がなかったら、みんな巻き込まれてたわ」
「あはは、それもこみでの行動だったんだけどな」
「いやあ、これで一件落着ね」
「ああ、これで終わりだ」
「……」
「どうしたの麗美、顔色が悪いけど」
「わ、私は別に問題ないよ。じゃあみんなでライズ様の所に行こうか」
「そうだな」
俺たちは神八聖の元に向かった。
「復活してる」
「やあ、みんなに紹介するよ。アートだ」
「短い間だがよろしく頼む」
「え? もう復活させちゃったの」
「いや、実はあの後に、内村開園に襲われて危機に反応したことで、アート復活の魔法陣が強制発動した」
「それなことがあるのかよ」
「私も驚いてる。さて、見送ってもらうかな」
「ええ」
俺たちはアートと神八聖を異世界に見送ることにした。
「みなさん時間が来たみたいです」
「美織ちゃんとお別れだなんて私寂しいわ」
「由愛とは同じ気持ちよ。出来たら高校生として一緒に過ごしたかった」
「ありがとうございます」
「何かあれから学ぶことはあったか?」
俺たちは美織の寿命を少し伸ばした。この間にもっと世界の素晴らしさを知ってもらいたかったからだ。
「ええ、神八聖さんから愛を学びました」
「そうか」
「神八聖としての活動は美織を見届けて終わりにするよ。美織、君と出会えてよかった」
「私も同じです」
「ふん、ライズも多くの物を学んだようだな」
「ああ、これで君の気持にも寄り添えるようになったよアート。僕が学んだことは異世界にいったらたくさん教えてあげる。君のその人への不信感もきっと払拭できるはずさ」
「それは楽しみだ。今度は2人で帰れるんだな。その前にその少女を見送るべきだな」
「ああ、美織のおかげで2人乗りさ」
「そろそろ時間が来たみたいです」
「ひっく」
「何泣いてんだよ夏菜」
「はあ、別に泣いてないし」
「ごめん、私も夏菜ちゃんと同じ気持ちかも」
「私も」
「おいおい、みんな、俺も同意」
俺たちはみんなで美織の前で泣いた。
「私は神器に、現実世界で多くの刺激を与えたかった。その中で君は最も私に感銘を与えた存在だった。まさか私が愛について学ぶことになるとはね。まるで君は家族のような感覚を覚えたよ」
「私も短い間でしたが、神八聖さんに同じ気持ちを抱きました。これはβが私に教えたかったことなのかもしれません。私の存在は消失しますが、ライズ様、あなたの試みは確実に神器への多くの変化をもたらしたはずです」
「そうだね、それが私の目的だった。神器は二度とアートの心を蝕むことはしないだろう」
「それじゃあさよなら」
美織は消え去った。
「美織いいいいいい」
「美織ちゃんんんんん」
俺たちは泣き叫んだのだった。
これで4つの神器の転生体の全てが消えた。異世界への扉が出現する。
「じゃあ、私たちも帰らせてもらうよ」
「ええ、ライズ様からもらった役割を俺たちは果たせましたでしょうか」
「ああ、十分すぎるほどだ。神器は動きを止めて、封印される、これで僕とアートは異世界でやり直すことができる」
「よくわからないが、ライズの手伝いをしてくれた君たちにはお礼を言おう。俺もライズとやり直せるならそれは嬉しいことだ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、さよなら」
「はい」
俺たちはライズとアートを見おくった。
神器の転生体との戦いは全てが終わった。
ライズが言っていた神器の世界の滅ぼす力の予兆、それは魔王フロロメの復活だったのだろう。
これで俺たちは再び自由になった。
「はあ、結局春樹が全部もってったのね」
「別にいいじゃんかよ。じゃあ夏菜がやるか?」
「私にそんなことできるわけないでしょ」
「ふう、私疲れたから帰るわ、念のため春樹氏の家で寝ておくわ」
「私もそろそろ帰らせてもらうわ」
里音先輩と由愛は帰っていった。
「私もそろそろ帰るね」
「ああ、解散だ」
俺は夏菜とも別れて、自宅へ帰った。
「これで全部終わりだ。もう本当に疲れた今日は寝る」
俺は眠りについたのだ。
「なあライズ」
「なんだ、アート」
「確か沈静化した神器は輝きを失うはずだよな」
「ああ、そうだ」
「ごく少数なんだが、まだ俺にはαの神器が光っているように見える」
「うん? そうかい? 気のせいだろ」
「はっ」
その夜俺は目を覚ます。何か忘れているのではないか。ただその何かが思い出せない。
「誰だ?」
俺は扉の奥に人影を感じた。
「春樹君……」
「麗美! そうだ麗美! どういうことだ?」
俺は麗美の存在をフロロメ討伐から今に至るまで忘れていた。催眠術かなにかか。
ほかのみんなもそうである。
俺が感じていた違和感はこれだった。
「どうして麗美がここに」
「ごめんなさい。私もう我慢できない」
「何を言っているんだ」
傍には由愛が寝ている。つまりいま俺の扉の奥の目の前にいる麗美は捕食者の人格になりえる存在だ。
「どっちの麗美なんだ?」
「私はどっちの麗美でもない、だからここに来たの」
「それどういうことだよ!」
麗美は時々おかしい時がある。普段とスキルの麗美が入り混じったような、まるでゲーム世界の記憶を全て知っているかのような表情が普通の麗美の時に伺えた。
「私は春樹君にずっと助けて欲しかった。あの魔王城のときみたいに」
「どうして普通の麗美が記憶を持っているんだ? お前はスキルの方の麗美だろ!気安く話かけんな」
「だから私はどっちでもない」
「嘘つくな!」
俺はドアを力強く開けた。
「っ!」
ドアの向こうには麗美が泣いていた。
「春樹君、私をもっとみてよ!」
麗美はそのまま抱き着いてきた。その表情は紛れもない普通の麗美だった。
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