第73話 遠征という名の旅行
翌日俺は普段通り学校に通った。
「おはようございます春樹様」
「おはよう美織さん、昨日はどうも」
「ええ、私こそありがとうございました」
「あの後、神八聖先生とは何を話していたの?」
「別に大したことは話していませんわ」
「そう、それならよかった」
「残る神器はαとΩだけとなりましたね。後2つですからそこまで脅威度はなくなったとも言っていました」
「それはちょっと短絡的すぎないか?」
「君たちちょっと話があるんだ」
神八聖先生が訪ねてきた。
客室の小部屋に呼ばれた。
「そろそろ長期休暇に入るころだろ? そこで私は拠点を移そうと思う」
「それって、つまりこの期間に一気に攻めるってことですか?」
「ああ、神器の動きをこちらから掴みにいく。君たちも早くこんなことは終わらせたいだろうし、卒業要件も絡んでくるからね。どうせならこの長期休暇を使って終わらせるということだ」
「なるほど、分かりました。みんなにも言っておきます」
「ああ、長い遠征になるからね。君が連れていきたいメンバーは全員連れていくべきだよ」
「わ、私はどうすれば」
「美織さんは私と一緒に来てくれ。君の力は私の傍においておきたい」
「うん? なんで美織さんをあなたの傍に置いておくんですか」
「ああ、私も軽く魔法を使えるようになった」
「は?」
「あの戦いを見るに彼女の能力は神器の使用方法を知っているものだけに接続の力を与えるものだった。これを使えば私の場合は異世界の力をこっちに持ってこられるようになったんだ。昨日帰りに美織さんを連れて行ったのはこれを試すためだったんだよ」
「え? じゃあ異世界の大陸最強冒険者のライズ様が今目の前にいるってことですか」
「ははは、実際にそういわれると不思議な感覚になるね。でも私はこの力をここでは使うつもりはないよ。あくまで一般人として過ごしていたいからね」
「でも信じられませんね。例えば俺のレベル100スキルとライズ様の魔法はどっちが強いですか?」
「何を言い出すんだ君は。それは十中八九私でしょう。君に負けるほど私は老いてないからね」
「でも実年齢は数百歳以上なんですよね? 忘れちゃったんじゃないですか、魔法の使い方」
「ボウ」
神八聖は美織さんの接続を使って手から火を出現させた。
「これでいいかな?」
「なんでもないです」
「はあ」
「でも、これでもう楽勝ですね。ライズさんと俺がいればαとΩの神器は余裕で倒せるでしょう」
「一応、その2人が私を狙ってきたときの自己防衛ができるようになったと思った程度の話だと思ったんだけどね。ここまで来ると過剰戦力感が凄いわ」
「昨日の感じγは楽勝でしたからね。残り2つもサクサク倒していきましょうか」
「ただ気がかりなのがαの動向がつかめないということだ」
「どういうことですか?」
「実は私は神器の動向をある程度掴んでいるんだよ。γも私がこちらに来るように誘導していた」
「あんたが原因だったのかよ」
「ああ、そしてこれからの遠征はΩの動向を追って捕らえに行く作戦となっている。しかしαだけは痕跡が全くつかめないんだ」
「どうしてαだけ」
「αは具現化の力を持っている。特殊な方法で人の姿に転生しているんだと思うんだけど、全く実態がつかめないのが不気味だ。君たちも気をつけてくれ」
「分かりました」
「さて、私は先に休暇申請をさせてもらうよ。どうだい美織、向こうに行ったら私と一緒に行動することになるから春樹君の家で今日くらいは一緒に思い出でも作っておくというのは」
「わ、私、それやりたいです」
「歓迎するぞ」
その夜、俺は美織を連れて自宅に集まったみんなに今回のことを話した。
「えーと、長期休暇が来るんだけど、この期間を使って遠征に神八聖さんが行きたいそうなんだけど、俺も行く予定だな。ついてきてくれる人募集」
「……」
何だ? みんなして黙って。
「ぷっ、ははは」
「何笑ってんだよ夏菜」
俺はみんなに笑われた。
「何? ついてきてくれる人募集ってウケるんだけど、もっと言い方なかったの」
「なんだと夏菜! その口を閉じさせてやろうか?」
「やってみなさいよ!」
「ちょっと、ちょっと、2人とも落ち着いてよ。私はついていくに決まってるでしょ春樹君」
「というか私の同行は必須でしょ春樹氏」
「まったく、昨日あれだけのやり取りをしておいて、今更確認することは愚問じゃないかしら? 当然私も行くわよ」
「みんなありがとう」
みんながついてきてくれると決まって、とても嬉しかった。
「あれ? それで夏菜は来るの?」
「当たり前でしょ! 私も行くわよ」
「そりゃあそうか」
「これで全員参加ということになったわね。それじゃあ当日の準備を済ませましょうか」
遠征では遠くの街にある山と海に行くことになった。
「これってさあ、旅行だよね?」
「そうだな」




