第64話 転校生の正体
「拠点の整理だよ。いつα、γ、Ωが人になって現れるか分からないからね」
「βが抜けてますって」
「βはとなりにいるだろ?」
「は?」
「田穂美織、彼女こそβが人となった存在だ。先日、私の元に訪ねてきたよ」
「嘘だろ……」
「私も驚いたよ。神器としてまさかあそこまで人の心に順応しているとはね。よっぽど適応者から多くを学んだのだろう。なんにせよ彼女は私たちの味方のようだからね。これで少しは戦力の均衡がとれたんじゃない?」
「転校生と新任教師がいきなり来るなんて怪しいと思っていたけど、やっぱり俺の勘があたりましたよ」
「まあ君の傍に私たちを配置するにはこの方法が一番早かったんだ。由愛と麗美さん、こっちはβと君、これで均衡がとれるだろ?」
「まさか、βの傍にいると俺も能力を使えるんですか」
「さあ、どうかな、直接話かけて試してみるといい」
それから放課後になった。
「美織さん?」
「こんにちわ春樹様。私に何かようですか?」
「何か用って、君はβなんでしょ?」
「はてβ? いったい何のことでしょう?」
「とぼけるなよ。神八聖から君のことは聞いている」
「神八聖さんは私と接点はありませんよ?」
「え?」
どうやら本当に知らないようである。これは記憶喪失?
とにかくβといえば、俺のステータス反映ができるかもしれない。
「レベル100スキル『浮遊』! あれ?」
しかしスキルは発動しなかった。
「レベル100スキル? どうしたんですか?」
「な、何でもないよ。ごめん」
「はあ、それじゃあ、私はここらへんでお暇させていただきます」
俺は神八聖にからかわれているのか?
田穂美織からは普通の高校生という感想しかわかなかった。
「どうしたの春樹?」
「あ、里音先輩」
なんだろう、いつも身近な存在だっただけに、このタイミングであう里音先輩は久しぶりな感じがした。
「あの子は?」
「田穂美織さんっていう転校生みたいです」
「転校生……そう」
「何も聞かないんですか?」
「私はただの一般人よ。転校生が来たからってなにも聞くことはないわ」
「そうですね。今日は一緒に帰りますか」
「うーん、ちょっと遠慮しておくわ」
「え?」
「ごめんなさいね。由愛と麗美さんと春樹が何かとんでもないことに巻き込まれてるのは知ってるの。だけど今の私はみんなと一緒にいても足手まといにしかならないわ」
「そんなこと言わないでくださいよ」
「ごめんなさい」
そういうと里音先輩は走って、遠くへ行ってしまった。
「はあ、早くこの一件を終わりにしないとな」
俺が家に帰ると麗美と由愛がいた。
「ああ、春樹君お帰り! 今日は私が手料理を作ってあげるよ」
「え? 麗美の手料理? 最高かよ」
「麗美ちゃん私の分もよろしくね」
「勿論由愛ちゃん。今日はオムライスを作ってあげるからね」
麗美の手料理は絶品だった。
「麗美ちゃん好き好き!」
「ちょっと、由愛ちゃん、まとわりつかないでよ」
「また仲良くなったのかよ」
2人の中がよくなったようでよかったと思った。
「いやあ私麗美ちゃんといつも学校で遊んでいるのよ。部活も一緒だしね、それはなかよくなるでしょ」
「私も由愛ちゃんのおかげで学校が楽しくなったわ」
「色々と進展してるんだな。何か異変とかなかったか?」
「うーん、今のところはなかったかな……そっちはどう?」
「こっちはもう色々とありすぎておかしくなりそうだ」
「色々あったの?」
「そうそう、先ずは神八聖が新任教師で副担任になったり、田穂美織というβの神器が人になった存在が転校生として現れたりした」
「まって、まって、色々ありすぎて理解が追い付かないんですけど」
「本当にそうだよ。色々ありすぎた。だからあんまり考えたくないんだよな」
「神八聖は何を考えているのよ。いきなり春樹氏の学校に来るなんて、それに人になったβは敵じゃなかったの?」
「それが俺もよく分からないんだよ。神八聖を訪ねたら味方として現れたβを俺の傍においておきたいとしていたんだが、肝心のβこと美織は自分をただの一般人だと言って、βとしての記憶や、神八聖との関係を知らないみたいなんだ」
「これは明らかに裏があるわね」
「ああ、神八聖が何も考えずにβを春樹氏のところに送るわけがないわ。その美織という神八聖がいうなら人物は味方だとは思うけど、何か記憶がない理由があるかもしれない」
「それに学校にいる間、戦力は由愛がいないことで俺のそばだけ手薄になるからといっていけど、美織がいても俺のスキルは使えなかったからな。全然戦力になってないぞ」
「とにかく他の人になった神器がいつ現れるか分からないから、その美織さんの秘密はすぐ突き止めるべきだわね」
「由愛の予知はどうなってるんだ?」
「うーん、今のところ予感くらいの曖昧な物しか頭に浮かんでないかも。その予感では春樹氏と麗美ちゃんの双方に戦力が配分できるといい感じがしてるから、学校で手薄な春樹氏の戦力をどうにかするという神八聖の思惑は間違ってないかもしれない」
なるほどな戦力配分か。




