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第61話 ヤミ麗美

「ふふふ、さあ今の私はどっちの麗美でしょう」


「目を見なくても分かる。捕食者スキルを持った麗美だろ?」


「正解、また会えてうれしいよ王子様」


「麗美は神八聖が言っていたことをどう思う?」


「うん? それを私に聞くの? 私は全て壊れてしまえばいいと思ってる。ゲームの世界になっても構わないのよ。だから神八聖の言っていたことを聞くと胸がざわついちゃったわ」


「そういえばそっちの麗美は頭がおかしかったな。聞いた俺が馬鹿だったよ」


「ふふふ、そんなに力を持っているのに王子様は臆病なのね」


「そういうことじゃないんだよ。後いきなり麗美と変わるのやめろよ。由愛の近くでのみ切り替われるってことは必ず俺の能力圏内ってことだぞ?」


「分かってるって。下手なことはしない。それに私はあなたの話を聞いてあげたんじゃないの」


「まともに答える気ないだろ? なんだよ全て壊れてしまえばいいって」


「簡単に言うとね。こういうこと」


「なっ……」


 別人格の麗美が突然飛びついてきた。


「ねえ春樹君、何回も言うけど私は魔王城でのあなたをみてからずっとあなたを王子様って思ってるの。あなたと一緒にいられれば後は何でもいいんだわ」


「ちょっと、麗美の姿でそういう発言するのやめろよ。キャラが真逆すぎて調子狂う」


「こっちの私も結構いいと思ってるんじゃないの? さっきから抵抗しないじゃない?」


「はあ? 別に疲れてるだけだし」


「ふーん、そう」


「それで? なんで俺と一緒にいることが、全て壊れればいいにつながるんだよ」


「ふふふ、世界なんて冷たいものよ。私たちの見ている光景は、他の人にとったらその他の背景でしかないの。同様に私にとってはどうでもいいのよ。全て壊れてもどうとも思わない。春樹君と二人でいられればそれでいいの」


「たとえ世界が壊れても麗美がいてくれるのは確かに嬉しい。ただその麗美はお前じゃないから」


「これって言葉責め? 私そういう性癖じゃないんだけど」


「いや普通に思ったこと言っただけだから」


「ふーん、でも悪くないかもしれない。今日は王子様と2人っきりで話せてとても充実感に満たされたわ」


「そうかよ。勝手に満足したら元の麗美に代わってくれ」


「分かったわ。でもこれだけは言っておくね。何かあったらあなたを守れるのはこっちの私だけ。じゃあね」


 麗美の中の邪気が消え去った。


「まず麗美に守ってもらうなんて考えてない」


「……」


 元の麗美は寝ていた。入れ替わった瞬間彼女は睡眠に入ったようだ。


「なんで睡眠中に別人格が動き出すんだよ。不気味過ぎるだろ」


 そう思いながら俺も眠りについた。





 俺たちは翌日羅琉を訪ねた。


「は、はあ? ライズ様が直接訪ねにきたのか?」


「そうそう、確か神八聖と名乗ってたね。秘伝書と遺体は自分の体のストックを作るのに必要だから持ちだしたとか言ってた」


「そ、そんなことが信用できるか」


「神八聖の連絡先を手に入れました。よろしかったら一緒に来ますか?」


「私も行っていいのか? 羅琉様には私も聞きたいことがいっぱいある」


「いった方がいいと思うね。あの人なんでも知ってそうだし」


 由愛は戸惑う羅琉を後押しした。


「うーん、私も行った方がいいと思うな。その代わりお願いがあるのよね」


「お願い?」


「うん、これを解読してもらえますか?」


 俺は神八聖からもらった秘伝書を羅琉に渡した。


「こ、これはライズ様の秘伝書じゃないか。ということは一連の事件は本当に神八聖、つまりライズ様が原因だったのか」


「さっき言ったでしょ! 私たちはその秘伝書の中を知る必要があるわ。ライズ創設の秘話、それを知ってからもう一度神八聖に話を聞くの」


「なるほど、確かにまだ君たちにこの情報は開示していなかった。神八聖という人物と話すならこの情報は必須といえるだろう。今から君たちにライズの創設秘話について書かれたこの秘伝書を解読して話そうと思う」


 俺たちは羅琉からライズの創設秘話を聞いた。


「なるほど、転生体とは異世界で魔王を倒した英雄アートのことだったのか。そして神器とは彼が現実世界に来た時に転送装置して送り込まれたもの」


「そういうことになるね」


「まさか過去の英雄の人物の正体が判明するとはね」


「由愛は知ってたの?」


「ええ、里音ちゃんには明かしていたけど、私はプログラムウイルスとコミュニケーションをとっていたのよ。彼らの正体は神器であり、過去英雄とはアートという冒険者のことだわ」


「ふーん、でもこの話を聞くと、私の一連のやり取りは全てライズ様の掌で転がされてたってことじゃない? それってちょっと許せないかも」


「なんだよ、麗美は話についていけてたのかよ」


「え? 春樹君は私をナメすぎじゃないの? 流石に慣れたって」


「そうなのか……」


 普通だったら理解不可能な話の連続、俺はかろうじてゲームが現実になる世界を体験していたから理解できていたものの、麗美が理解していたのは意外である。


「これでライズ様への対面の準備は整ったんじゃないか?」


「はい、そうですね。そしたら神八聖のところに行きましょうか」








「ここが神八聖の自宅?」


 普通のアパートだった。


「ああ、来たか、あがっていいよ」


「貴方がライズ様……」

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