第55話 客人
「何、意味わかんないこと言ってんだよ。というか、いつの間に事情を理解してたのか麗美わ」
「みんなの話を聞いてたら何となく分かっちゃった」
「そりゃあ、よかったな」
麗美はこう見えて頭がいい方だ。勉強もできるし、この程度はのみ込みが速いのであろう。
「とにかく俺は変わらず同じ日常を過ごすつもりだからな。レベル100スキルとか忘れる。いいね」
「はーい」
今日あったことは見なかったことにして、普段の日常を続けることにした。
「ふう、昨日はとんでもないことが起きたが俺の日常は変わらない」
「春樹氏」
「うわ、由愛、なんでお前がここに」
「いやね。私の予知能力が君の傍にいた方がいいと言ってるのよ」
「おいおい、休日くらい好きにさせてくれよ。そもそも予知能力で何を見たんだよ」
「分からないわ。私の運命を見る予知能力はかなり薄まっているから、ただ君と一緒にいた方がいいっていう漠然な勘しか残ってないの」
「つまり漠然と俺の傍にいた方がいいっていう予感を感じたってことか」
「そういうことになるね」
「はあ、一体どういうことなんだよ」
由愛は麗美の学校に転校していた。髪型などの外見は麗美と結構似ているが表情に子供っぽさがある。
「私も忘れてもらっちゃ困るわよ」
「うわ、麗美もいるのかよ」
「まさか由愛ちゃんが私の学校に転校してくるなんて驚いちゃった。あれからすっかり仲良くなったのよ」
「お、おお、それはよかった」
「そういうわけで私と麗美はしばらく春樹氏の近くにいるわ」
「これはまた騒がしくなりそうだ」
「それで! 傍にいるのはいいけど、2人はさっきから何をして遊んでるんだよ」
俺の家に来た二人は、紙をじっと見つめている。
「春樹君は知らなかったの? 由愛ちゃんは私の所属してる文芸部に入ってくれたの。だから一緒にストーリーのログラインを描いているんだわ」
「春樹氏にもこの面白さを分かって欲しいわね」
「それはとても面白そうなことだね」
麗美と由愛が並んでいると同一人物が2人いるようである。顔の表情の子供っぽさが多少由愛にあるから見分けられるものの、それ以外は容姿も性格も似ているのだ。
「それで、結局何も起きなそうだけど俺と由愛が一緒にいる意味あった?」
「そうね、そろそろだわ」
「おっ」
インターホンの音がなった。
「どちらさま?」
「私はライズに所属する新月羅流というものです。あなたに用があってきました」
「ライズ? それって国城穂美香が所属していた組織か?」
これは由愛の予想が当たったかもしれない。
「ええ、話がはやそうでなによりです」
「なんで俺に用があるんですか?」
「急を要するので本部に来ていただけますか」
「うーん?」
後ろを振り向くと由愛が首を縦に振っていた。ちなみに麗美は手を振るだけで何もわかっていないようである。とにかくこれは行った方がいい案件だ。
「分かりました。その由愛も連れてっていいですか?」
「はい、いいですよ」
「ちょっと、ちょっと。春樹君! 私も行くからね!」
「え? 麗美も来るの? 多分ロクなことないと思うぞ」
「関係ないよ、そんなの。私だけ置いてきぼりなんて許せないからね」
「はあ、分かったよ」
麗美の要望で、彼女も同行することになった。
「はええ、凄い大きいビル」
「凄おー、私都会に来たのは初めてかも」
「そうなの麗美ちゃん、じゃあ私が都会について色々教えてあげるね」
「うんうん、ありがとう由愛ちゃん。今度一緒に買い物に行こうね! あ、その時は春樹君も一緒ね」
「分かってるよ」
俺たちは羅流という人物の車に乗って、ライズの拠点へ訪れた。
「あれ? こんなに大きいビルなのに人がいないですね」
「ええ、実はライズは数日前に解体したの。だから今は存在しない組織だわ」
「え? そうなの?」
「じゃあなんでライズを名乗ったんですか?」
「それはあなた達にここに来てもらうためですよ。穂美香様の関係者ということを示すのにはこれが一番早いですからね」
「なるほど」
「あなた達にはこの地下施設の研究所に来てもらいます」
「はあ」
「これは凄いですね」
ライズの地下施設を訪れた。
「ちょっと、この空間怖いよーう」
「私はこういう場所は慣れているわね。麗美ちゃんは私の傍にいれば大丈夫」
「ありがとう由愛ちゃーん」
「はあ、お前ら遺伝子操作組織ライズの地下施設にまで来たのに緊張感なさすぎだろ」
「安心して春樹氏、ここから先には間違いなく、私が傍にいてよかったという理由が隠されているわ」
「はあ、予知能力ってやつかよ」
「つきましたよ。ここはライズ創設者の秘伝書があった場所です」
「なんだここは」
最新機器で覆われたライズ研究施設の外装からは明らかに異質な植物で覆われた部屋がそこにはあった。




