(8)物見の魔法具
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ギルドマスターは、わたしがドン引いたのを察して、「すまん」と頭を掻いた。
「コレなんだけど」
わたしも見たこと無いが、簡易物見の魔法具をテーブルに置く。
ステータスプレートみたいなやつに、金色の装飾された枠が付いていて、右上の方に何かを入れるスペースがある。恐らくここに魔核を入れるのだろう。
「試してみるので、ここに嵌まるくらいの魔核はあるかしら?」
ギルドマスターは持って来させようとしたが、
「わたし、持ってるです!」
リンがさっきのゴブリンの魔核を出した。
「返すから貸してちょうだいね」
リンから魔核を受け取り、嵌める。
魔核を嵌めると、画面が光りだした。画面には
『使用者は手を乗せてください』
と出た。わたしが乗せる。
『使用者:エルフ ユーミ
何を探しますか?』
わたしは、ザックと指で書く。
『探索:ザック…探査中…』
『結果が出ました。
探索:ザック
場所:冒険者ギルド ギルドマスターの執務室。扉から3
歩の辺り』
日付と時間と共に、その文字が映し出された。
「これは…」
プレートを覗き込み、みんな絶句している。
コンコンとノックの音がした。
「なんだ?今は忙しい!」
ギルドマスターが扉に向かって怒鳴る。
「マスター!掲示板の上に何だか文字が浮かんでます!」
焦った人の声がする。
あ。不正防止に使ったら掲示板の上に表示されるんだった。
「…不正防止に、使用すると掲示板の上に、誰がいつ、何を探したか表示されます。場所は出ません」
ギルドマスターは確認に出ていった。
恐らく、掲示板の上に
『○月○日○時○分 使用者:ユーミ 探索:ザック』
と出ているだろう。ザックごめん。
ドスドスと言う音と共に、ギルドマスターが飛び込んで来た。
「その魔法具は凄い!是非とも売ってくれ!」
ズイズイっとわたしに迫ってくる。こわい。
「…座標とか地図は表示されないし、ギルドから持ち出せないけど、大丈夫かしら?」
「ああ!問題ない!元々の物見の魔法具は画像が映し出されるだけで、その画像で場所を特定していただけだ。場所の特定に時間掛っていた。勿論、持ち出せなかった。この魔法具なら場所は特定してくれているし、何より領主の許可がいらん!」
「不正もできないだろ?」
ザックは覗きなどの犯罪を気にしているらしい。
「使うと、掲示板に暫く表示されるし、使った履歴も見ることが出来るわ。履歴は削除出来ないの」
「売ってくれるか?」
「ええ、勿論よ」
「しかし、こんな良い魔法具、大切なものじゃないの?」
マリアが気にする。流石に今作りましたとは言えない。
「ええ心配いらないわ。里を出るときに持ち出したのだけれど、元々換金するつもりだったのよ」
ニッコリと笑顔で返す。
「じゃ、金「白金貨2枚でどうだろう?」貨3って?え?」
わたしの言葉とギルドマスターの言葉が被った。白金貨2枚?!白金貨って確か100万円の価値よね?嘘でしょ?
わたしが驚いていると、白狼牙の面々も驚いている。だよね。そんなに高いのは。
「マスター、それは破格過ぎませんか?」
いつの間にか、ギルドマスターの後ろに、細身の男の人が立っていた。
「ああ、エバンが。安すぎるか?」
「ええ。魔法具店だったら、倍でも買取るでしょう。オークションに出せばその倍くらいにはなるかと」
ギルドマスターは「そうか…」と考え込んでいる。いや、マジで?んで、この人誰よ?
「申し遅れました。副ギルドマスターのエバンと申します。以後お見知りおきを」
「…どうも。ユーミです」
何か、冒険者ギルドの人っぽくない感じがする。
「エバンさんは、こう見えて凄腕のアサシンだったんだぜ」
ジョーイが教えてくれる。
「ははは。昔の話です。今はギルドの目利きや雑務を担当しています」
笑っているけど目が笑っていない。まさか、スパイじゃね?
「…雰囲気で誤解されますけど、私も領主には憤ってますから」
あ。領主のスパイかもって思ったのがバレた。
「うわっはっは。エバンは俺が冒険者だった時のパーティーメンバーだから、安心してくれ」
なら、心配いらないか。
「ユーミよ。白金貨3枚で勘弁してくれねぇか?魔法具屋に行けば、もっと高く買ってくれるかも知らねえが、コイツはこのギルドに必要なんだ。頼む!」
ギルドマスターが頭を下げる。
金貨3枚って言おうとしてたなんて言えないな。
「…わかったわ。では、提案。白金貨2枚でいいので、白金貨1枚分を白狼の牙に見舞金として払ってくださらない?」
「?!」
「ユーミさん?!」
「それは…!」
「貰い過ぎですよぅ」
白狼の牙の面々は驚いてい声を上げる。
「彼らはたまたま生きて帰ってこられたけど、全員が麻痺してる状態は恐怖だったでしょう。それに対する見舞金は必要よ。わたしが横から掻っ攫って行く様な事はしたくないの」
「…承知した。ユーミ、済まねぇ。助かる」
「私からもお礼を申し上げます。ユーミさん、有難うございます。また、白狼の牙の皆様には大変ご迷惑をおかけしました」
ギルドマスターと副マスターが揃って頭を下げる。
「では、これで解決で。2時間後にユーミの試験だろ?」
忘れていたが、わたしはまだ冒険者ですらなかった。
「今すぐ金の用意ができねぇから、そん時に払わせてもらうよ」
「あ、じゃあ、白金貨は使いにくいので、大金貨と金貨で頂けるかしら?」
「俺らも頼む」
「承知しました」
エバンが請け負ってくれた。
ギルドマスターの執務室を出ると、ザックの周りに冒険者がワラワラと集まってきた。
「さっき掲示板にザックの名前が」「ザック、お前何かやらかしたのか?」「何でザックが…」
ザックは対応に追われている。すまぬ。ザックよ。
「それにしても、ユーミさん、あの魔法具、あんな値段で良かったんですか?」リンが尋ねる。
「そうよね。あの値段じゃギルドにあげたも同然だわ」
え?驚いてたのは、安いと思ったからっすか?
「…冒険者たちに被害が出るのは困るし、いいのよ」
「ユーミさんは聖人ですね」
リンがキラキラした目で見てくる。聖人とかマジやめてくれ。
話を変えなくては。
「そうだ。鋼級の試験ってどんな感じ?」
「どうだったっけな」
「俺のときは、いくつか素材を見せられて、何の魔獣か答えろとかだったな」
「なるほど」
いつの間にかザックが戻ってきた。話ながら、ギルドを出る。
「俺んときは、指定の素材を取ってこいだったぞ」ジョーイは言う。
「わたしもそうだった」マリアも同意する。
「わたしはザックと同じでした」と、リン。
「口頭質問って言ってたし、ザックやリンと同じ感じじゃない?」
「時間も遅いしね」
素材当てクイズなら、検索と鑑定で何とかなりそう。
「その後は、ギルドの職員か雇われた冒険者と模擬戦だな」
うそ。戦うの?マジめんどい。ってか、闘った事ないけど。大丈夫かな?
「まぁ、ユーミなら心配いらないだろうが、むしろ相手が心配だな」
こら、君達同意して笑うな。手加減くらいするわ。
「先に宿に行って、ユーミの部屋取ろうか」
ザックの提案に、宿へ向かうこととなった。




