(7)ギルドの事情
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「俺達はギルドの依頼書に不備があったせいで、危うく全員命を落とすところだったんだ」
ザックはギルドマスターを睨みつける。
「依頼書に不備?一体どんな不備が?」
「昨日、パラライズモスの討伐依頼が出ていた。俺達は今朝それを受注したんだ。要報告害魔獣は、物見の魔法具で、ギルドが責任を持って居場所の特定するのが義務だよな?」
「…ああ。それは勿論。まさか…?」
ギルドマスターは青褪めた顔で眉を寄せた。
「まさか?もしかして思い当たることでもあるのか?もしや、冒険者の報告を鵜呑みにして、確認をしてなかったんじゃないよなぁ?」
ザックはより鋭い目でギルドマスターを睨みつけた。
ザック、なかなかしっかりリーダーやってるじゃん。強面のギルマス相手に怯んでないし。
「…一体何があったのか聞かせてくれるか?」
ギルドマスターは、苦しい表情で尋ねる。
「依頼書には、カゼフの森に入って、山道を半日歩いた辺りって書いてあったよ。それは、さっき素材買い取り窓口と、依頼報告窓口でも確認してる。当然、俺達は全員確認してる。所が、ヤツは四半日ほど歩いた場所でいきなり現れたんだ。そのせいで、俺達は麻痺予防薬が間に合わず、全員麻痺状態になった」
「…」
「幸い、たまたま通りかかったユーミさんに助けられて、いまここに居られる。あの時ユーミさんが居なかったらと思うとゾッとする」
ザックははぁっと溜息を吐いた。
「なんでだ?この街は冒険者には厳しいのは知ってるが、ここまでじゃなかっだろ?こんな杜撰な依頼書じゃ、死人が出るぞ」
パラライズモスがもう一匹居たとは考えられないのかな?何かそう言いうのを確認できるのないかしら?
『クリエイト:検索』
なかなか良さそうな魔法じゃん。よし、声に出さず、検索パラライズモス。
『パラライズモスは肉食の昆虫型魔獣です。鱗粉には麻痺毒が含まれます。人や獣を麻痺させ、体液を吸います。また、卵も産み付けます。縄張り意識が強く、普段は一つの森や山に一匹しか生息していません。翅から音波振動によって獲物の場所や、敵を検知します。繁殖時期になると、どこからともなく集まり始め、数十匹の集団となります。一匹だと銅級の魔獣ですが、繁殖期の集団では鋼級となります』
なるほどね。一匹いたら近くにいるはずが無い訳か。
「…すまない。謝って済む話じゃないのは分かっているんだが。オメェらは銀級パーティーだから話すが、他言無用で頼む」
わたし、冒険者登録証すらないですが、きいていいんすかね?
「ああ。わかった。俺達は理由が知りたいだけだ」
ザックの言葉に、みんなも頷いた。
「実は、冒険者達は勘違いしているが、物見の魔法具はギルド所有のもんじゃねぇんだ。正確には」
「というと?」
「冒険者ギルドがある様な街には、必ず領主の館の近くに高え塔があるのは知ってるか?」
「街のデカイ屋敷にやたらと高い塔があるのは知ってる」
「あそこに物見の魔法具があるんだ」
「ええ?!俺、エステラのギルドで物見の魔法具を見たけど、そんなんじゃなかったぜ?」
ザックは驚いて目を丸くする。
「正確にはって言っただろ?その塔にある物見の魔法具と、冒険者ギルドの物見の魔法具両方ないと見る事はできないんだ
」
あー、わかった。カメラとモニターみたいなことよね。きっと。
「塔の魔法具の魔法で場所を探し、ギルドの魔法具に映し出してはじめて使えるんだ。だから、物見の魔法具を使うには領主の許可がいる」
ギルドマスターがそういった途端、みんなの顔が暗くなった。
「領主の許可…なんとなくわかったぞ」
ザックはまた溜息を吐いた。
「パラライズモスごときに物見の魔法具は使わせないとか言われたんだろ?」
「…その通りだ。塔にある物見の魔法具に使われている魔核は、高価だからパラライズモスくらいの魔獣の為に魔力は使わせないとな。鉱夫たちも危険だと伝えたら、『この街の鉱夫がパラライズモスにやられる事などない』と突っぱねられたんだ」
「確かに、ドワーフは麻痺に強いと言われているが、絶対ではないし、木こりや冒険者達は人族が多いのに…」
ジョーイは呆れて物も言えないと言う表情だ。
「信じられない。自分も人族なのにバカにしてるわ」
マリアも憤慨している。
「報告を上げた冒険者に何度も確認したんだが…本当に済まなかった」
ギルドマスターは頭を下げる。
「冒険者ギルドは独立組織だから、権力に屈しないなんてのは建前だ。正に物見の魔法具は領主の許可が必要だし、ギルドの建物も領主から借りている。働いている者も街に住んでるんだから、領主に逆らえるわきゃねぇ。全く情けねぇ話だ」
冒険者が安全に冒険できるかは、その街の領主にかかってるんだね。
なんか、ギルドマスターが可哀相になってきたわ。物見の魔法具に変わる道具作れないかな?
クリエイト、簡易物見の魔法具
『クリエイトします。機能を付け加えてください』
範囲は半径隣町まで。使った人物と何を探したか、日付、場所、時間を確認できて、削除は不可。使った直後から1時間、掲示板の上にそれが表示される。
不正は防止しないとね。
んで、動力はゴブリンの魔核かそれに対応するクズ魔核でも可。大きさは、ステータス確認板位で。ギルドから持ち出しは出来ない。探せるのは、魔獣、人(全種族)、犯罪者でいいかな。以上で。
『クリエイトします。残り30秒…』
「…ギルマスも苦労してんだな。今回は、俺達は無事だったから、もういいが、これから同じことがあったらどうするんだ?」
『残り20秒…』
「そういう訳にはいかねぇ。ギルドから見舞金を用意させてもらう。ただ…」
「口止め料ってわけか?」
『残り10秒…』
「すまん…」
「…わかった。けど、何か対策をしてくれ。喋るなってんなら、その対策次第にさせてもらう」
『残り5、4、3…』
「あの、横からごめんなさい」
『簡易物見の魔法具作成完了。空間収納へ送ります』
「ユーミか、なんだ?」
「物見の魔法具ほど万能かは分からないけど、代わりの役割位出来る魔法具があるって言ったらどうかしら?」
「なんだって?!」
ギルドマスターが、わたしを凝視する。こわい。わたしは思わず仰け反った。




