(5)鉱山の街【1】
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「そう言えば、貴方たち結構な腕に見えるんだけど。パラライズモスに後れを取る様に思えないわ。何かあったの?」
気になっていた事を、ザックに尋ねてみた。
「…ああ。本来ならば、パラライズモス程度の魔獣にやられる事なんてないんだ。それもこれも、あの街の冒険者ギルドがっ」
ザックがなんか思い出して怒りに震えている。
「そうなのです!私たちは麻痺予防薬も準備して、万全な準備をしてやってきたのです!」
リンもぷんぷんしている。
「じゃぁ、どうして全員麻痺なんてことに?」
「街で売ってる麻痺予防薬は、湯が湧く程度の時間しか効き目が続かないんだ。だから、依頼書にあった付近まで来て、パラライズモスを目視したら薬を飲む予定にしていたんだけど」
ジョーイが苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「依頼書にあった場所よりも、かなり手前で行き成り現れたんだ。パラライズモスは巨体の為、生まれた場所からあまり離れない。だから、依頼書の情報が正しければ、あんな所で出くわす事はないんだよ」
「本来ならば、要報告害魔獣の報告が入ったら、冒険者ギルドにある物見の魔法具で、魔獣の位置を特定してから依頼書として出すはずなのよ」
マリアも憤慨している。
「…冒険者ギルドは、その魔法具での確認を怠ったってこと?」
「ああ。そうとしか考えられない」
ザックはギリリと噛み締めた。
「今向かっている街は、鉱山の街で、名はコレール。街の直ぐ近くにある鉱山のコレル山から取った名だ。街には沢山の鍛冶屋があって、ドワーフも沢山いる。街は採掘や鍛冶に重点を置いてるからか、冒険者の待遇は良くない。武器や防具は騎士や兵士だけじゃなく、冒険者も使うってのに…」
ザックは悔しそうだ。
「領主は人族なんだが、職人気質で政治に疎いドワーフを逆手にとってる感じだな。冒険者を見下している。それがギルドにも反映してるんだ」
ジョーイも不満げだ。
「コレールには、武器と防具の修繕に来たのよ。元々は、コレールから10日程離れた、エステラって街を拠点にしているの。路銀が底をついたので、コレールで少し稼いでから帰る予定なの」
マリアが肩を竦める。
「コレールがそんな街だって知ってたのに、お金が底をついちゃったのはどうしてなの?」
「それも!あの街のせいさ」
ザックはぐぬぬっとしている。
「俺達が懇意にしている店があるんだけど、そこの経営者がかわったのか、派遣されてきたのかしらないけど、何時もの倍の値段を吹っ掛けられたんだ」
「抗議はしたんでしょ?」
「おやっさんは口を噤むばかりだし、対応した人族の男は、小馬鹿にした顔で、『お嫌なら、他にどうぞ』とか抜かしやがるし」
「武器を買ったときから、その店のおやっさんにしか触らせてないし、今更他の店になんて、ツテもないし。泣く泣く言い値で修繕に出したんだ」
ザックはしょんぼりしている。
「返ってきた武器や防具は、しっかり修繕されていたし、あの店員が問題なんだろうけど」
「おやっさんから助けを求められた訳でもないから、口も出せないし」
「それで、路銀が無くなって、仕方なく依頼を受けたわけね」
「本当は、さっさとエステラに戻りたかったです」
リンも溜息を吐いた。
良さそうな街なら、根を張ろうかと思ったけど、その街は辞めた方がよさそうだ。
「それは災難だったわね。今回でエステラに帰る路銀には足りそうなの?」
わたしが尋ねると、リンは元気に頷いた。
「パラライズモスの素材やゴブリンの魔核が無傷で手に入ったので、十分です!ユーミ様のお陰です」
リンの言葉に、みんなも笑顔で頷いた。
「お役に立てて、何よりだわ。取り合えず、今日はコレールに泊まろうと思うのだけど、良い宿は知ってるかしら?」
「ああ!俺達が懇意にしてる宿があるから、教えてやるさ」
ザックが白い歯を光らせて請け負ってくれた。
それから、暫らく歩くと、大きな城壁と門が見えてきた。石造りで、一つ一つのブロックが大きい。無骨でいかにも鉱山の街の城壁という感じた。
「ユーミは俺達と一緒に入ろう。こっちへ」
ザックに伴われて、門兵に近づく。ザックたちはギルドカードを見せる。
「この人は、俺達の連れだ。身分証明書が無いので、入門料を支払うよ」
そう言われた門兵は、何やら水晶玉の様な物を持ってきた。
「名前と種族を」
「ユーミ、エルフよ」
「じゃ、ユーミ。犯罪歴を調べるから、これに手を乗せて」
門兵に言われるまま、水晶玉に手を乗せる。手を乗せて暫くすると、水晶玉は黄色に光った。
黄色?!なに?!なんなの?なんかだめなの?めっちゃ焦る。
「よし!何もないな。大銀貨1枚だ」
ビックリさせるわ。何も無かったのね。
わたしは、大銀貨を門兵に渡して、無事に街に入ることができた。
「ユーミどうする?俺ら先にギルドに報告に行くけど。手っ取り早く身分証明書つくるなら、冒険者ギルドだぜ」
ザックに言われて、取り合えず、冒険者になる事はないが、冒険者ギルドで身分証明書を作ることにする。
鑑定とかされたら困るし、ステータス改竄するか。
『クリエイト:隠蔽』
わたしは、こっそりステータス画面を出していじった。
『名:ユーミ(有沢夕実)
人種:(エンシェント)エルフ(転生人)
性別:♀
ジョブ:魔法師
クラス:金 (オリハルコン)
体力:150
魔力:5000(∞)
使用可能魔法:鑑定 火炎属性魔法 水属性魔法 土属性魔法 結界魔法(オートクチュール 空間収納 シェフ ファーマー ファッシャーマン 無属性魔法)
特殊:(創造魔法) 女神の加護 (隠蔽)
※()内は隠蔽可能』
こんなもんだろう。
門を抜けると、やはりなんだが無骨な街並みだ。全体が石造りで、華美な装飾は少ない。しかし、一つ一つ拘って造られているのがよくわかる。
「冒険者ギルドはこっちよ」
マリアに手を引かれて、冒険者ギルドにやって来た。飾り気のない、石造りの建物だ。
中に入ると、左手にはテーブルと椅子が並べてあり、冒険者らしき人たちが座っている。右手には大きなボードがあって、依頼書が貼り付けられている。正面には長いカウンターがあって、上から『登録受付』『依頼受付』『依頼報告受付』『素材買い取り窓口』『鑑定』など、それぞれの窓口の看板がぶら下がっている。役所みたいだ。
「俺達は報告がしてくるから、リンはユーミに付き添ってやって」
ザックに言われてリンは笑顔で請け負う。
「ありがとう。助かるわ」
ザック達は素材買い取り窓口に向かった。
「あら?報告するんじゃなかったの?」
「素材の窓口で、討伐証明部位を確認してもらって、依頼書に版を貰うの。それを持って報告受付に行くんです」
「なるほど」
それじゃないと、報告受付の窓口のお姉さんが血塗れになるもんね。納得。
「さあ、登録に行きましょ」
「登録お願いします」
リンが声を掛けた。
受付には、犬獣人らしき女性が座っている。垂れ犬耳めっちゃ萌える。
「あら?白狼の牙の…登録?」
リンを見て訝しんでいるの。
「わたしじゃなくて、この方です」
わたしは、ずいっと前に出た。
「冒険者の登録をお願いしたいのだけど」
「あ、はいはい。じゃ、これに記入を。文字書けます?」
…書けるのかな?でも、文字読めるし多分大丈夫よね?
「…大丈夫です」
一か八か、羽根ペンを持つ。インクを浸けて紙を見た。名前や出身地を書く欄がある。
「あの、出身地書かなくちゃいけません?」
「ああ。取り合えず名前と、ジョブだけで大丈夫です」
よし、名前はユーミ、ジョブは魔法師でいいか。
「書けました」
「はい。では、この板に手を乗せてください」
犬獣人のお姉さんが、用紙を下げて、下敷き位の大きさの金属の板を出してきた。言われるまま、手を乗せる。
すると、さっきの水晶玉の様に光った。さっきと違うのは、文字が浮かんでいる。ステータスのようだ。
「はい、手を退けて。…?!」
犬獣人のお姉さんは、板を覗き込んで、息を飲んだ。
「…流石エルフと言わざるを得ないですね。本来ならば、木級から始めるべきなのですが、このステータスだと…暫く掛けてお待ちください」
「ユーミさんはやっぱり凄いです!きっと木級より上からスタートですよ!取り合えず、待ちましょっ」
リンに引き摺られて、椅子に座った。




