(4)ゴブリン討伐
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そんな話をしていると、木を伝ってジョーイが帰ってきた。
「ジョーイ、どうだった?」
ザックの前にシュタッと飛び降りた。
「確かにゴブリンが5匹、この山道の脇に居たよ。ホーンラビットを取り合って小競り合いしてた。このまま行けば、絶対に見つかるな。メイジもファイターも居なかったし大丈夫だろ」
「害魔獣だしな。元気だしやるか」
ザックがよしっと気合を入れた。
「害魔獣って何?」
隣りに居たマリアに聞いてみる。
「害魔獣って言うのは、冒険者が見つけたら、討伐依頼を受けていなくても、討伐が義務になっている危険な魔獣なの。但し、レベルが見合ってなかったり、怪我をしていたり、数が多すぎて討伐出来ない場合は、速やかに最寄りの冒険者ギルドに報告するのが掟。これをしないと、罰金とか最悪冒険者の資格剥奪もあるわ」
「なかなか厳しいのね。討伐したら報酬はあるの?」
「それは当然あるわ。証明部位をギルドに提出すれば一体いくらと、報奨金が貰えるの。別に討伐依頼が出ていたら、それも上乗せされるわ。冒険者が討伐できず、報告だけした場合、害魔獣の討伐依頼が出されるわね。但し、この討伐依頼は報告した冒険者は受けられないわ」
そらそうか。討伐しないで報告して討伐したら、わざと二重取りすることになるもんね。
「どう云った魔獣が、害魔獣になるの?」
「そうねぇ。ゴブリン、オーク、スライム、マッドマウスこれが、要討伐害魔獣ね。その場所によって変わるわ。後は、今回のパラライズモスみたいな、要報告害魔獣がいるわね。これは現れた時々によって色々ね」
「要報告害魔獣ってのは、強かったり、数が多かったり、パラライズモスみたいに特別に準備が必要だけど、速やかに討伐が必要な魔獣ってことかしら?」
私が言うと、マリアが嬉しそうに笑って、「そうそう!」
と言った。
「要報告害魔獣は、報告した冒険者でも、レベルが見合っていたら受けても構わないの」
準備が必要だから、その場で倒せないもんね。報告は周りに危険を知らせるために必要って事だね。
歩きながら話していると、ゴブリンが見えてきた。
「皆、準備して!」
ザックが小声で指示する。
ゴブリンは、薄い緑色をして大きさは体長は130cmくらい。鼻と耳が尖っている。異世界物でよく見るゴブリンそのものだ。角の生えたウサギを取り合っている。5匹で引っ張るもんだから、ウサギは血塗れだ。グロい。血飛沫が飛んだ、ボテッと出っ張った腹が妙にリアルを感じさせる。
これは、スリープかな。
『クリエイト:スリープ』
『魔法統合により、クリエイト:無属性魔法となります』
あれ?何が統合したのかな?まぁ、いいや。
「広範囲スリープ」
わたしは杖を振って、5匹を眠らせた。
さぁ、攻撃するぞと言う段になって、ゴブリンがバタバタと倒れたもんだから、みんなビックリしている。
「あ、ごめん。眠らせたし、やっちゃって」
わたしはぺいぺいと手を振って言った。
「あ、どうも」
緊迫した空気が、一変に和やかな雰囲気となった。
「せっかくだし、魔核取ろうか」
ザックが言うと、みんなそうだねーっと云う風に頷いた。
「魔核って?」
「…魔核知らないの?」
ザックが驚いている。まずったかな?
「魔獣を倒したことがなくて…」
慌てて言い訳する。
「魔獣倒したこと無いのにすげぇな…やベェ人かな?」
「え?何か言った?」
ザックは今何か言ったか?
「い、いや何でもない。魔核ってのは、魔獣の心臓みたいなもんだな。魔核を潰さないと死なない魔獣が多いから、なかなか手に入らないんだ」
「さっきのパラライズモスは魔核よかったの?」
「虫系の魔獣は魔核が脆くて小さいし、その上絶命すると崩れるんだ。だから無価値なんだ。ゴブリンの魔核も大きくはないけど、しぶとくて魔核を倒さないとなかなか死なない。だから、そこそこの値段で買い取ってもらえるんだよ」
そう言いながら、ザックはゴブリンに近づいて言った。
「そうそう。こんなに簡単に5匹ものゴブリンに危なげなく近付ける事なんてないしな」
ジョーイも近づく。
「ゴブリンは弱いけど、傷つけられると病気になるかもしれないから厄介だもの。魔核を傷つけないで倒すなんて本来無理よ」
マリアも行く。
「簡単に討伐も出来て、魔核も無傷で確保出来るなんて、ユーミ様のお陰です!」
リンも飛び跳ねながら、ゴブリンに駆け寄った。
笑顔で、「こんなにいい状態の魔核がとれたぜ」とか、「なかなか大きいな」とか、「ゴブリンのクセに綺麗な魔核じゃない」とか「1つ魔力補充代わりに貰っていいですかぁ?」とか言ってるけど、おたく等血塗れですよ。スプラッタな情景が広がっている。
「おっと。討伐証明部位も忘れずにっと」
ザックはやはり笑顔で右耳を、切り取る。
「切り取った耳はこっちに入れてくれ!」
血みどろのなか、笑顔で耳のやり取りをしている姿は地獄絵図だ。
「よし、これでいいな」
ザックが血塗れゴブリンの死体を見回して言うり
「ゴブリンの遺骸はどうする?」
「そうだな。街道が近いから放置すると、フォレストウルフが来たら危ないしな」
「燃やします?」
リンが提案した。
「5匹燃やす火力じゃ、火事になっちまう」
「じゃぁ、埋める?にしても、フォレストウルフなら、臭いで寄ってくるわね」
何か、血塗れで会議してるわ。
「なら、わたしに任せて」
これ以上、血でドロドロのみんなを放置できない。ゴブリンの死体の片付けはさっさとやろう。
わたしは、山道の脇にある少し広くなった場所に穴を掘る。
「採掘」杖を振る。「そこに死体を放り込んでくれる?」
わたしの言葉に頷くと、彼らは5匹の死体を穴に放り込んだ。
瞬時に凄い火力で燃やす魔法と、周りに被害を及ばないようにする魔法あるかな?
『クリエイト:火属性魔法』
『火属性魔法は火炎属性魔法にランクアップします』
『クリエイト:結界魔法』
きっと、便利な魔法が出来たに違いないね。やってみよ。
先ずは結界を張る。イメージは死体を閉じ込める感じで。
「結界」
すると、ゴブリンの死体の上にいくつもの光る魔法陣が現れた。
「おお!」
白狼の牙達は、驚きの声を上げた。
んで、結界の中に杖の先を突っ込んで。何がいいかな。すげえ炎って、感じの…よし
「業火」
杖の先から、白い炎が吹き出す。その色から、高温なのが見て取れる。結界のお陰で周りは熱くない。
こんなもんかな。わたしが炎を止めると、結界の中には灰となり、形も無くなったゴブリンの成れの果てがあった。
「凄い!こんなにキレイに焼けてしまうなんて」
リンが口に手を当てて驚いている。
待て待て、その手は血塗れだ。
見兼ねて、穴を塞ぐ前に、彼らを洗うことにする。
「広範囲洗浄」
今日3度目の丸洗いだ。白狼の牙の面々はすっかり綺麗になった。それを見届けて、「充填」穴を埋めた。
「…いやぁ、ホントに凄いな。また助かったよ」
ザックは呆気にとられながらも、わたしに礼を言った。
「倒したのは貴方たちだから。そう言えば、フォレストウルフは害魔獣ではないの?」
「謙遜なのか分かってないのかどっちなんだ…?あ、いや。フォレストウルフだな。フォレストウルフは数が増えたり、町に近づいたりしなければ、討伐の必要は無いんだ。寧ろ、森に居る害魔獣を餌にしてる益魔獣だな。何か必要があって依頼が出たり、襲われたりしない限り放置で構わない」
なるほどね。魔獣だから討伐しなきゃいけないってことはないのか。
「よし、じゃぁ、街に向けて出発だ」
ザックの呼びかけに、各々歩き出す。歩きがてら、みんなからお礼を言われ、賛辞を浴びせられた。
わたしからすると、なんの抵抗もなく、魔獣を解体するみんなの方がよっぽど凄いけどな。冒険者登録した方がいいと言われたけど、ちょっと二の足を踏むなぁ…
グロいリアルを目の当たりにして、この先の身の振り方を悩んでしまった。




