(3)通貨を教わる
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ありがちな転生物ならば、森の中で1泊して、得意の異世界料理を振る舞って羨望の眼差しっ!とか何だろうが、近くの街までは、日帰り出来る距離らしい。少し休んで、街に向かうことになった。
「こんなに元気な状態で街に帰るのはもったいないくらいだな」
ご機嫌のザックはスキップする勢いだ。
「ユーミさんのポーションは本当によく効きますね」
リンの言葉に一同頷いた。
「…ユーミさん、飛んでるの?」
マリアに気付かれた。
「歩くの苦手なのよね。飛んでる方が楽」
「ええ?!ずっと飛行してるなんて、魔力的に大丈夫ですか?」
リンが目を丸くする。
「魔力は多い方だし、この飛行はそんなに魔力使わないから大丈夫よ」
「はぁー。エルフは凄いです」
リンが妙に感心している。誤解があるとボロが出るので、取り繕う事にする。
「ウチは他のエルフとも交流のない、閉鎖された里だったから、他のエルフがどうなのか分からないわ。わたしにはコレが普通なのよ」
「そうなんですね」
「ユーミさん、田舎の割に言葉に訛ってないよな」
ジョーイがいらん事に気がつく。
「里では共通語は使ってなかったからね。言葉はたまに来る行商人から習ったのよ」
必殺、里のせい。
「なるほどな〜」
これ以上突っ込まれると面倒なので、話題を変える。
「聞きたかったんだけど、この国の通貨を教えてくれない?里では物々交換だったから、貨幣は無かったのよね」
「よし、あそこの木の所で休憩しがてら教えてやるよ」
ザックが示した、いい具合に日陰になっている大木の根本に腰掛ける。
「えっと…」ゴソゴソと懐をまさぐって、コインを出した。
「コレが一番下の半銅貨。子供の駄賃だな。1枚じゃ何も買えねえ。3枚くらいで干しプラム1つくらいかな」
半銅貨は10円くらいか。半月状だ。
「んで、コレが銅貨。半銅貨10枚と同じ。果実水1杯なら飲めるかな」
銅貨は100円だな。これは円形。
「次が、大銅貨。銅貨5枚と同じ。安い宿屋の昼飯なら食えるかも」
大銅貨は500円。銅貨より一回り大きい。
「ちょっと高価になってくるのが、これ、銀貨。安い宿ならコレ3枚くらいだな。大銅貨2枚と同じだ」
銀貨は1000円。大きさは大銅貨と銅貨の間くらい。
「次が大銀貨なんだけど、おい!誰か大銀貨もってねぇ?」
どうやら、ザックは大銀貨を持っていなかったようだ。
「はい、これ」
ジョーイが私に大銀貨を手渡す。
「それが大銀貨ね。銀貨5枚と同じ。飯も美味くてキチンとしてる宿ならそれくらいいるな」
大銀貨は5000円か。大銅貨と同じ大きさだけど、縁がギザギザしている。
わたしが大銀貨を返そうとすると、
「そのまま持ってて。入門料払う約束だし」
ジョーイがニッコリ笑って言った。
「ありがとう。助かるわ」
わたしは大銀貨を懐に仕舞うフリをして、空間収納に片付けた。
「で、コレが金貨。大銀貨2枚と同じ。貴族が行く食事処ならこれは必須」
金貨は1万円でいいかな。他の貨幣が丸かったのに対して、金貨は楕円をしている。
「大金貨もあるんだけど、今は持ってない。金貨10枚分。貴族が泊まる高級宿には必要だな。形は長四角で金貨より少し大きい」
へぇ。円形を捨てたのか。大金貨は10万円だな。
「俺ら庶民が拝めるのが、だいたいそこまで。金貨100枚と同じ白金貨とか、白金貨10枚分の水晶貨とかあるけど、それらは普通の生活では使えねぇ。貴族とか商売人が使う金だな」
「中々分かりやすかったわ。なんとなく理解出来たわ。ザックありがとう」
わたしが礼を言うと、ザックは少し照れながら頭を掻いた。
「俺達のが世話になったんだ。気にすんなよ。俺らのお礼が足りないくらいだ」
休憩も終わり、また歩き出した。
街まで後どんくらいだろう?こっそり確認しよ。探査!
目の前にマップが広がる。皆には見えていないようだ。このまま真っ直ぐ進むと…なんか赤いの見えるね。
「ザック。後少し行ったら右側のヤブにゴブリンが5匹いる」
わたしは敵を確かめて、ザックに言う。
「警告感謝する。ジョーイ!躱せるかどうか確認しててきてくれ」
「りょーかい!」
ジョーイはまるで猿の様に、ヒョイと木に上がり、ピョンピョンと木を伝って進んでいった。
「しかし、何の魔物が何匹居るかまで、わかるなんて、やっぱりユーミさんは凄いです!流石エルフです!」
リンは鼻息を荒くして興奮している。
「…街にエルフは珍しいの?」
「全くいない訳では無いですが、少ないです。大きな街に数人ってとこですかね」
「ドワーフはどうなの?」
「ドワーフは鉱山の街とか、武器屋、防具屋にはだいたい居るので珍しくないです。ドワーフはほぼ職人ですね。たまに冒険者も居るけれど」
「エルフは何が多いの?」
「私の知る限りでは、冒険者しかいないです」
「他にも珍しい人種は居るの?」
「そうですねぇ。獣人族、小人族、魚人族、魔人族ですかね」
「色々居るのね。差別とかは無いのかしら?」
「昔はあったみたいですし、今でもある国もあります。でも、大抵の国はそんなに目立った差別は無いです。人族が一番多いですが、他の人種の人達の方が秀でた能力がありますからね。寧ろ憧れです」
「魔人族も偏見は無いのかしら?」
「昔は魔人族と人族で戦争も有りましたが、今は魔人族の国とも国交があります。魔人族の人は奔放で好戦的ですが、皆良い人ばかりですよ。ガチで戦っても人族は負けますしね」
差別の少ない世界か。良かった。やっぱりそれがいいよね。
「安心したわ。エルフだからと後ろ指を指されるかと内心ビクビクしていたの」
「ユーミさんは美人だし、魔法も凄いし、絶対に直ぐ仲良くなれますよ!ねぇ?」
リンはマリアに同意を求めると、マリアも大きく頷いた。
「ユーミは里を出てこれからどうするの?冒険者になるなら歓迎するわよ」
マリアが尋ねる。
「そうねぇ。大変なのは嫌だから、冒険者はやらないかな。ポーションでも売ろうかと思ってるの」
「なら、商人ギルドに登録しないとだね」
「商人ギルド?」
「詳しくしは知らないけど、店を出すなら商人ギルドに登録しないといけないわ」
マリアは顎に手を当てて考えながら言った。
「でも、ポーションとか薬に珍しい素材が必要なら、冒険者ギルドにも登録したほうがいいかもね」
「あら、どうして?」
「危険な区域とか、ダンジョンには冒険者ギルドに登録してる人しか入れないのよ」
「そうなのね」
「街に行ったらギルドで色々聞いたらいいよ」
「そうね、そうするわ」
通貨をまとめます。
半銅貨…10円
銅貨…100円
大銅貨…500円
銀貨…1000円
大銀貨…5000円
金貨…1万円
大金貨…10万円
白金貨…100万円
水晶貨…1000万円
こんな感覚です。