夕日
「期末テスト赤点回避いえーい!」
「回避したぜー!じゃ、また明日ねー!」
「また明日!バイバーイ!」
電車の中で友人たちに別れを告げ、冷たい夜気を纏う無人駅に降り立った。
「うう、さぶっ。だんだん冷えてくるようになってきたな。明日からマフラー生活だわ」
私は肩を縮め、手をすり合わせて暖を取りながら、赤の光が溢れる改札へと足早に歩く。あそこまで行けば、少しは暖かいだろう。
近いのに遠い改札を、ゴールテープを切る勢いで駆け抜け、仁王立ちで暖かな落日に身を任せた。少しして、腕を翳して薄目を開けてみると、茜色の夕空が目に飛び込んできた。
「わぁ!めっちゃいい夕日だ!」
稲刈りが終わった田んぼの景色は、全てが赤く染まっていた。トンボが赤光の中を煌めきながら飛び、刷毛で掃いたような雲の端は黄金で彩られている。家々の影は長く伸びて、赤と黒のコントラストを作っていた。道端でピンクの小さなコスモスが揺れる。
黄金郷はここにあった。
これは写真を撮らねば。地面にすれすれのアングルでガラケーを構え、何枚か撮る。
「うん、これは写真コンテストで優勝だな」
満足して体を起こすと、風に乗って金木犀の甘い匂いと、生姜焼きの匂いが漂っていることに気付く。
「生姜焼きも捨てがたい……。いやいや、今日はカレー!母ちゃんのカツカレー!」
駐輪場から自転車を取り出し、勢いをつけてこぎだした。
☆
「ただいま〜」
「おかえり。テストの点数どうだった?」
「ふふん、世界史が一学期末よりも40点アップだよ」
「ええ!?凄いじゃない!」
「これで赤点回避!」
「待って、前回何点だったっけ?」
「9点。先生にまじで怒られた」
「……カツカレーは一枚ね」
「赤点回避したからニ枚」
「しょうがないなぁ」
「やったね」
【創作メモ】
本文執筆:作者
AI利用:無し
辞書利用:あり
今回の辞書ワードは「落日」「茜色」「金木犀」の三つ。




