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26 領地経営3

 浅井に対し、裏口から玄蕃が色々と手を回してこちらを向かせようとしたようだが、10月15日現在、状況が好転する気配は無い。

 ここは一旦、そっち方面はお休みにしよう。

 玄蕃には引き続きパイプ役として、裏工作は続けてもらうが、当面はさほど積極的に動かなくても良いと言った。

 それよりは、美濃などいつでも取れるんですよ、浅井・朝倉が連合してもこっちには勝てませんよ、と思わせるのも、一つの方策かも知れない。

 それよりこっちに来ませんか、美味しい物もいっぱいありますよ、と誘いを入れて、織田と組む方が魅力的だと思わせることができれば、開明的な思想の武将はなびいてくる可能性はある。

 それには、今の領地だけでも近代化を進める必要がある。

 1つ良いニュースとして、荒木又右衛門君がいつの間にかレベルアップしており、政治力が格段にアップしていたのだ。

 おかげで、城の第1次普請が間もなく終了しそうだという。

 このぶんだと11月になる前に引っ越しが完了できそうだ。

 人口もすぐに3000を超えてきそうな勢いなので、早めに水廻りの整備を開始しておかないと、後手後手に回ってしまう恐れがある。

 とは言え、用水の工事は道路などより、はるかに金と時間が掛かる。

 ここは、秀吉と小一郎セットで当たらせることにしよう。

 どのみち木曽川から水を引く以外無いので、当然流域の整備もある程度しなければならない。

 となれば、秀吉の治めている地域も無関係では無い。

 あっちは長良川が領地の真ん中を流れているので、こっちに手を貸す余裕は無いかも知れないが、長良川と木曽川に挟まれた地域の半分近くは秀吉の領地なので、こちらと共同事業という形であれば、協力してくれるだろう。

 墨俣城が有るのは長良川の向こう岸だが、農地の大半はこちら側なので、用水の整備という点では状況は同じなのだ。

 仮にこの水路が完成すれば、用水として利用できるだけで無く、途中から下水として萩原川(今の日光川)に放流することも考えられる。

 もちろん下流側の承諾が必要であろうが。

 この時代、木曽川の水は清浄ではあるが、それでもここは既に下流域と言って良いので、飲用には適さない。

 飲料水としては依然井戸に頼らざるを得ないだろう。

 将来的には上水施設などを作ることも考えられなくは無いが、今の段階では無理な話だ。

 用水整備はもちろん灌漑目的が主だが、それ以外にも生活用水としてのメリットも大きい。

 飲用には適さないと言ったが、そのままではという意味で、煮沸した後、簡易な濾過器で浄化すれば、十分飲むことも出来るので、余裕が出てきたら各家庭に設置しても良いだろう。

 そこまでは行かなくても、洗濯や洗い物などで、豊富に水があれば生活レベルは格段に向上するはずだ。

 住んで快適でなければ、人は居着いてはくれない。

 人が居着かなければコミュニティーも生まれないし、帰属意識も芽生えない。

 自分達の住み処と思えない場所を、命がけで守る人間はいない。

 最終的には俺のために働けって話なのだが、そのためにはこちらもサービスを提供しなくてはならない。

 で、用水奉行候補筆頭の小一郎君は何をやっているかといえば、田んぼの開拓である。

 それも、もうほとんど終わりそうなので、全員の仕事が一段落付いたら慰労会でもやるか。

 4日後には全員そろいそうなので、秀吉にも連絡しておこう。

 あと、川並衆の面々も呼んであげないとな。

 その間に出来ることといえば…せっかく戴いた刀の使い方を、柴田さんに手ほどきでもしてもらおうかな。


 俺には、およそ○○道と名の付く物には縁がない。

 まずもって先輩後輩などの厳格な上下関係がとにかく嫌いなのだ。

 更に何かを究めるということが苦手。

 パソコンはそれなりに詳しくはなったが、究めたという感覚はない。

 そもそも5年経ったら陳腐化しているような物を究めても意味ないしな。

 というわけで、これまで人の下について何かを教わったという経験があまりなかったのだが、柴田さんはそんなことも見抜いていたらしく、非常に丁寧に基礎から教えてくれた。

 今のところ刀は脇差ししか持っていないが、戦となればどのような武器でも使えるようにしておかねば、万一主武器が使えない状況になった時、対処できなくなる。

 正直、これまでは武器の優秀さで勝ってきたようなものである。

 この鉄扇も、何かの拍子に壊れることもあるかもしれない。

 広く浅く剣技を身につけるのも、意味が無い話ではない。

 まずは脇差しから使えるようにするのだが、そういうことであればきちんと教えてもらった方が良いかもしれない。

 ただ、柴田さんを師範にして道場で教わろうとすると、1ヶ月掛かりきりになってしまうので、とてもそんなことをしている余裕はない。

 掛かれ柴田じゃなくて掛かりきり柴田になってしまっては、笑い話にもならない。

 なんとかお手軽に技量アップ出来ないだろうか。

 ねえ、神様?


 ※やっぱりお金で解決になってしまいますが、兵法書が一番お手軽ですよ。

  読むだけで技量が10アップする物もありますから。


 そうかあ。

 やっぱりお高いんでしょうねぇ。


 ※ええ、金20000ぐらいしますけど。


 やっぱり〜。

 何処かのダンジョンとかに眠ってたりしないですかね?

 死んだ敵が持ってたりとか。

 クエストの報酬でもらえたりとか。


 ※それは別のゲームですねぇ。


 ですよねぇ。


 そんなことを考えていたところ、柴田さんが「お主にこれを貸して進ぜよう」と、一冊の本を渡してくれた。

 それには「訓閲集(きんえつしゅう)」と書いてあった。


 「これはな、小笠原家に代々伝わる兵法書でな、特別に写させてもらった非常に貴重な本であるから差し上げるわけにはいかぬが、読むだけでも為になるのでな」

 「おお!これはかたじけない!」


 俺もこんな時に侍言葉が出るようになったとは、随分毒されてきた証拠だな。

 そして、パラパラと本をめくると頭から身体から、熱くなった感じがして予想通り神様がお出ましになられた。


 ※兵法書「訓閲集」の効果により、レベルアップが可能になりました。


 えぇ〜っ!嘘!

 ついこの間、レベルアップしたばっかじゃん!。


 ※はい、兵法書「訓閲集」は、武経七書として知られる中国の兵法書を日本語に訳し、その後日本の実情に合わせてアレンジなどを加えた本ですので、非常に内容が濃いです。

  本来は120巻にも及ぶ巻物集なのですが、便宜上一冊の本のようにしてあります。


 はぁ。それって違反っぽくねぇ?

 ちなみに。おいくらまんえん?


 ※買う相手にもよりますが、だいたい金18000前後と思われます。

  因みにアイテムとしての効果は、無条件の即時レベルアップと政、知、武、統、技の能力値それぞれ+2という、強力な物です。


 いやぁ、えらいもんですなぁ。

 では早速、確認といきましょう。



○大谷(飛騨掾)吉子(女)

 年齢17

 織田家:武将

 所持金:5580

 総合レベル:16

 思想:革新

 宗教:なし

 名声:125(補正+10)

 使用武器:メイン・火炎鳳凰緋扇

      サブ・脇差

 領地:吉子村

 能力値:

  統率83(補正+5)、武力76、知略97、政治89

  体力82、腕力61(補正+10)、技量55(補正+10)、乗馬6、砲術1、走力8

 常駐スキル:鑑定、茶の湯

 製造スキル:調理

 戦場スキル:看破、非道


 そう、この本の凄いところは持っていると補正して+いくつでは無く、ガチで数字がアップしてしまうところだ。

 これはもう、全員に読ませるしかないだろう。


 ※残念ながらそれは出来ません。


 え?何で?

 もうこれでうちの武将達も軒並みレベルアップ出来ると思ったのに。


 ※ま、そうなってしまわないための措置です。

  借りて読む場合、その本の所有者との信頼関係が大事となります。

  少なくとも友好度80以上無いと、本の効果は期待できません。


 えぇ〜。

 ん?

 俺、柴田さんとそんなに親密だったっけか?

 ちょっと確認。


○友好度の高い人物

 木下秀吉 100

 木下小一郎 92

 小谷町子 87

 柴田勝家 85

 池田恒興 85

 荒木又右衛門 78

 伊勢新九郎 75

 生駒吉乃 70

 織田信長 70

 鉄吾郎(たたら場オヤジ) 66

 蜂須賀正勝 65

 中村錦之助 65

 伊知川海老蔵60

 木下寧 60

 大沢次郎左衛門 50

 坪内(玄蕃)定利 50

 弥四郎 50

 前野長康 45

 水野信元 40

 佐々成政 40

 丹羽長秀 40

 生駒家長 39

 佐久間信盛 34


 あれ!

 いつの間に、柴田さんこんな上に。

 て言うか、みなさん結構、軒並み友好度あがってるけど。


 ※恐らく天ぷらパーティーの影響かと。


 えぇ?

 まさかあれにそんな効果が有るとは。

 ほう、確かに大沢さんも50とかになってるね。


 ※柴田勝家は天ぷらを二度食べていますし、天ぷらのおかげで織田信長からの信頼を勝ち得ることが出来たのですから、感謝の気持ちも半分はあるのだと思いますよ。


 いやぁ、それでも一気に50も上がるかねぇ。

 他にも理由があるような気がするけど。


 ※そうですねぇ。

  私は分かっているんですが、大谷さんに教えて良いものか…。


 え?なにそれ。

 あ、まさか池田恒興みたいな理由なわけ?


 ※ちっ、以外に勘が良いですね。

  まあ、ちょっと違いますが似たような理由です。


 ふうむ、ちょっと違うねえ。

 っていうかさ、今「ちっ」って言ったよね。

 神様が「ちっ」って言うのは如何なもなのかなぁ。


 ※……柴田さんは恐らく娘のような感覚で接しているのではないでしょうかね。

  

 あ、流したね。

 まあ良いや。

 娘ねぇ。

 あれ、柴田さん、今いくつだっけ。


柴田勝家

 年齢41

 織田家:武将

 所持金:16560

 総合レベル:19

 思想:保守

 宗教:仏教

 名声:170

 使用武器:刀

 領地:なし

 能力値:

  統率88、武力92、知略69、政治67

  体力95、腕力88、技量80、乗馬10、砲術0、走力8

 常駐スキル:鑑定

 製造スキル:

 戦場スキル:看破、恫喝、瓶割り


 そうか、41か。

 まあ、娘がいてもおかしくはないね。

 あれ?

 何気にレベルアップしてない?


 ※はい、信長さんに天ぷらの報告に上がったとき、褒められてレベルが上がりました。

  また、大谷さんと様々な工作活動に同行していたためか、政治と知略と名声がアップしています。


 そうかぁ。

 これで、浅井との交渉にも一定の成果が有れば、信長さんの奉行とかにしてもらえるかもしれないな。


 ※どうでしょう。

  実戦での戦果がなければ難しいかもしれませんね。

  私からは何とも言えませんが。


 そうですよねぇ。

 分かりました、ありがとうございます。


 兵法書は一旦預かったが、翌日にはお返しした。

 柴田さんは「もう読んだのか?」と驚いていたが、俺が文面の一部を諳(そら)んじて見せたので「うむ嘘はついておらぬな。若い者は飲み込みも早いようじゃな」と、若干淋しげな顔をして、本を持って去っていった。

 なんでしょう、色々質問して欲しかったのかな?

 そういう子煩悩な感じの柴田さんは、イメージと違うよなぁ。


 さて、全員が揃うまではあと2〜3日掛かるようだし、ここは天ぷら専門店の準備でもしようか。

 だれを店主にするかだよね。

 調理スキルと経営手腕が問われるわけだが、うーん町子ちゃん以外考えられないんだが、彼女が抜けると城の方の経営がなぁ。

 まあ、小一郎に勘定奉行やらせるのが一番なんだろうけど、そうすると他の開発事業がなかなか進まなくなるしなぁ。

 金勘定に明るい人間が、もう一人欲しいところだな。

 試しに人材探索してみるか。

 まずは蜂須賀小六に、聞いてみたが錦之輔より使える男がいるとは思えないという。

 ダメ元で町子ちゃんにも天ぷら店の店主の話と、何処かに商売に明るいが、商売人じゃなくて武将になりたそうな奴はいないか聞いてみた。

 すると、意外にも今彼女が手伝いとして雇っている男がなかなか使えると言うではないか。

 更に、天ぷら店の店主については、願ってもないことで、是非やってみたいと喜んでいる。

 やっぱりお城に詰めてるよりは、毎日お客さん相手に商売する方が性に合っていると言うのだ。

 まあ、そうだよね。

 もともとただの町娘だったわけだし。

 いずれにしても、その男に会ってみないとな。


 名は千恵蔵というらしい。

 というわけで、早速人物鑑定。


○千恵蔵

 年齢:22歳

 無所属:下郎

 所持金: 250

 総合レベル:3

 思想:革新

 宗教:なし

 名声:2

 使用武器:鉄砲

 領地:なし

 能力値:

  統率33、武力51、知略62、政治78

  体力61、腕力38、技量42、乗馬0、砲術2、走力5

 常駐スキル:鑑定

 製造スキル:鍛治


 おおっ!

 なかなかのハイスペックですやん。

 しかも鍛治スキルが有るじゃないか。

 OK!

 即採用です。

 いちおう面接っぽいことをして、これまでの経歴などを聞いてみると、どうやら少し前まで、たたら場のオヤジの所で働いていたらしい。

 だが、例の不正たたら場のせいで商売が行き詰まり、千恵蔵は解雇されてしまったそうだ。

 ただ、たたら場のオヤジは申し訳なさそうにしていて、どうしても困ったら訪ねてこいと言ってくれたらしい。

 暫くプラプラしていたが、新しい領主が来たというので興味本位で雇われてみたら、なかなか面白そうなので本気でご厄介になろうかと思っていたところだったそうだ。

 まあ、さすがにいきなり勘定奉行は無理なので、最初は小一郎の下に付けるとしよう。

 一時的に小一郎に勘定奉行を任すとして、彼の代わりに錦之輔に色々と開発関係を進めてもらおう。

 小一郎には千恵蔵君をみっちりと鍛えてもらいたいね。

 ということで、早速天ぷら店建設の準備に掛かるとしよう。

 それまでに町子ちゃんには飲食店に慣れてもらうため、直営の船宿でパートとして雇ってもらい、客商売のノウハウを吸収してもらう。

 天ぷらの揚げ方については俺より上手いのだから申し分無しだろう。

 上手く軌道に乗りだせば、将来的には天ぷら店をチェーン展開しても面白いだろう。

 色々と夢が膨らみつつあるな。

 先が楽しみである。


ここまでお読みくださりありがとうございます。

ジワジワとブックマーク数も増えてきて、徐々に責任を感じつつある今日この頃です。

きちんと完結するまで書き上げようと思っていますので、お付き合いいただければ嬉しく思います。

引き続きよろしくお願いいたします。

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