07 領地経営
2話目です
今、我が屋敷は、毎日飲めや歌えやの大宴会状態である。
町子ちゃんの調理スキルのおかげで、ただの握り飯も極上の高級巻き寿司みたいに見えるらしく、作る端からあっと言う間に無くなってしまう。
こいつらこんなに食ってばっかりで実戦の時大丈夫なのかな。
俺も外見上は女の手前、手伝わない訳にもいかず、こいつらを抱え込んだおかげで余計な仕事が増える一方である。
つくづく兵を養うは大変って言うことだな。
兵たちを3日間ねぎらった後、俺は一人で清洲に向かった。
そこでお仕事を探しに来たのだが、なかなか簡単に済む仕事が無い。
できれば月を跨ぎたくないので、短期で片が着くやつが良いのだが、そう都合良く行かないようだ。
諦めかけて帰ろうとした時、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「吉子!何じゃこんな所で」
そう、いつも呼び捨てで呼んでくる木下秀吉君である。
こいつも仕事探しか?
「藤吉郎も仕事探しか?」
「そうなんじゃが、なかなか良い仕事が無いのう」
「そうね、短期で金にならないとね」
「まったくじゃ。して、吉子はどんな仕事が良いんじゃ?」
「本当はジックリ手に職を付けるような仕事が良いんだけど、そういうのは時間が掛かるので、短期だとやっぱり賊退治かな」
「そうか、ワシとは逆じゃの。ワシゃ手内職はもうええんじゃ。もっと武術を身につけたいんじゃ」
「武術?」
「そうじゃ、ワシの領地じゃ未だ山賊が闊歩しておってのぉ、そいつらの退治に手を焼いとるんじゃ」
「へぇ、こっちは商売の得意な家臣が少なくて、開発がなかなか進まないんだ」
「なんじゃ、じゃあ吉子がウチに来ればええんじゃないか?」
「ん?」
「そうじゃ、それがええ!」
「ワシが吉子の領地で開発を手伝っちゃるから、吉子はウチで山賊退治をやってくれんかのう」
「ふむ…」
「人が足らんのじゃったら、弟を貸してやっても良いぞ」
「弟?」
「ああ、小一郎と言うんじゃが、商売に関しちゃワシより達者じゃ」
小一郎とは後の豊臣秀長のことである。
それは助かるが、タダ働きは厳しいなぁ。
だが木下君は、もっと斜め上を狙っていたようだ。
「もちろん吉子に依頼料は払うし、山賊どもの持ち物は全部吉子の物じゃ。その代わり川並衆の棟梁を紹介してくれんかのう」
「はあ、お安い御用だけど、あれ?あの連中と知り合いじゃ無かったっけ?」
「先に吉子が話をしとったんで、遠慮したんじゃ。じゃが領地がすぐ隣になったんで挨拶しとかんといかんと思ってな」
「川並衆をどうするんだ?」
「できればわしのお抱え衆にしたいと思っちょる」
「へぇ、そいつはなかなか大変そうだな」
お抱え衆にするには、雇う側にそれなりの実力が無いと、なかなか難しいだろうな。
だが木下君は、そんなことは気にしてないようだ。
「川並衆の口利き役とかいう坪内玄蕃っちゅう奴とは知り合いなんじゃが、既に棟梁と懇意にしておる吉子の顔を立てて行った方が上手くいくじゃろ」
「なるほど、義理堅いな藤吉郎は」
「どうじゃ?この話」
「よし、乗った。山賊退治は任せろ」
「よっしゃ!それじゃさっそく墨俣に来てくれるか?」
「ああ、ここに居てもしょうがないからな」
と言うことで、利害の一致を見た俺と木下君は、連れだって墨俣の城に向かった。
墨俣に着くと、山賊たちの根城の大まかな場所を教えてもらったので、さっそく討伐に出かけることにした。
仕事の前に小一郎を紹介する、と言うので藤吉郎の屋敷で待っていると、彼を連れて木下君が戻ってきた。
小一郎はヒョロッとした色白の男で、秀吉にはあまり似ていない。
一見優男だが、眼の動きには抜け目が無い感じだった。
念のために秀吉君とその部下のスペックをチェック。
木下秀吉(男)
年齢25
織田家:武将
所持金:14805
総合レベル:12
思想:革新
宗教:なし
名声:78
使用武器:三節棒
領地:墨俣村
能力値:
統率84、武力67、知略92、政治91
体力88、腕力61、技量45、乗馬3、砲術2、走力11
常駐スキル:鑑定、山師
製造スキル:木工
戦場スキル:看破
木下小一郎(男)
年齢21
木下家:足軽頭
所持金:6420
総合レベル:9
思想:革新
宗教:なし
名声:35
使用武器:刀
領地:なし
能力値:
統率71、武力62、知略87、政治97
体力76、腕力56、技量35、乗馬1、砲術0、走力6
常駐スキル:目利き(鑑定の上位スキル)
製造スキル:土木、建築
戦場スキル:なし
秀吉のスペックのデタラメぶりは仕方ないとして小一郎君も、大変素晴らしい!
流石は後の大納言様である。
「して、ワシらはお主の領地で何を手伝ったら良いんじゃ?」
「えーと、主に街道整備なんだけど、住人の数をとにかく早く増やしたいので、それに繋がる開発だな」
「わかった、任しとけ!」
さらに、「自分の代わりに開発をしてくれる木下君ですよ。仲良くしてね」という内容の紹介状を書いて、町子ちゃんに見せるようにと秀吉に渡すと、「大船に乗ったつもりでいろよ」と言って、ピューッとウチの領地まですっ飛んでいった。
頼もしい限りである。
さて、こっちも仕事である。
山賊どものアジトをマップにマーキングすると、討伐に出発した。
山賊は墨俣よりだいぶ美濃に入った地域からやって来るらしく、以前信長さんと攻め込んだ十四条にほどちかい。
もしかして山賊って、元斎藤家の武将だったりとかじゃねぇだろうな。
むっちゃ強かったらどうしよう。
そうか、新九郎を連れて来れば良かったな。
そうだよ、藤吉郎だって一応武力67あるんだから、それが苦労する相手って事は結構強いんじゃないの?
しまったなぁ。
何とかなると良いなぁ。
マーキングした地点に近づき、アジトとされる方角を見渡すと少し小高いこんもりとした小山があった。
どうもあれっぽいのだが、木が生い茂っていて様子が良く分からない。
こういう時は双眼鏡とか欲しくなるねぇ。
あ、この水晶玉って使えるのかな?
あの時は緊急用に出してくれたっぽいけど、もし使えたらラッキーだな。
どうなんでしょう?チュートリアルさん!
※まあ、普通に使えますよ。
マップにマーキングした地点を、ストリートビューみたいにいろんな角度から見れます。
マジで?
それってかなりチートくさくない?
まあいいや、便利なものは使わしていただきましょう。
さて、そのアジトであるが、これがとんでもない代物であった。
普通に立派な砦なんですけど。
しかも櫓まで付いて、見張りもしっかり着いておりますねぇ。
ってダメじゃん。
普通に考えれば、砦なのだから俺一人で落とせるわけが無い。
ただ、こちらはどこでも火を起こせる技と、チートなアイテムと、情報量で有利な点がある。
これらを駆使すれば、何とかなるのでないか?
たとえば敵を1箇所に集中させて、まとめて焼き殺すとか、狭い通路で待ち構え、一人ずつ相手にするとか。
と言うことで、砦の構造を検証してみた結果、3箇所ある門のうち1つが狭い通路に直結しているので、待ち構えるならここである。
そのためには2つの門を、火災などを起こして通れなくする必要がある。
また、この通路にも2方向から入れるので、どちらかを塞ぐ必要がある。
まずは、燃えさしになるような小枝やら、藁束などを集め、すぐに消されないようにするため、油か、それに代わる燃焼材を探す。
今は6月なので、枯れ草とか枯れ枝が少ない。
だが、ひと冬越した松ぼっくりなどが多数見つかったことと、乾燥した動物の糞を結構な量集められたので、火さえ付ければ勢いよく燃焼させることはできそうだ。
さらに、付近の農家で古くなった筵を買い取って焚き付けにすることで、より火災を起こす確実性が高まった。
問題は、そんな火の付いた物を門のところに置いたりすれば、すぐ見つかると言うことだ。
火炎かまいたちで何とかなるかと思ったが、なかなか狙ったところに火の玉を飛ばすのが難しい。
なので、少し練習をして火の出し方を研究してみた。
扇を左右に振ると、火の玉が拡散して狙ったところに行かせるのは難しくなるので、クルクルと筒状に回転させてみたところ、これが大正解。
ガトリング砲のように、火の玉を一方向に連射できるようになった。
回転の半径をさらに小さくすることで、火の玉が収斂され、1本の炎の筋になる、火炎放射器みたいな効果も得られた。
これはかなりの大発見である。
戦闘の他にも色々と使い道がありそうだ。
と言うわけで、俺は夜になるのを待って行動を開始した。
夜陰に紛れて砦に近づき、見張りの目を盗んで門のところに、束にした筵を設置。
さらに、投擲用の松明を数本用意してスタンバイする。
見張りが目を逸らした瞬間に火炎かまいたちを発動、あっと言う間に2箇所の門から火の手が上がる。
砦の中は蜂の巣を突いたような騒ぎとなり、残った1つの門を開け、外の様子を見ようと現れた賊を「地裂火炎真空切り」で殲滅。
通路の一方に松明を放り込んで火災を起こし、通行不能にする。
こうして通路の角から現れる敵を次々と倒していくと、やがて敵が現れなくなった。
当然のことながら、敵もこちらを待ち構えているのだ。
ここで、マップ表示。
この先に櫓があって、そこに弓を構えた敵が待ち構えているようだ。
そこで、一旦門のところに戻り、盾になりそうな物を探す。
火を付けた通路の方に、実際に盾として使う物と思われる厚手の板を発見。
それを構えて通路の角を曲がると、やはり待ち構えていたように数十本の矢が一度に飛んできた。
だが、それら全てを盾で防ぎ、同時に「火炎かまいたち放射」を櫓に向かって放つ。
櫓はあっと言う間に延焼しはじめ、上にいた賊どもは堪らず飛び降りて、骨折などをして使い物にならなくなった。
どうやらこのアジト、構造は砦と同じようだが木材を燃えにくくする加工とかはしてなかったようで、面白いようにあちこちから火の手が上がりはじめた。
加えて「火炎かまいたち放射」の視覚的効果は凄まじく、通路の脇で弓を構えていた賊どもも、恐慌に陥ってただ逃げ惑うばかりとなった。
十数人を砦の通路の奥に追い詰め、「地裂火炎真空切り」で、まとめて殲滅できた。
砦の中央部にあった、賊の屋敷も「火炎ガトリング」で火災を起こし、中の賊達をいぶり出して各個撃破できた。
最後に出てきた賊の大将と思しき男が何か言ってきたが、無視して「火炎かまいたち放射」をお見舞いしたところ、泡を食ってまっすぐ後ろに飛び退いた。
バカだねぇ。
まっすぐ進む炎を避けるには、横に逃げないとな。
哀れ、賊の大将は火だるまになって死亡してしまった。
武力が85もあったので、まともにやり合っていたら勝てなかったかも知れない。
そのときチュートリアルさんが、何か言ってきた。
※悪逆非道な大谷さん、一度に2レベルアップおめでとうございます。
今回は大戦果だったので、各スペックが大幅にアップしております。
また、新たなスキルもゲットしましたので、合わせてご確認ください。
悪逆非道ってのは、ちょっと引っ掛かる言い方だが、正々堂々とした勝ち方で無かったのは確かだからな。
新たなスキルって、例の看破ってやつかな?
さっそく確認してみよう。
大谷吉子(女)
年齢16
織田家:武将
所持金:2015
総合レベル:13
思想:革新
宗教:なし
名声:92
使用武器:火炎鳳凰緋扇
領地:吉子村
能力値:
統率76、武力74、知略93、政治84
体力80、腕力60(補正+10)、技量51(補正+10)、乗馬5、砲術0、走力7
常駐スキル:鑑定
製造スキル:なし
戦場スキル:看破、非道
おぉ、名声がずいぶん上がったな。
例の看破ってスキルもあるが、この非道っていうのはどういうスキルだ?
字面的にあまり良い感じじゃ無いけど。
※戦場スキル:非道。
戦闘で一人で25人以上の敵を倒した時に、得られる経験値が倍になり、残酷な殺し方をしても名声が下がらない。
と言う効果です。
へぇ。
今後役に立つか微妙だが、まあいい。
レベルと名声が木下君より上になったのは大きいな。
フフフ藤吉郎め。
せいぜい悔しがるが良い。
※NPCにはレベルの概念は理解できませんので、ご注意ください。
あら残念。
ま、そりゃそうだわな。
一応焼け跡を調査し、金目の物など無いか確認した。
わずかな金と少数の装飾品の他に、馬上筒という銃身の短い鉄砲を発見した。
こいつはもしかしてなかなか良い物なのでは!?
ただ、使い方が分からないので、誰かに聞いてみよう。
こうして俺は、意気揚々と墨俣に帰ってきた。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
メッセージなど頂けたら、大変嬉しく思います。
ひきつづきよろしくお願いします。