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08 領地経営2

2021/07/13:誤字修正と、言い回しを変更しました。

 早朝に墨俣に帰った俺は、秀吉の妻という「寧(ねい)」に初めて会った。

 だが、初対面にも拘わらず、俺はいきなり寧々さまに怒られてしまった。


 「コラッ、あんた!女の子なのになんちゅう真っ黒けなかっこしてるの!」

 「あ?真っ黒?そうか気がつかなかった」

 「ほら!すぐに風呂入んなさい!」

 「あ、あぁすみません」


 強制的に入浴させられ、その上お仕着せの着物まで着せられた。

 恐らくは寧々さまの私物と思われるが、黄色い生地にピンクの花びら模様の入ったずいぶんと可愛らしい着物である。


 「あらぁ!似合うじゃないの!それ上げるから着て行きなさい」


 ※アイテム「寧々さまの着物」を、入手しました。

  効果:木下秀吉およびその家臣からの友好度+5


 アイテムなのか、これ。

 なんかRPGっぽいな。

 まあいい、とりあえずお礼言わないとな。


 「あ、ありがとうございます」

 「朝ご飯まだでしょ、食べて行きなよ」

 「あ、はい」


 もう、完全にペースを握られてしまった。

 この調子でやられては、天下の太閤殿下も頭が上がらないわけである。

 焼いた魚に白いごはんと、漬け物に味噌汁という、実に庶民的な朝食であるが、戦国時代ってこんな食事だったっけ?


 ※相変わらずツッコミが細かいですねぇ。

  稗(ひえ)とか粟(あわ)とか食べたいですか?

  玄米とか硬くて食べにくいでしょ?

  だったら文句言わない!


 俺、何も言って無いんだけどな。

 ちょっと疑問に思っただけなんだけど、なんか妙に意識してるんじゃない?

 史実と違うとか、実はかなり気にしてる?


 ※……。


 だんまりか。

 まあ良い。

 ここは神様に感謝しておくとしよう。

 そう言えば、こっちに来て初めて食べるまともな食事だな。

 食べて大丈夫なんだよね?


 ※大丈夫です。

  ただし、味覚などは大谷さんの生前の記憶が全てですので、悪しからず。


 あ〜、生前あまり旨いもん食ってなかったからな。

 ビックリするほど美味しい物は出てこないってことね。


 ※そうなりますね。


 残念だ。

 いろんな意味で。


 さて、おれは木下君達の様子も気になるので一旦領地に戻ると告げると、寧々さまから「お昼にみんなで食べなよ」と大量の握り飯を渡された。

 いつの間にこんなに作ったんだ?

 少なく見積もっても5合分くらいは有りそうである。


 ※アイテム「寧々さまの握り飯」を入手しました。

  効果:戦場での体力回復+15

     譲渡すると相手の友好度+5


 これもアイテムなんかい。

 他の握り飯より効果が高いのか?

 「愛」ですかね。

 いやぁ奥様というのは有り難いものだね。


 2時間ほどかけて領地に戻ってくると、今の時間で言う11時半頃に着いた。

 すると町子ちゃんが急に慌てだして、「お、お帰りなさい」と言うやいなや何やら屋敷の中を駆けずり回っている。

 どうやら俺の分の食事を準備して無かったというのだ。

 まあ、急に帰ってきたから準備なんかして無いだろうと思ってたし、そんなに慌てなくても良いと思うがな。

 安心させてやろうと思い、寧々さまから握り飯を頂いたからこれで良いだろと言うと、大粒の涙を流し「寧々さま感謝です!」と、握り飯に土下座をしていた。

 変わったことをするね君は。

 味噌汁を町子ちゃんと一緒に作っている時に、木下ブラザースが帰ってきた。


 「おう吉子!戻ったんか、賊の様子はどうじゃった?」

 「ああ、あの砦なら殲滅したぞ」

 「なにぃ!?」

 「あの程度1人で十分さ、ハッハッハ〜」

 「よく言うわ、ワシの調べじゃ奴ら30人は居たはずじゃろ」

 「これが戦利品だ」


 俺が馬上筒を渡すと、眼をひん剥いて眺めている。


 「ホントにやったんか…」

 「ああ、1人なんで少々苦労したがな」

 「いやいやいや、まさか全員、刀で討ち取った訳じゃ無いじゃろ?」

 「そうね、半分は焼死だな」

 「はぁ、火ぃ付けたんかぁ」

 「松ぼっくりとか藁とか集めてな」

 「いやぁ恐ろしい女じゃのぉ、敵でなくて良かったわ。のう、小一郎」

 「そうですね、背筋が寒くなります」


 いやいや、そんなに怯えなくても良いのに。

 まあ、でもこれ、冷静に考えたら大量殺人だもんな。

 怖がられて当然か。


 「わかった、すぐに戻って確かめる。報酬はその時でええか?」

 「それでかまわない」

 「すまんが、こっちはほとんど何もやっとらんのじゃ、小一郎を残しておくから、あと、好きに使ってくれ」

 まあ、それはそうだろう。

 領地の開発が1日2日で終わるはずが無い。

 「それは助かる」と礼を言いながら、コソッと領地の開発度合いをチェックする。

 あれ?街道整備がすごい進んでるぞ。

 あと、今月末完成予定の市場がもう完成してる。

 こいつら、やっぱり半端じゃねぇな。

 こっちこそ敵じゃなくて良かっただ。

 その時、秀吉が俺の着物に気づいた。


 「吉子、その着物…」

 「ああ、寧々さまから頂いた」

 「なんじゃ、寧々に会ったか」

 「握り飯をもらったから、みんなで食べよう」

 「おお!そいつはありがたい!」


 新九郎や下人の弥四郎なども集めて、全員で昼食となった。

 握り飯の効果か、なんとなく全員の親密度が上がったような気がする。

 それにしても、皆さん食べるの早すぎ。

 戦国時代だってのもあるだろうが、確実に身体に悪いだろうなこれは。

 こっちもだいたい食べ終わったところで、鉄砲について聞いてみよう。


 「それで藤吉郎、その鉄砲の使い方分かるか?」

 「お、おう、これか…」

 「小一郎、どうじゃ?」

 「ああ、壊れてますねこれ」


 ※戦利品の価値が確定しました。

  「壊れた馬上筒」を入手しました。


 ん?どゆこと?


 ※木下小一郎のスキル「目利き」によって、正しい価値が分からない品物の価値が確定されたので、そこではじめて「価値の決まった」品物を「入手」したことになります。

  それまでは、不確定な物品という扱いになります。

  家宝や武具などは目利きの鑑定を受けないと、正確な価値がわからないことがあります。


 えーと、つまり、ぶっちゃけるとどういうこと?


 ※……つまり、鑑定のスキルでは物の種類や使い道はすぐ分かりますが、真の価値までは分かりません。

  特に名品、逸品と呼ばれる物は、「目利き」にしか鑑定できません。

  なので、商売で儲けたければ頑張って鑑定眼を磨いてください。

  そのうちに目利きになれるかも知れませんよ。


 ほほう。

 その、目標値みたいなものは無いの?


 ※ありません。

  とにかく物の売り買いを多く繰り返し、利益をたくさん出し続けていく、とだけしか言えませんね。


 なんだ、現実と変わらんね。


 ※そうですね、頑張ってください。


 はーい。

 と、心の中で神様とやり取りしているうちに、小一郎君が鉄砲をこちらに返してきた。


 「修理すれば、使えると思いますし、中々の上物ですね」

 「そうか、清洲の武器屋で直せるかな」

 「あの店なら大丈夫でしょう」

 「そうか、ありがとう、頼りになるね小一郎は」

 「い、いえ…」


 あれ?

 何で顔赤くしてんの?

 さっきは背筋が寒くなります、とか言ってたのに。

 この服のせいかな?

 ダメだよ、君はいずれお藤さんという立派な嫁さんを貰うんだから。

 それに、俺は誰かの嫁になるのは無理だわ、やっぱり。

 男だしな。


 食事を済ませた俺たちは、まずは直接山賊のアジトへ向かうことにした。

 墨俣に寄っていると、時間が掛かるし、いちおう自分の領地の河川事情も把握しておかないとな。

 木曽川の橋を渡り、長良川の渡し船の港にやって来た。

 思っていたより立派な建物で、増水して長期間川が渡れなくなった時のために宿泊もできるようになっているのだ。

 食事や酒のサービスもしており、今で言うサービスエリアみたいな感じかもしれない。

 これと同じ建物が、対岸にもあるのだが、商業施設のほとんど無いこの地域の、中心的な役割になることは間違いないだろう。

 橋を架けちゃう前に、もう少し商売の幅を拡げても良いかもな。

 そんなことを考えながら渡し船に揺られ、対岸に着くとこっちの港では土産物なども売っていた。

 なかなか商魂たくましいな、と思っていると、これもやっぱり小一郎君のアイディアだという。

 さすが政治97だけのことあるね。

 もう、いっそ奉行任せちゃおうかな。

 川を渡って1時間ほどで、黒焦げになった山賊のアジトに着いた。

 そう言えば死体とか無くなっているのは仕様でしょうか?神様。


 ※いいえ、今朝、付近のお寺からお坊さんが来て全部片付けていきました。

  無縁仏として供養されるようです。


 あらま、そのへんは妙にリアルなのね。


 ※だって死んだ端から死体が消えていったら、首実検なんかできないでしょう。


 あぁ、そうですね。

 失礼しました。


 「わかった吉子!お主の言うことに間違いないようじゃ」

 「仕事は手早くキッチリとね」

 「よし、金5000でどうじゃ?」

 「えっ?5000もくれるの?」

 「そりゃそうじゃろ、ワシがこの砦落とすんなら100人は兵を連れてこにゃならん。それに比べりゃ金5000なんて安いもんじゃ」

 「なんだ、安いのか…」

 「あっ、しまっ…」

 「ハハハ、冗談だ。ありがとう!藤吉郎!5000で十分だ」

 「そ、そうか」

 「これだけあれば縄張りが引ける。城が建てられるぞぉ!」

 「いやいや、城建てるなら5000じゃ足らんじゃろ、最低でも1万はないと」

 「なぁに、まずは縄張りだけで良いのさ。今ある砦にちょっと手を入れれば何とか体裁は付く」

 「でも、吉子は城が欲しいんじゃろ?」

 「そりゃそうだが、まだ早い。それだけの力はまだ無い。もっと人がたくさん住んで、良い領主様だって思われるようになって、ようやく城だな」

 「そうか、吉子はこの世の中を、どうしたいと思うちょるんじゃ?」

 「そうだな、まずは戦の無い世界。そして開かれた公平な世の中かな」

 「ふうむ、戦を無くしたいのは同感じゃな。公平な世というのは良く分からんが、とにかくワシは、皆が笑って暮らせる世の中がええんじゃ」

 「そうか、そのためには、信長さんが早く天下統一できるよう頑張らないとな。これからもよろしく頼む」

 「お、おう!」


 ここで、忘れそうになってたが、こっちもお仕事をやり遂げなくてはならない。


 「で、川並衆の集落にはどうする?」

 「そうじゃな、今からじゃ夜になるし、明日出直すとしよう。今夜は泊まっていけ」

 「わかった。あ〜また寧々さまの世話になっちゃうな」

 「なんじゃ、嫌か?」

 「そうじゃ無いけど、あのお節介振りが何とも恥ずかしいというか、照れくさいというか…」

 「そこがええんじゃないか、まったくワシには勿体ない嫁じゃわ」

 「そうだな、勿体ない!」

 「おいおい、そこは違うと言わんかい!」

 「ハハハッ」

 「なんじゃろな、お主と話しとると女子(おなご)と居るという気がせんのぅ」

 「実はな、ここだけの話、俺は本当は男なんだ。訳あって女の格好になったが、これでも30過ぎのオッサンなんだぜ」

 「ハ〜ッハッハッハッ!まったく吉子はおもろいやっちゃのう!」


 ※木下秀吉の友好度が100になりました。

  義兄弟の契りを交わすことが可能となりました。


 おや?

 それは「三国時代」の話ではないの?


 ※戦国時代でもありますよ。

  義兄弟になると防衛戦に無償で参加してくれたり、資源を融通してくれたりするメリットがありますが、敵方陣営になった時には攻撃できないなどのデメリットもありますので、契りを交わす時は慎重に。


 そもそも男と女で義兄弟ってあり得るのか?


 ※あまり聞きませんねぇ。


 ちょっと!あんたがそれでどうするんだよ。

 要するに俺には関係無いコメントだったのね。


 ※関係無くはないですよ。

  自分に友好的な武将が、他に義兄弟の契りを交わしている武将が居る場合、その武将とも友好度が上がりますので。

  そういう人脈というものも考えて行動していただけたらと、思う次第です。


 なるほど。

 ちなみに、男同士で義兄弟っていうと、ああいう世界になっちゃうのかしら?

 その、薔薇的な。


 ※……まあ、そういうケースが、多く見受けられますね。


 やっぱり…。

 こういう場合は女でよかった思うべきだろうか。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

ご意見、ご感想、ご要望など、どしどしお寄せください。

参考になるご意見など賜われましたら、今後小説の中で採用させていただくこともあるかもしれません。

是非よろしくお願いします。


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