よくあることは何度もある。
鋭い眼光が目の前の一点を鋭く射抜く。
ここでもし、違うものだったら全く俺の未来が変わってしまう。ノッチの話だとティエルフールはどうやら東にあるらしい。だが方角なんて関係ない。ティエルフールに関わりそうな場所は徹底的に排除。
「ねぇ…早くしなさいよ。」
アニエスがあきれた様子で語りかけてくる。
「自由にさせてやれ。ユウは追い込まれると神経質になるんだ。まぁ…警戒しても変わらんけど。」
ノッチも後ろで何か言ってるが気にならない。選びに選び抜いた末、選択したのは『アキュリス初等学院教育代理。』
間違えてもティエルフールなんて単語もない。しかも仕事の内容も算術の補佐。
その依頼状を取り、今回の─もしかしたら何か細工をしたはずのメリルさんに持っていく。
「これに行ってくる。」
「はいはい。じゃあ早く行きましょ。」
アニエスはつまらない。と全身で表現しているがここで希望どうりになったらつまりすぎると思う。そのままギルドの扉を潜ろうとしたとき、
「あら?そんな軽装で行くのかしら?」
メリルさんから某ゲームの装備の確認みたいな台詞を言われた。
「だって、行き先─」
そしてゆっくりと向けられた紙は間違えなく、俺が選んだ『アキュリス初等学院教育代理』それが返され、現れた文字は、
─ティエルフール外交代理─
「「はぁあぁぁぁっぁああ??」」
アニエスは歓喜、俺は驚愕の叫びをあげながら二人でメリルさんから紙をひったくり、確認。間違いない。ティエルフールと書いてある。しかし腑に落ちない、たまたま俺が選んだ依頼状の裏にこれが……
直後、脳内に電流が走る。
依頼板に駆け寄りながら、まさかそんなことが。と思う。しかしあり得ることではあるんだ。まさかしないだろうと決めつけていただけで。
依頼板の貼ってある大小様々な依頼状を片っ端から確かめ、至った結論。
「やってくれましたね。」
ひきつった笑いと共にメリルさんを睨む。
何て事はない。
─全ての依頼状の裏に書かれたティエルフールの文字─
「そこまで俺を追い込みたいのかぁ!!」
依頼板が壊れないギリギリの力で殴る。
「ユウさん…そんな……酷い。私だってやりたくなかったんですよ?チョウガさんと相談して、チョウガさんに無理にこの仕事を持ってきてもらって、徹夜で全部に書きたくなんてなかったんですっ!」
「じゃあやるんじゃねぇよ!!」
「ユウ!ユウ!!」
怒りに任せ、女性といえど思いっきり殴ってやろうと思ったら、誰かに呼ばれる。振り向いた瞬間ヘッドロックを極められ、俺の首を左脇に抱えたまま
「行くわよ!いざ!!ティエルフール!」
サンライズバースでのドヤ顔を決めるアニエス嬢。ノッチは完全に諦めて拍手している。
…何事もなく終わりますように?
冗談だろ。死なずにすみますように。だ。




