第3話 無能魔王、初めての生活を始める
最初の家臣ミアを得たノア。
第3話は「食料確保・生活開始・新たな気配」です。
※今回は少し平和寄り…ですが油断はできません。
問題がある。
しかも、かなり現実的で、逃げようのない問題だ。
「……お腹すいた」
ミアが、その場にしゃがみ込んだ。
さっきから三回目だ。
いや、正確には四回目かもしれない。
「僕も」
正直に答える。
魔王でも腹は減る。
これはどうやら世界の共通ルールらしい。
荒野の風が吹く。
砂が舞い、視界が少しだけ霞む。
見渡す限り、岩と砂だけ。
さっきまでは「まあ何とかなるか」と思っていたけど、ここにきてようやく現実が見えてきた。
何ともならない。
食料がない。
水も、今のところはない。
「……ノア」
「なに?」
「これ、どうするの?」
ミアが真顔で聞いてくる。
いい質問だ。
非常に現実的で、非常に痛いところを突いている。
僕は少し考える。
戦うことはできる。
魔法も作れる。
敵を倒すこともできる。
でも。
「食べ物は作れないね」
「えぇ……」
ミアの顔が一気に崩れる。
「魔王ってもっと何でもできる存在じゃないの!?」
「それは過大評価だと思う」
「夢壊れたんだけど!?」
でも仕方ない。
魔法は万能ではない。
いや、やろうと思えばできる。
だが効率が悪い。
今はそんなことをしている余裕はない。
「じゃあどうするの!?」
「探す」
「シンプルすぎる!」
でも、それしかない。
僕は立ち上がる。
「行こう」
「どこに!?」
「生きてるものがいそうな方向」
ミアは周囲を見渡す。
荒野。
岩。
砂。
以上。
「どこにもなさそうなんだけど」
「だから探すんだよ」
歩き出す。
ミアも、しぶしぶついてくる。
しばらく無言で進む。
風の音だけが続く。
……数分後。
「ねえ」
「なに?」
「方向合ってる?」
「分からない」
「分からないの!?」
予想通りの反応。
でも、適当ではない。
「風の匂いが変わってる」
「え?」
ミアが鼻をひくつかせる。
「……ほんとだ」
少しだけ湿った空気。
さっきまでの乾いた風とは違う。
「水があるかも」
「それ早く言って!」
ミアが急に元気になる。
分かりやすい。
そのまま進む。
地面の色が少しずつ変わる。
砂だけだった地面に、わずかに色が混じる。
そして。
「……あった」
小さな水場。
岩の隙間に溜まった水。
透明で、濁りは少ない。
「やったぁぁ!!」
ミアが走る。
そしてそのまま――
「うわっ!?」
盛大に転んだ。
「何してるの」
「滑ったの!」
水場の周囲は泥だ。
当然といえば当然。
ミアは泥だらけになりながら立ち上がる。
でもそのまま水をすくって飲んだ。
「冷たい……」
何度も飲む。
顔を上げる。
「……生き返った」
「大げさだね」
「大げさじゃない!」
僕も水を飲む。
確かに冷たい。
悪くない。
生きていくには十分だ。
「……で」
ミアがこちらを見る。
「食べ物は?」
「それはまだ」
「まだなの!?」
その時。
草むらが揺れた。
小さな音。
何かいる。
僕は視線を向ける。
「いた」
小さな獣。
ウサギに似ているが、角が生えている。
「食べられる?」
「たぶん」
ミアの目が輝く。
「任せて!」
そう言って一歩踏み出した瞬間。
バキッ。
枝を踏んだ。
「……あ」
獣がこちらを見る。
一瞬の沈黙。
そして――逃げた。
「待ってぇぇ!!」
ミアが追いかける。
当然、追いつかない。
すぐに見えなくなる。
数秒後、戻ってくる。
肩を落として。
「……逃げられた」
「知ってた」
「なんで止めてくれなかったの!?」
「経験になるかなって」
「ならないよ!?」
まあ、やり方はある。
「次は僕がやる」
「期待していい?」
「普通くらいには」
僕は手を上げる。
空間に文字が走る。
「捕縛」
少し離れた場所にいた別の獣が、見えない力に縛られる。
暴れる。
でも逃げられない。
「すごい……」
「これが普通」
「普通じゃないよ!?」
僕は獣を持ち上げる。
「さて」
ミアが少しだけ表情を曇らせる。
「……ちょっとかわいそう」
「じゃあ食べない?」
「それは困る」
即答。
やっぱりそうなる。
僕は頷く。
「ありがたくいただこう」
火を起こす。
小さく、制御して。
焼く。
シンプルに。
「料理できるんだ……」
「焼いてるだけだよ」
「それでもすごい」
匂いが広がる。
香ばしい。
ミアのお腹が鳴る。
かなり大きく。
「……はい」
肉を渡す。
ミアは受け取る。
少しだけ迷ってから、食べる。
「……おいしい」
その顔は、さっきよりずっと良かった。
僕も食べる。
悪くない。
むしろ、この環境なら十分だ。
「……なんかさ」
ミアがぽつりと言う。
「ほんとに始まった感じする」
「何が?」
「国」
僕は少し考える。
何もない場所。
でも。
水がある。
食べ物がある。
そして――
「仲間がいる」
それでいい。
その時だった。
遠くに、煙が見えた。
細い煙。
明らかに自然じゃない。
「……人、いる」
ミアが言う。
声が少し震えている。
期待と不安。
両方ある。
僕は煙を見る。
「行こう」
「うん」
二人で歩き出す。
少しずつ近づく。
そして――
違和感。
匂い。
血の匂い。
焼けた匂い。
「……ノア」
「うん」
「これ、普通じゃない」
煙の元が見えた。
小さな村。
いや――
燃えている。
建物が崩れている。
人影が倒れている。
そして。
中央に立つ影。
巨大な鎧。
赤い光。
「……またか」
処刑兵。
しかも、さっきより大きい。
強い。
ミアが震える。
「どうする……?」
僕は少しだけ息を吐く。
「決まってる」
歩き出す。
「助ける」
「え」
「人材が増えるかもしれないし」
「そこ!?」
でも、それだけじゃない。
僕はもう決めている。
国を作ると。
なら。
守るべきものも、増やす。
「行くよ」
黒い炎が、静かに灯る。
戦いが始まる。
(続く)
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第3話でついに
・水確保
・食料確保
・生活スタート
まで来ました。
そしてラスト――村襲撃イベント突入。
次回は
・対“強化版処刑兵”戦闘
・村人との関係
・一気に“国づくり”が加速
します。
※次回ガッツリ戦闘回
次回、無能魔王、初めて“守るために戦う”。
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