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浩章の誕生日 2 ショートストーリー

浩章の誕生日は四人で高原にあるアウトレットに行く事にした。

有崎が浩章の欲しい物をプレゼントしたいと言ったのがきっかけ

だ。いつもの様に高志が運転をし目的地まで騒ぎながら走る。

浩章は篤の隣に座っているからか心は落ち着かない。

数日前の”俺と付き合ってみる?”の言葉が思い出される。

あの後、色々と考え篤の横に立つ事に違和感は無かった。

篤を見るとそんな事は無かった事の様に普通に接して来る。

からかわれたか?と思うが帰り際の頭の上から聞こえた声の

トーンはいつになく真面目だった。

「はあ~…」

思わずため息をつく浩章に篤は”大丈夫?”と聞いてくる。

原因は貴方ですがね…言ってやりたかったが言葉を飲んだ。

途中休憩を取り篤がコーヒーを奢ってくれた。

「はい、浩章君」

「え?ひ…ろあ…」

驚いた顔をして篤を見ると

「弟君じゃあ、もう失礼だろ」

篤は微笑んでコーヒーを差し出す。浩章は受け取りながら

「あ…ありがとう」

そう言うのが精一杯だった。多分顔は赤くなっていただろう。

「これからはそう呼ぶから慣れてくれよ」

篤は浩章の耳元にそっと囁くように言葉を繋ぐ。

そんな様子を見て見ぬふりをしていた高志だが背を向け密かに

微笑んでいた。

「と、冬真~向こうに何が有るか見に行こうよ」

浩章は慌てて有崎の手を引いて歩き出した。有崎も楽しそうに

歩いて行った。

「篤はこんなにも積極的な奴なんだな」

高志はにこやかに篤を見ている。

「あれ?俺はお前にも積極的にアピールしてたけど!だが俺の

 意図を汲んでくれない奴が居たな」

にたりと意地の悪い笑いを浮かべる篤に対して高志はバツの悪い

顔をする。篤は有崎を見てしみじみと言う。

「だから…有君は凄いと思うよ…この堅物を変えて物にして

 しまったんだからな…」

「ああ、俺は冬真に救って貰ったな…」

「あ~!そんな幸せ全開の顔をするな~!なんかイラつく!」

イラつき地団駄を踏んでいる篤を見て高志は声を上げて笑った。


「かなり混んでるな…」

アウトレットの駐車場は混んでいて列になって中々入れない。

「三人は降りて先に買い物を始めてくれ。時間が勿体ない」

高志は車を停めたら合流すると言う。

「俺も残るよ」

有崎は高志の顔を見てにこやかに言う。

「そうか、じゃあ浩章君先に行こう」

「う、うん…」

呼び名に慣れなくていちいち照れてしまう。自分も残ろうか

と思ったがふたりの邪魔はしたく無いと思い先に行く事に承諾

した。

「さて、どこから見るかな~、しかし広いな」

広大な敷地に無数の店が通路沿いに並んでいる。カジュアル、

フォーマル、ブランド、スポーツ、小物何でも揃っている。

「うわ~、人も多い…迷いそう…」

浩章の特技は”迷子”。ちょっと不安になってしまった。高志なら

迷子になるからと手を繋いでくれる。

「はい、手!」

「え?」

篤は浩章の前に手を出して微笑む。

「浩章君を迷子にしたら高志に後で何されるか分からない

 からね~」

浩章は戸惑い中々手を出せずにいたが篤は浩章の手を掴み

”行こう”と歩き出す。

何件か店に入り商品を眺めたりと楽しんでいたがある店の前で

浩章の足がとまった。その店はロカビリー系の物が置いてあり

革のベルトや渋いバッグなどもあるが奥に目を引く趣味の良い

Gジャンが飾られていた。

「おっ!あのGジャンいいね~」

篤んも目にも留まったらしい。店に入り早速お目当てのGジャンを

手に取る。

「おおお!ビンテージ物じゃないか!」

篤も気に入ったようだった。

「カッコイイよね~篤さんもこういうの好きなの?」

浩章が嬉しそうに手に取る。

「うん、好きだよ!着てみな」

篤は浩章にGジャンを着せて”後ろも見せて!”とくるっと

回らせる。篤は頷きながら言葉にした。

「ピッタリだな、似合ってる」

「本当!…うわ~…流石ビンテージ物…お高いですわね…」

何故、そこでマダ~ム口調になるのか分からなかったが篤が

値札を見て“こんなもんだろう”と言う。

”そう?”と言いながら浩章が脱ぐと篤がGジャンを奪い

「プレゼントするよ!」

そう言って会計に向かってしまった。

「え、ちょっと…高すぎるよ…」

”気にするな”と言い会計を済ませる。そしてまた手が繋がれる。

”なんだろう”篤と一緒にいて違和感が無い。楽しい。まるで

高志と一緒に居る様な安心感…なんか不思議…

篤は”これいいな、これ似合うよ”と言いプレゼントが増えていく。

「篤さん!もういいって…貰いすぎ!」

「そうか?ここは色々と有って楽しいな~」

「そういえば、兄貴達遅くない?…まだ停められないのかな?」

あれから2時間は過ぎている。実は高志達も浩章達の後をそっと

付いて行きながら買い物をしていた。

「篤、甘やかしてるな~俺以上だな」

「…高志さん…同じだと思うよ…」

有崎の手には高志から買って貰った袋が幾つもぶら下がっていた。

「そろそろ合流するか」

高志はふたりに声を掛け四人揃ったが浩章と有崎はお互い持って

いる袋の数を見て苦笑いをしていた。

その後浩章は高志と有崎からも沢山のプレゼントを貰い嬉しい

様な困った様な複雑な気持ちになった。今日買った物の山を見て

有崎と浩章は誕生日にアウトレットは止めようと思うのであった。


今夜の宿はアウトレットの近くにあるコテージで、この時期は混んでて

無理かと思ったがキャンセルがあり泊まる事が出来たのだ。

ベッドが二つ置いてある部屋が二部屋ありその内の一部屋が広く

四人で食事が出来るテーブルが置いてある。部屋からは

ウッドデッキに出られる様になっており外でくつろぐ事も出来そうだ。

食事は自分で用意するタイプで有崎は色々と用意をして来ていた。

早速調理に取り掛かる。高志が手伝っていると浩章が有崎に

話しがあるから交代!と言われ高志は追い出されてしまった。

「ヒロ、どうしたの?」

浩章がいつもの様に元気よく絡んでくるものだと思っていた

有崎は中々話し出さない浩章に聞いた。

「冬真は兄貴に告られた時は嬉しかったよな…」

有崎は具材を切っていた手を止め浩章を見た。

「うん、凄く嬉しかったよ」

「だよな……」

考え込んでいる浩章に”ああ、なるほどね”と思い

「もしかして告白されたの?」

「…うん、そうなだ…でも自分の気持ちが分からなくて…

 嬉しい気持は有るけど…自分が分からなくて…」

今日の篤を見てなんとなく分かってしまった。

「…篤さん?」

有崎から篤の名前が出たとたんに顔が火照るのがわかった。

「ヒロ分かりやすい」

有崎はくすくすと笑う。

「笑うなよ~これでも真剣なんだから~」

「ごめんごめん、ヒロ…好きって感情は考える物じゃないよ

 感じるものだよ。素直に篤さんをどう思うの?」

「…好きの方だと…思う…今日も楽しかったし…」

浩章に人参の皮むきをお願いしていたが今は実をむいている。

「でもヒロは何か気になる事が有るのかな?」

「冬真!凄い!エスパーか?」

有崎は浩章の言葉に脱力してしまった。

ーーヒロ、君を見ていれば誰でも分かる事だよーー

言いたかったが拗ねそうで止めておいた。

「エスパーじゃないけどね、素直に篤さんに言ってみたら?

 篤さんならちゃんと考えて答えてくれると思うよ」

「…うん…」

その後は滞りなく料理は出来上がり昼間に買ったケーキに

ロウソクを立て誕生祝いが始まる。ちなみに浩章のむいた

人参はマリネとなり美味しくいただいた。

美味しい料理に舌鼓を打ちお酒も入り皆気持ちが良くなった。

「高志さん、外が気持ち良さそうだから散歩がてら飲み物買いに

 行かない?」

有崎は高志と片付けながら言う。

「いいよ。行くか」

「うん、ヒロちょっと出掛けて来るね」

ふたりはコテージを出る。有崎はとてもご機嫌だ。

「冬真?何か良い事でもあったか?」

有崎は高志と向かい合い微笑む。

「ヒロと篤さん、上手くいくといいね!」

高志も微笑み

「知っていたのか…」

「今日のふたりを見れば分かるでしょ」

”そうだな”と言いふたりは手を繋ぎ歩幅を合わせて歩く。

コテージでは浩章と篤がふたりでゆっくりと酒を口にしていた。

「どうした?疲れた?」

浩章はグラスを口にしながら篤をちらちらと見ていた。

「疲れてはいないけど…」

「ん?」

「あの…あのね、篤さんがこの間言ってくれた事なんだけど…」

篤は”うん”と言ってぎこちなく笑いながら浩章を見ている。

「俺ね、篤さんの事好きなんだと思う…でも…多分…無理…」

「…理由を聞いても良い?」

篤は焦る気持に蓋して優しくて問う。

「今日、凄く楽しかった…まるで…兄貴と…一緒にいるみたいで

 安心できて…でも…俺…篤さんを兄貴の代わりで見てる…

 兄貴を重ねてる…そう思ったら自分が嫌な奴で許せなくて…」

浩章の顔はとても苦しそうに歪んでいる。

「浩章…俺は…」

「篤さん…優しくて…笑顔が…兄貴と重なるんだ…篤さんだ!

 って思ってるのに…それが辛くて…どんどん心が汚くなる…」

浩章の目から涙が落ちる。篤はっそっと親指で拭ってやった。

篤を見つめる浩章に優しく微笑む。

「高志の代わりなんて俺にとっては褒め言葉だ。高志を超える

 事は出来なくても対等に思ってもらえればそれでいい」

「篤さん…」

「俺もお前も一番は高志なんだ…今でもな。それを否定する事は

 無いと思う。だけど、俺はお前を高志の代わりには見ていない。

 ふたりの為に頑張り悩む高野浩章という人間を好きになった。

 だから…お前の悩む時も苦しい時も一緒に居たて守りたいんだ」

篤はそっと浩章を胸に抱え込んだ。

篤の胸に頭を埋めると高志とは違う安心感に包まれた。

「高志の代わりでもいい…俺と付き合ってくれる?」

「俺、わがままだし甘えるよ…それでもいいの?」

「でも、優しくて思いやりが有って心は強くて寂しがり屋…

 そんな浩章がいいんだ」

浩章は篤の腕をほどき顔を見ると優しい微笑みが目に飛び込こむ。

「褒めすぎ…し、仕方ないな~付き合ってあげるよ」

「ありがとう。大切にするよ…ねえ、浩章…」

「なに?」

「キスしていい?」

「え!ま…待って…まだ早いって…心の準備が!」

篤は浩章の顎をクイっと持ち上げ軽いキスをする。

「!!!!篤さん!!」

「ごちそう様!」

真っ赤な顔の浩章と満面の笑みの篤。この微笑みは

幸せの時間の始まりとなった。


「上手くいったみたいだね」

「そうだな…」

ウッドデッキの外からそっと見守っていたふたりは微笑む。

「お兄さん!ヒロを取られて寂しい?」

「寂しいか…なんか複雑だな。嬉しいような…やはり少し寂しい

 かな」

「俺が慰めてあげるよ」

有崎は高志をぎゅっと抱きしめよしよしと頭を撫でる。

「それだけ?」

高志の要求に有崎は微笑み唇を寄せる。

月の灯りが美しい夜に寂しさを忘れさせる優しいキスが高志に

降り注いだ。


END


君の瞳に映る笑顔 浩章の誕生日ご覧いただきありがとうございます。

本作で辛い想いをした浩章です。心が休まると良いですね。

今回もページを開いて頂きありがとうございました。

皆様にも素敵な笑顔が届きますよう願っています。

                     あらかると

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