第20話 王都
「皆さん!見えてきましてよ!あれが王都ですわ!」
「「おぉー……!」」
遠目にだが遂に見えてきた王都をファトルメイトから少しだけ遅れて丘の上に登り、その姿形を見た二人は疲れた様子ながらも遂にと言った声を上げる。
何故二人がそんな大冒険をやり遂げたような様相なのか、それは……
「遂に……遂に着いた……!」
「まさかあんな事でたった数日で済むの道のりがこんなに長くなるなんて……で、でも目的地が見えたんだし、流石にこれでもう……」
本来なら道なりに行くだけで数日もあれば着くはずの王都にファトルメイトが「ちょっと」はぐれただけで辿り着くのに1ヶ月後もの時間がかかったからだ。
「それでは皆さん!王都への最後のひと踏ん張り、行きますわよ!」
「「そっちじゃないっ!」」
ガシッと王都から90度別方向へ行こうとしたファトルメイトの肩を二人は掴み、これ以上は嫌だと言うようにそう声を少し荒らげて止めるのだった。
「とはいえ、やっと着いたと思ったら今度はまさかこんな行列に並ばさせられるとは」
「仕方ありませんわ。怪しい者を入れる訳にも行きませんし、王都在住証明書が無くては並ぶしかありませんもの」
「こう、冒険者のランクで入都審査早くなったり飛ばせたりしないの?」
「しませんね。強いて言うならファーステッドが依頼で呼ばれた際のみでしょうか?少なくとも私達にはお行儀良く待つしかありませんことよ」
「次、検問室へ」
「っと私達の番ですわね。さっ、皆さん行きましてよ」
「「はーい」」
帯剣した上に鎧を装備した検問官に連れられ、検問室へと入った3人は最初にそれぞれ名乗り、幾つかの質問に答えていく。
しかし質問に答えていく内になんだか検問室周りが騒がしくなっていき─────
「えーでは最後に王都にどれくらい滞在予定かを─────」
バンッ!
「ファトルメイト!」
「ノーちゃん!」
「分かった!」
「へ?父様?!」
「「父様?」」
突然勢いよくドアを開けて入ってきた立派なお髭を蓄えた強面の紳士に対し、とっさに臨戦態勢を取った二人は、ファトルメイトの言葉を聞いて間抜けな声を上げるのだった。
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「うちの娘がたいっへんご迷惑をおかけしました!この御恩はきちんと、後日改めて返させていただきますので!」
「え、えと、そのーあのー……お顔をお上げくださいファトルちゃんのー……お父さん?」
ガタガタと揺れる馬車の中、突然の展開に頭が追いつかないものの、なんとかノートゥーンは相手が公爵である事を思い出し、失礼の無いようにそう答える。
「幾ら馬車の中で他に人目がないとはいえ貴方は公爵、そんな方が簡単に頭を下げないでください」
「普段ならばそうでしょう。しかし、貴女方は私の愛する娘の命を救ってくれました。命よりも大事な物を守ってくれた恩人に頭を下げない理由がありましょうか」
あの後、どうやらやはり探し人としてファトルメイトは捜索以来が出されてたようで、ファトルメイトが検問室へ来た事は直ぐに伝わってたようだ。
そしてノートゥーンとルシィーナがすぐさま臨戦態勢を取った事で、二人をファトルメイトが守っていた事が分かったのかこうして屋敷に招待される事になったのだった。
「それでファトルメイト、二人にはどのような礼が相応しいかな?」
「えと、あのお礼は─────」
「はい。お二人は竜について調べたいらしく、特殊資料室の使用許可をお二人に出して欲しいのです。それと王都一の宿を滞在中この方々に」
(くぅ!ファトルちゃんに聞くことで遠慮させずにこっちの要求を聞き出してくるか!この人やるなぁ!)
(シィー、交渉で負けたのは悔しいだろうけど、僕達の目的だからね?自ら目的達成の難易度上げないで?)
「所で御二方、御二方はどこの大陸からいらしたのですかな?」
「カルラドアコアの極北から来ました」
「極北の……おぉ!あの極北の村ですか!どうりで、お姉さんの方は体格がいいと思ったわけだ」
「あはははは……」
「ねぇ、一つ聞きたいんだけど」
「なんですかな妹さん」
「極北の村って有名なの?」
極北の村に公爵が反応したのを見た今まで興味なさげに外を見ていたノートゥーンは、いきなりながらもそう前々から気になっていた事を公爵にたずねる。
「前から会う人がよく極北出身なんだって驚いてるんだけど、そんな驚く事なの?」
「ちょっ、ノーちゃん。後で教えてあげるから─────」
「構いませんよ。ノートゥーンさん、極北の村というのはですね、我々から見るととても厳しい環境の中にある冒険の最前線、つまり物語に出てくる伝説の様なものなんです」
「なるほどぉ……つまり僕達はお話の中の存在みたいな感じなのか」
「はい。それに、極北の村は人口も少なく外に出てる人はほとんど居ません。なのでお目にかかれるのは本当に驚く事なんです。かのエルフと同じかそれ以上に」
「エルフですか。森の賢者とも呼ばれるガラァドメアナのどこかにに住むと言われてる方々ですよね」
「ガラァドメアナへはちょうど私が治める港街から船が出てましてね、もしガラァドメアナに行く様でしたら我々の元を訪ねてください。最上級の船をご用意させて頂きます」
「はい。ガラァドメアナに行く際は声をかけさせていただきますね」
まだ硬さは残るものの、しばらくの間そんな会話をしたりファトルメイトがここ数週間の話をしたお陰で少しだけ雰囲気が解れて来た所でふと景色が明るいものへと変わる。
「っとそろそろですね。ここがこの王都で二番目に高い街、王城のある丘のお膝元たる貴族街です」
「「おぉー!」」
「すごい、城壁まで見える」
「ね!はぁー……まるでお話の街みたいだ」
夕日に赤く染る眼下に広がる白亜の街を眺め、声を上げる二人を公爵達は微笑ましげに眺めるのであった。




