第12話 武器
「つ、疲れた……」
「シィー、お疲れ」
「ハッハッハッ!どうです?初めて意識して魔力を使った感覚は」
「ノーちゃんの危ない行動でハラハラドキドキした後みたいな心の疲れがありますぅー……」
「ちょっ?!シィーそれってどういう事さ!」
「まぁまぁ落ち着いて。でも土と水、それに風の三属性への親和性が深いとは。流石は極北の民ですね」
「あはは、それ程でもー……」
へなへなと机にもたれるルシィーナは、不用意な発言で不機嫌になったノートゥーンの頭を撫でながらマシュウへとそう適当な返事を返す。
あの後、魔術師として力を振るうと決めたルシィーナは杖を作るに辺り自身の親和性を知る必要があるとの事で、マシュウの指導の元様々な魔法を使った。
その結果、大元と呼ばれる火、水、土、雷、風の五つの内ルシィーナは三つに親和性が深い事が分かったのだ。
ちなみに親和性の高さは殆どの場合その人が生まれ育った場所の影響を強く受けるらしい。
「複数に親和性があるのは様々な組み合わせが出来て悪い事ではありませんが、どうしても特化に比べると器用貧乏になりがちです。きちんと勉強していきましょう」
「はいー……」
「さて、それでは親和性も分かったことですし……親方、後はお願いしても?」
「やっとか、ったく恩人とはいえ魔術師はやっぱり話が長いから困ったもんだな!ガハハ!んじゃお嬢さんら、武器のお話と行こうじゃないか」
豪快に笑いながらドサッと二人の前の椅子に座ったこの工房の親方の厳ついドワーフは、そう言ってニヤリと笑うと様々な素材を机に広げる。
「んじゃ恩人二人と違って武具に関しては初心者の二人には、先ず武器の製法についてから話すとしよう」
「「製法?」」
「あぁ、製法だ。とはいえ鋳造やら鍛造とか言ったことじゃない、もっと根本的な素材の話だ。二人は武器の素材って分かるか?」
「えっと……普通のなら鉄とか銅とか?」
「そうだ、高い物になればオリハルコンやらミスリルやらが出てくるが基本的には金物……金属を元に作られてるが、もう1つよく武器に使われる素材がある」
「それは……?」
「魔物の素材だ」
「魔物の……」
「そうだ、だがこの2つの素材には大きな違いがある。金属は安定した性能と手入れのしやすさがあるが、魔物素材を使った武器は魔の力を強く引き出し殺傷力を増す」
「なるほど……」
そう説明をしながら親方は机の上に広げた生物由来と思われる素材と、金属の素材を分けていく。
「つまり武器はどんな攻撃方法を主にするかでメインに使う素材が変わるという訳だ」
「という事は私は魔術を主に使う事になるから、魔物の素材で杖を作った方がいいって事なるんですかね?」
「まぁそういう事だ。だがオリハルコンみたいな魔力伝導が高い鉱石もあるから、一概に魔物素材一択とは言えないがな。と、言う訳でこれが用意できる素材のリストだ」
一通り説明し終えたとばかりに親方はそう言って机の上に羊皮紙を広げる。そしてそこには様々な素材とその説明が簡単に記してあった。
「アルミ、ニッケル、クロム、ダマスカス……鉱石だけでもいっぱいあるねぇ……」
「スライムを素材に混ぜ込む事で靱性を増し、武器に自己修復性を付与することの出来る物がスライムマテリアル……スライムってそんなに凄いのか」
「他にもクソかてぇけどクソ軽い木の鉄の樹鉄とかほぼ出回らない幻に近い魔力伝導が凄まじく靱性も硬度もバカ高い魔剛鋼、死ぬ程硬いアダマンタイトなんてのもあるぞ」
「「おぉー!」」
瞳をキラキラさせながら親方の説明を受けた二人は、最初のあんまり乗り気でなさそうな雰囲気はどこへやら、自身の武器を作る事に対しとても楽しくなっていた。
「さて、それじゃあいよいよ武器を作っていく訳だが……」
「あの、実はお金とかそんなに無くって……」
「あぁ、それなら心配するな!恩人の仲間だからな、お安くするし、もし足りないとしても……まぁこの後頼む事をやってくれれば大丈夫だからな」
「はぁ……」
「という訳でまずはお姉さんからだが、魔術以外に何か戦闘面に使える特技とかあったりはするかい?」
「えっと…………強いて言うならば村で習った大鉈を使った戦闘術くらいで……ある程度以上の大きさの魔物になるとあんまり効果ある攻撃手段じゃないんですがね」
「ほぉ!いいじゃないか!近接戦もできる魔術師はなかなか居ないからな、もし敵に詰め寄られたとしても仲間の足を引っ張ることの無い隙のない戦力になるぞ」
「そ、そうなんですか?」
「そうだとも!魔術師は軟弱な奴が多くて好かんが己の肉体をきちんと鍛え、自らの戦術の弱点を補うその姿勢はワシ個人としても好感が持てる!」
「あ、ありがとうございます……えへへ」
「さて、それじゃあ次は妹ちゃんの方だが……そっちは戦闘慣れしてる様だな。一体どんな戦い方をしてるんだ?」
ルシィーナの戦い方を教えて貰った親方はひとしきりそう言ってルシィーナを褒めると、次にそう言ってノートゥーンに戦い方を尋ねる。
しかし、戦い方を尋ねられた当事者であるノートゥーンは苦い顔を浮かべていた。
それもそのはず、なんせノートゥーンの戦い方は体のあらゆる様々な部位を様々な形に変化させる異形の戦い方なのだから。
(で、シィー。僕はこれに対してどう答えるのが正解だと思う?)
(本当にどうしようか……強いて言うならステゴロ?まぁでも、ノーちゃんの戦い方はあんまり人前で出来る戦い方じゃないし、この際人前で戦う様に武器を作って貰ったら?)
(シィーがそう言うなら、分かった)
「僕の戦い方はステゴロ……かな?力に任せて殴る蹴るって感じ」
「人は見た目によらないとはよく言うでござるが……まさかここまでの物もあるとは。世の中分からないでござるな」
「ですねぇ……あの依頼を達成してる事から実力は本物でしょうし、1度手合わせしてみたいですね」
「マシュウ殿は仮にも神官なんでござるから、もう少し戦闘への欲は抑えるでござるよ……」
横でそんな会話をする二人にノートゥーンは少しだけむず痒そうにしながらも、ほんの少しだけは手合わせしたい様に手をぐっぱぐっばさせる。
「さて、それならまだお嬢さんらにはまだどこにどの素材を使うべきか、武器の設計の仕方までは分からんだろうからな、それはこちらで受け持とう。と、言う訳で……」
「「「「言う訳で?」」」」
「武器を仕上げるのに暫く……というか数ヶ月単位の時間がかかる。それまでの間お前さん達には霊峰の調査へと行って欲しい」
「霊峰と言うと……この街からでも薄ら見えるあの頂上すら見えない山の事ですか?」
「あぁ。別に何かあった訳ではないんだがあの山は俺らにとっても大切な山だからな、時々だが定期的に冒険者に調査して貰ってるんだ」
「冒険者に調査を?それは討伐隊やら引退勢の仕事ではござらぬか?」
「あそこは全く調査の進んでない樹海のど真ん中にあるこれまた未開の地でな、討伐隊は動かないし相当な実力者でなくてはたどり着きさえできないんだよ」
「なるほど、そういう事でしたか。それならば確かにその仕事は冒険者の領分ですね」
「だろう?それに、取りすぎなければ表面に出てる分の鉱石なら小遣い稼ぎに持って帰って来て貰っても構わない。どうだ?受けてくれるか?」
薄らと窓から夕日の刺し始めた部屋の中、4人は親方から突然ながらそんな依頼を受けたのだった。
次回!新しい冒険ー!




