私のステータス
お昼を食べながら交流する中でさりげなく尋ねると、クルスイードさん、いや、クルスイード様は、やっぱり王子様だった。
第三妃様のお子で、国王様の四男坊らしい。
それなら私達の伴侶候補にならずとも、ちゃんとした貴族令嬢の婚約者をつけて貰えるのでは、と首を傾げてみたけれど、『女性不足ですから、私にまではつけて貰えないのですよ』と苦笑された。
いかに女性不足とはいえ……王子様なのに、何でなんだろう?
疑問は残ったけれど、クルスイード様はすぐに別の話題をふってきたので、その話は終わってしまった。
その後は、他愛もない雑談を交わし、昼食を終えたのだった。
「こんにちは、ユイカ・トガクレ嬢……って、おや、これは。ごきげんよう、殿下」
「こんにちは、ユイカ・トガクレ。昨日ぶりですな。クルスイード殿下がご一緒とは思いませんでしたぞ」
「こ、こんにちは、ジューン様、大将軍様。えっと、クルスイード様は、私の訓練を見学するらしい、です。けど……私も、大将軍様がいるとは、思いませんでした」
そう、食堂を後にして訓練場所までやってきた私の隣には、『見学させて戴きます』と言ってついてきたクルスイード様がいて、魔法の指導役を担ってくれたジューン様の隣には、なんと大将軍様がいた。
……大将軍様も、見学するんだろうか?
それは、ちょっと、緊張するかも……。
「ほっほ、ショウセインが貴女の訓練をすると聞きましたからな。ならばわしも助言のひとつなり申してみようと参ったのですよ」
「そ、そうなんですか、えっと、こ、光栄です! 頑張りますので、よろしくお願いします!」
け、見学じゃなくて、助言って……つまり、訓練に口を出すって事だね。
な、尚更緊張するんですけどぉぉ!!
内心冷や汗をかきながらも、びしっと背筋を伸ばして頭を下げる。
上の、その更に上に立つお偉い上司には、礼と敬意をはらわなければならないだろう。
「はは、そう固くならなくて大丈夫だよ、ユイカ・トガクレ嬢。大将軍閣下は、怒らなければ怖くはないから。さて、それじゃあ、始めようか」
「は、はい……って、あっ! そ、その前に、私のステータス、確認してもいいですか? 色々あったから、まだ一度も見てなくて」
「え、ステータスを?」
「おや。それはいかんですな。……ショウセイン、後ろを向き目を閉じよ。殿下、貴方も、よろしいですな?」
「はっ!」
「そうだな、わかった」
「え?」
大将軍様が促すと、ジューン様とクルスイード様は私に背を向け、後ろを向いてしまった。
次いで、大将軍様も同様に私に背を向ける。
「え? えと……あの?」
「ユイカ・トガクレ、よろしいかな? よく聞きなさい。ステータスは己の全てが記されたもの。その全てを、安易に他者の目にふれさせてはなりませぬ。まずは自身で確認し、他者に見せるものと見せてはならぬものを判別なさい。そして後者にはその部分に触れ、クローズと唱えて隠しなさい。わしらも貴女の能力を確認したいが、それは、クローズが済んだ後のものでなければなりませぬ」
「己……自分の、全てが……」
そ、それって、もしや、スリーサイズ、とかも?
わわわわっ、だとしたら、確かに他人の目にふれさせては駄目ですね!
私の大切な何かが瞬時にごっそり減りますよ、うん!
……止めて貰えて良かった……。
「あ、あの、ありがとうございます! すぐに確認して、クローズさせて戴きます! えっと……ス、ステータス!」
私は慌ててお礼を言うと、念の為に数歩離れてから横を向き、ステータスを呼び出した。
するとすぐに半透明の光の板が現れる。
私はそれをじっと見つめた。
「えっと……?」
ユイカ・トガクレ 十八歳
種族 人間
職業 魔導士
レベル 1
身長 百五十センチ
体重 「クローズ!」
体力 普通にある
魔力 とても多くある
筋力 普通にはなくても大丈夫
知力 普通にある
素早さ まあ普通と言える
幸運値 普通にある
特殊能力
結界魔法 レベル∞
(どんな結界も思いのままよ! 使いこなせるようになるまではそれも発揮されないでしょうけど、頑張ってね!)
火魔法 レベル1
水魔法 レベル1
風魔法 レベル1
(魔法士団に入ったから追加しておくわね。野営での料理、お風呂、洗濯に便利よ!)
空間魔法 レベル1
(界渡りにはこれね。レベルが低いうちは異界へ渡るのは無理だけれど……年移月の時なら、私が助力して渡らせてあげるわ。あ、物を収納とかもできるわよ)
女神の雷
(理不尽に貴女に襲いかかる輩には容赦なく放ちなさい! 私が許すわ)
称号 女神の恩人
(命を助けて貰った事に対する恩は、そう簡単には返しきれないわ。手助けして欲しい事があったら言って頂戴ね。これからも見守っているわ)
女神の恩ポイント 残り 二億五千ポイント
(わかりやすくポイントにしてみたわ! あ、最初は五億あったのよ。異世界転移やチート能力贈呈で減ったと思ってね)
「……うわぁ」
ステータスを全て見終えると、私は何とも言えない声を上げた。
見たくない体重は即座にクローズしたし、スリーサイズまでは記載されていないが、見られたらまずいものは他にあった。
うん……とりあえず、女神の雷と恩ポイントもクローズしよう。
女神様の恩人である事は既に知られてるし、強力な結界魔法を授けられた事も女神様から告げられてるから、見えてても問題はないよね。
私は二箇所に触れ、クローズを唱えてそれを消すと、後ろを向いている三人に声をかけた。
振り向いて私の傍に寄り、まじまじとステータスを見た三人は、
「……結界魔法、レベル∞か。これは凄い」
「他に火、水、風魔法と、空間転移を使えるのですな。これは良い将兵となりそうです。勿論、努力は必須ですがな、ほっほっほ」
「能力は、普通の一般女性ですかね? 助けが必要な事があれば言って下さい、手伝いましょう。……重い荷物の運搬とか」
と、それぞれの感想を述べたのだった。




