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貧者英傑 - 熱狂、神ゲーを穿つ -  作者: わんしょっと
プロローグ

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1/20

0.世界で一番熱い場所

ゲームを本気でやる話

(2026年10月1日にリメイクしました)


♢


【マジラグ】某神ゲー、死ぬまでにクリア画面を見れそうにない その23【B級以下お断り】


36:デルッキー(A級)

大体VRMMOにおけるクリアとは?


37:ジャン(A級)

ワールドクリアさん「やぁ」


38:ボスフォルス(A級)

公式が勝手にいってるだけの存在しない記憶定期ね

そろそろ現実見るべき


39:メリッサ(A級)

グタグタ言ってねぇで全員S級冒険者(ハンター)目指せks


40:デルッキー(A級)

ただの廃人


41:ゾルド(A級)

俺はあいつらを認めてない。チートかグリッチ予想


42:ボスフォルス(A級)

S級になればNPCからも色々情報入るだろうし、クリアには必須何だろうな

まぁ問題はマルチ推奨ゲームでありながらS級モンスターのソロ討伐が必要になる点なんだが


43:デルッキー(A級)

この前A級ハンター十四人で『ゴルド・バハムート』レイドしたら一瞬で前衛消し飛んで八つ裂きにされたわ

やっぱクソゲーだろこれ


44:ジャネット(B級)

個人的には今後のアップデートで攻略要素が追加されると思います


45:ジャン(A級)

考察する前にスレタイ読もうね


46:デルッキー(A級)

意見だけは賛同。現状無理っす







 ***


 ──カチリ。


 マウスのクリック音がひとつ。無機質なモニターに映し出されていた画像が消えた。


 足の踏み場もないほど山積みされた資料の束、床に散らばる狂気じみた書き込みだらけのノート。

 そんな部屋の真ん中でマウスを操作した一人の男。彼の目線は、隣に置かれたもう一台のモニターへと移る。


『ワールドクリア 現時点進行率 0%』


「……つまんないの」


「俺に任せろよ先(・)生(・)。一ヶ月もありゃサクッと攻略してやんよ」


「この遊戯廃人(ゲームジャンキー)め。それじゃ意味ないっていつも言ってるだろう」


「でも、情けねぇ話じゃんね」


 その傍らに立つもう一人の男は、座る男とは異なる、異国の血を感じさせる彫りの深い顔立ちだった。


「登録ユーザー数は5000万人オーバーだっけ? そんだけいて五年も停滞とはよ」


「そのほとんどが今のような有象無象。気休めにもならない凡人ばかりさ」


 先生。

 そう呼ばれた男が気怠げに背もたれに体を預けると、その鮮烈な赤髪がふわりと揺れた。


「所詮た(・)だ(・)の(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)、とでも思っているんだろうね。己の全てを賭けるくらい本気にならなきゃ──何一つ手に入らないのに」


「どうすんよ。まさか傍観継続ってわけじゃねぇよな」


「……人間が最も激しく美しく、そして熱くなる瞬間。それはどんな時か分かるかい?」


 投げかけられた問い。

 部屋に一瞬の静寂が落ちる。


「それは、理(・)想(・)の(・)為(・)に(・)戦(・)う(・)時(・)だ」


 赤髪の男は自らの問いに微笑みながら答える。だからこそ、刺激を打ち込むのだと。


「見ててごらん。僕はこれからこの世界を──世界で一番熱い場所にしてみせる」


「……いざ、爆発♬」


 二人の視線が交差する中。

 モニターの『0%』という数字だけが、嘲笑うかのように点滅を繰り返していた。
















 ***


「…………」


 薄暗い部屋で、画面越しの狂騒を静かに見つめる一人の女。

 彼女の髪もまたテレビにに映る男と同じく──深く鮮やかな真紅に染まっており。


 テレビ画面の中、緊張した面持ちのアナウンサーが原稿を読み上げる。


『──続いて速報です。昨日正午、フルダイブ型VRMMORPG『マジシャンズ・ラグナロク』の開発元である『ゴッド・エンターテインメント社』が緊急記者会見を開き、驚くべき発表を行いました』


 背景のモニターに映し出されているのは、大勢の報道陣から焚かれるフラッシュを一身に浴びる、鮮烈な赤髪の男。


『サービス開始から五年目を迎えた同作において、未だ達成者ゼロとなっている『ワールドクリア』を果たした最初のプレイヤー、またはパーティに対し──賞金として現金【100億円】を授与するとのことです』


『100億!?』


『冗談でしょう、たかがゲームに……?』


 スタジオのコメンテーターたちが息を飲む声が、マイク越しに拾われる。


『繰り返します。ゲームの完全クリア達成者に総額100億円。条件は『ワールドクリア到達』ただ一つ。国家や公的機関を介さない個人の攻略報酬としては、人類史上最高額となります。製作者兼代表取締役社長の西園寺統矢(さいおんじ とうや)氏はこの発表に対するコメントとして──』


 大手ネット掲示板は即座にサーバーダウンを起こし、街頭ビジョンを見上げる群衆のどよめきが渦となる。

 それは街を、国を、そして世界を呑み込んでいく。


 一つの速報が流れた瞬間──全世界は爆発的な熱狂に包まれた。


 ただの娯楽に過ぎなかったゲームが一夜にして、巨万の富を賭けた『戦場』へと変貌を遂げた瞬間だった。


 この知らせを受け、世界中のプレイヤーたちが夢を見る。退屈な現実を叩き壊し、一攫千金を掴み取る道がいま眼前に示されたのだと。



 だが、後にこの苛烈極まる死闘を制し、世界にその名を刻むことになる『英傑』は──名だたるプロゲーマーでもトップ廃人でもなく、二(・)人(・)の(・)高(・)校(・)生(・)だったことを。


 この時はまだ、誰も知らない。





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