表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/7

7.急

 十全は近くにあった10階建ての建物の屋上から姿を現した。


「お前に!!好き勝手させるかよ!!」


 手元のリモコンのガラスをグーパンで上から叩き割った。

 十全の手が血で滲む。しかし気にしてはいられない。


「オラクル!帰ってこい!」


 呼びかけるが、オラクルは微動だにしない。

 リモコンのスイッチを何回も押す。


「クソッ!クソッ!」

「何をしている?あの人間は」


 空から現れた存在は、呆れながら十全を見た。

 そこで気付いた。


「お前、何故ナンバーがない?」

「うるさい!オラクルを元に戻せ!」


 十全は叫び続けるが、その存在は興味ありげに近付く。


「お前、ナンバリングレッテラーから外れたか。ならもう一度かけるか」


 存在が光線を十全に放つ。


「この光線はな。プラスとマイナスが凝縮された、判定光線だ。命が能力を得た時、どのようにそれを使うのか、テストしている。この星は既に見せ物として、バーズの星で娯楽として消費されている。『0』の様子がおかしかったんでな。近くまで来とった。まあいい。さて、お前は何番になるんだ?」


 存在が十全を覗き込む。しかし、既に十全に意識はなかった。


──────


 俺は……何番なんだ。

 俺は何番にもなれなかった存在だ。何の能力もない。ストレスで胃はキリキリ痛むし、嫌なことがあれば気分はどん底。他人のために胸を張って生きることなんて、できない。

 なあ、オラクル。オラクルはいつも回答を持っていたよな。なんて答える? この状況に、どう回答する?


「ヒーローって、カッコよくないですか?」


 ……え?


「だから、ヒーローってカッコよくないですか?」


 オラクル……か? いや、違う。


「私はあなたをずっと見てきました。そしてあなたは皆さんをずっと見続けてきました。それを言うんです」


 見てきただけさ。


「あなたが見る世界は、あなたの中にしか存在しない。つまりは……」


 つまりは。







「「俺が、この世界のヒーローってことだろ!!」」







──────


「俺は……ナンバー10。十全だ」

「ナンバー10?そんなものは────」

「存在する」


 十全は言い切る。

 そしてその台詞を言うと同時に、オラクルのコートが白く染まっていく。


「俺は……どこか自分を見限っていた。……だが、もうお前の好きにはさせないぞ!!Z軸はまだある!!キボウ(生に至る肯定)!!」


 ゼツボウ(死に至る病)の効果が切れ、人々は解放される。

 

「俺達は、俺達でいいんだ!等身大の自分の人生に、可能性は残されている!」


 オラクルが存在の後ろに立つ。


「な、なんだ。ワシを殺す気か?」

「違う。約束しろ。地球には手を出さないと。俺達は生きているんだ。息をしているんだ。大地に立っているんだ!」

「私と一緒に帰りましょう。もちろん、ナンバリングレッテラーは解除してね」


 存在は持っていた杖を構える。


「ワシに指図する気か!?この惑星を消すことくらい容易いんだぞ!」

「させない。オラクルと俺がお前にさせない」


 存在は杖を振る。しかし、空を切るだけで何も起こらない。

 

「なに!?クソ!」

「十全さん。皆さん。お世話になりました。何かが巡り合った時、また会いましょう」

「ああ。俺はナンバー10として、観測者として、この地球を守る」

「はい」


 オラクルはキボウを再発動した。時が巻き戻る。

 物や人、世界が巻き戻っていく。

 十全は薄れゆく意識の中で、子どもの頃を思い出していた。

(ヒーローってのは他人を見られる人のことだったんだな……)


──────


 2025年。

 都内某所。神社へと続く道にて。

 十全は座り込んで空を眺めていた。


「調子はどうです?」


 白装束の謎の人物が声をかけた。


「良いですね。この青空みたいに」

「それはいい。青空を見られるのなら、任せた甲斐があります」


 そう言うと、白装束の人物は去っていった。


「今度は俺が見る番だ」


 十全は頬を両手で叩くと立ち上がった。

 今日も彼は見守る。ヒーローなのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ