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1.白いヒーロー

「あのぉ~。ほんとにあなたのような方がウチに?」

「はい」


 都内某所、面接室にて。強面と思われる男2人に困惑の目を向けられている1人の人物は、やや緊張した面持ちで返答した。

 白地の上着に白のズボン。どこか浮世離れした格好に黒目の黒髪。どこかちぐはぐだった。


「ですが、あの。いや、助かるといいますか、お助け頂けることは誠に光栄なのですが、本当に良いのですか?うちのような零細組織で」


 『The DECAGONAL 9』と看板に書かれたこの場所は、ヒーローを募集していた。ヒーローというのはありふれた言葉ではあるが、今は地球の現状を変える超常的な能力を持つ人間のことを指していた。

 2025年。未知の事象が地球を襲った。ナンバリングレッテラーと呼ばれる、人を-9~9の数字のいずれかに割り振るという謎の事象。そして個人個人の能力が突出する事象。

 そして、そのマイナスに割り振られた人間による無差別犯罪という事象。


 面接に来たオラクルは、()()()()()()()神格化されていた。0の数字を割り振られたためだ。人類全体で見ても0を割り振られた人間は確認できておらず、幻の数字と噂されていた。その数字を騙った人物を中心に宗教が創始されたり、国が動いたりと、他の数字よりも遥かに影響力のある数字だった。


 そんな人物が、マイナスに対抗するために組織された数万以上に及ぶ団体の中の、別に有名でもなんでもないところに入ろうとしていた。正直、面接担当も話半分の感覚ではある。


「徒歩圏内でしたので」

「え」

「家から近いのでここに応募しました」

「……」


 黒いスーツの面接官達は拍子抜けだった。ところが数字を示す、オラクルのうなじのタグには、確かに『0』と書かれていることを確認している。しかも『0』は他の数字と違い、偽ることが出来ない。例えば『-9』の場合は条件次第で『9』と表示されるため、『0』は完全に信頼できる数字とされていた。

 面接官2人は顔を見合わせて、ひとまず組織長を呼び出した。

 数分後。


「こんにちは。オラクル様でよろしいですか」

「はい!」


 組織長である十全が出てきて、オラクルに声を掛けた。今度はオラクルも緊張を振り切るような元気の良い返事をした。


「大変有難く、感謝を申し上げます。ただ、オラクル様では弊組織よりも他の優秀な組織に入られることが良いのではないかと考える次第なのですが……」

「いえ、私の守るべき場所はやはり地元からだと考えており、帰る場所の確保からその周りで働く人間の安全の確保、そしてその輪が世界へと広がっていく。その第一段階に今私は立っておりまして、御組織に加入させて頂くことで、実現が可能なのではないかと考えております」

「なるほど……」


 『0』の数字に逆らうとどうなるか分からない。組織が壊滅されるかもしれない。と、考えた十全は、気付かれないように溜息をつき、返答した。


「では、こちらからもお願いさせて頂きます。打倒マイナスを掲げて」

「よろしくお願い致します」


 こうして奇妙な面接は終わった。十全はこの後の問題を考えて胃に穴が開きそうな思いだった。

 そして追い打ちをかけるように面接が終わった直後、サイレンが鳴り響いた。マイナスナンバーたちの犯罪開始に対するサイレンだ。


「このタイミングか!ぐっ」


 十全は手元のパネルを弄って支持を送ると、オラクルに向き直った。


「失礼ですが──」

「私も行きますよ。当然、ヒーローですから」

「え」


──────


 オラクルが十全の車に乗せられて現場に来た時、既に惨憺たる光景が広がっていた。

 人々の屍や建物の瓦礫が積み重なり、あちこちで火災が発生。世紀末そのものだった。


「……」

「オラクル様。あちらです」


 オラクルが目を移すと、数人のヒーローが戦っているのが見えた。


「トリガー!スカイ!撃ち込め!!」

「「わかってらあ!」」


 人に向かって攻撃が行われている。恐らくマイナスに対して早速ヒーロー達が攻撃を仕掛けているのだろう。

 オラクルもゆっくり車から降りると、白いコート姿で腕を伸ばした。


「いつの間に着替えられたのですか!?」

「先ほどですよ。では、行って参ります」


 オラクルは十全とスタッフに挨拶をすると、浮遊しながら現場に飛んで行った。


「誰だアンタ!?」


 白いコートが異様に映るのだろう、途中で声を掛けられるが無視していく。

 やがて現場の真ん中まで来ると、両手を広げる。

 コートの両腕部分には球が埋め込まれており、右手を挙げるとその球が光った。するとヒーロー達の攻撃のエネルギーが吸い取られた。続いて左手を挙げ球を光らせた。今度はマイナス達の攻撃のエネルギーが吸い取られた。


 右手と左手の光球をゆっくりとくっつける。オラクルを中心として優しい衝撃波のようなものが広がる。火は鎮まり、怒声や悲鳴は静寂に変わる。戦いは一瞬にして沈静化した。

 誰も説明できない。何が起こったのか分からない。『0』の数字を持つオラクルのみぞ知る現象だ。


「な、なにもんだアンタ……」


 一人のヒーローが、呆気にとられながら近付いてきた。


「なにって、ヒーローですよ。僕もそうなんです」

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