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スカーレットオーク  作者: はぎわら 歓
第一部

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10/47

10

 今日はタタラ成形で五寸角皿を作る。三kg程度の黒っぽい粘土の塊を練り、五、五寸くらいの角柱を作る。それをタタラ板という長細い板を使って同じ厚みに粘土をスライスしていく。スライスした粘土の板をコンパネに広げて水分量を調節し、良い硬さになってからいよいよ皿へ成形だ。冬の粘土は冷たくて指先が動きづらくなってくる。緋紗は手をこすり合わせて温めた。


「先生。型紙これでいいんでしたっけ?」


 師の松尾はロクロで八寸ほどの皿を挽いていた。松尾のロクロの巧みさにいつ見てもため息が出る。ペンションで和夫と小夜子にロクロをとても感心されたことが恥ずかしくなるような圧倒的な技術差があった。――いつかこのレベルに達する日がくるんだろうか……。


 松尾は元々器用らしいがそれに輪をかけて無駄がない動きだ。どう頑張っても緋紗には届かないようなレベルにみえた。見入っていると皿を板に置いた松尾が、「それでええ。二百枚作っとけ」 と、頷いた。


 なんとかタタラ成形は任させるようになっていた。タタラ成形にも、もちろん技術が必要で弟子入り始めたころはひどい成形具合だった。今ではなんとか合格をもらえているがまだ怪しいものだ。――もう少し器用ならなあ。

 緋紗は恨めしく自分の手をみた。

 休憩時間になり松尾の妻の美紀子がコーヒーを運んできた。


「緋紗ちゃん休憩しましょう。おとーさーん休憩しましょー」

「おう」


 固まった肩を回しながら松尾がロクロ台から降りてきた。三人でコーヒーを飲みながら休憩をする。陶芸センターで陶芸を習っている頃から、松尾の元でアルバイトをして、更に弟子に入りなおしたのでかれこれ八年近くの付き合いがある。おかげで家族のような親密さがあった。


「伝統工芸展はどねんだった?」

「あ、ああ」


緋紗はうっかり直樹の事を思い出すが、作品について感想を述べる。


「去年と同じ人がやっぱり入賞してますね」

「うん。毎年それのためだけに作る人もおるけえの。おめえもなんか出すか?」

「えっ。うーん。なんか大物はちょっとしんどいしなあ」

「組み物とかどう?」


美紀子が棚板に乗っている緋紗が作った皿を指さす。


「組み物ですかあ」

「ああ、そりゃええかもしれん。組み物は案外穴場じゃけ」

「へえ」


公募のことをあまり考えたことがなかった。しかし目標を持つことも必要かなとぼんやり緋紗は考える。


「まあ出来たら窯入れてやるけ」

「はい。ちょっと考えてみます」


手の中の備前焼のコーヒーカップは、空っぽになってもしばらく温かかった。

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