石臼の誕生と、はじめての食器作り
第14話
ハチミツの甘さに幸せを感じたのも束の間、メグミはふと、手元の木の匙を見つめた。
「……ねえ、ハル。ハチミツは最高だけど、やっぱり『パン』みたいな、ふかふかしたものが食べたくない?」
「ぱん……? ぼく、たべたことないけど、ふわふわしてるの?」
「そうだよ! でも、小麦の種はないから……そうだ、お米を粉にして『米粉パン』を作ってみよう!」
思い立ったら即行動。メグミは収穫した黄金米を山盛りに用意したが、ここで大きな問題にぶち当たった。
「……粉にする道具がない。ミキサーも、石臼もない……」
「おまかせなさい、聖女様!」
妖精たちがひらひらと舞い降り、湖の底から「魔力を帯びた硬い石」を二つ、魔法で浮かせて持ってきた。
「これをフク様がクチバシで少し整えれば、立派な石臼になるわ!」
「ピョイッ!」
ふくちゃんが「任せて!」とばかりに目をキラーンと輝かせた。巨大化し、その鋭いクチバシで岩を「ガリガリッ! 削りカスが火花を散らす!」と削っていく。
驚くべき精密さで、上下が噛み合う円盤状の石臼が完成した。
「すごい……ふくちゃん、彫刻家にもなれるね。ハル、一緒にお米を入れよう!」
メグミが石を回し、ハルが黄金米を一粒ずつ穴に入れていく。
ゴリ、ゴリ……という心地よい音と共に、真っ白でサラサラの、雪のような米粉が溢れ出した。
「わあぁ……! おこめが、おこめがお砂になったよ!」
さらにメグミは、ハルと一緒に食器作りにも挑戦した。
果樹園を整理した際に出た丈夫なクルミの木の枝を、ふくちゃんの鋭い爪で薄く削いでもらい、ハルが石で表面を磨く。
「見て、ハル。これで自分たち専用の『お皿』と『コップ』だね」
「ぼくの……ぼくだけのおさら……!」
ハルは、自分で磨き上げた木のお皿を、宝物のように抱きしめた。
「よし、道具は揃った! あとは味付けだけど……塩だけじゃ飽きるよね。……妖精さん、この辺に何か『酸っぱい実』とか『辛い草』とか、ないかな?」
「それなら、果樹園の奥に『ペッパー・ベリー』が実り始めてるわよ! フク様のお粉を浴びて、とってもスパイシーに育ってるわ!」
塩と、新しく見つけたスパイス。
少しずつ、けれど確実に、メグミたちの食卓は豊かになっていく。
「(……あとは、お肉とか卵があれば最高なんだけど……。それはまだ、先かな?)」
ふかふかに焼き上がる(予定の)パンの匂いを想像しながら、メグミはハルとふくちゃんと一緒に、手作りの食器を並べて笑い合うのだった。




