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禁断のハチミツ

第13話


 モモンガの「モモ」が仲間入りしてから、数日が過ぎた。

 ロッジの周りは、ふくちゃんが毎日ハッスルして振りまく脂粉のおかげで、もはや「庭」を通り越して「ジャングル一歩手前の楽園」と化している。


「……うーん。ハル、見て。リンゴだけじゃなくて、イチゴもカボチャも、収穫が追いつかないよ……」


 メグミは、たわわに実った巨大なイチゴを抱えながら、嬉しい悲鳴を上げた。

 ハルはすっかり元気になり、肩にモモを乗せて、ふくちゃんの背中の上で遊んでいる。モモはふくちゃんのふかふかな羽毛がお気に入りらしく、よくそこで丸くなって寝ている。


「おねえちゃん、あっちにブンブン飛んでるのがいるよ! キラキラしてる!」


 ハルが指差した先、真っ赤なバラや青いユリが咲き乱れる花壇に、黄金色に輝くミツバチたちが集まっていた。


「わあ、ミツバチ! ……って、これも普通のハチじゃないよね? 羽が透き通ってて、宝石みたい」


「そうよ聖女様! あれは『クリスタル・ビー』。フク様の聖なる花の蜜を吸って、最高級のハチミツを作る精霊に近いハチよ!」


 妖精たちが教えてくれるそばから、ハチたちはロッジの軒下に、これまた黄金色の立派な巣を作り始めていた。

 ふくちゃんは、自分より小さなハチたちが顔の周りを飛んでも、全く気にせず「ピョイ~」とあくびをしている。むしろ、ハチたちが運んでくる甘い香りにリラックスしているようだ。


「……ねえ、妖精さん。あのハチミツ、ちょっとだけもらっても大丈夫かな?」


「ええ、もちろん! フク様のお粉のおかげで蜜が溢れてるから、ハチたちもお裾分けしたがってるわ!」


 メグミはおそるおそる、巣の端っこから滴り落ちる黄金の液体を、木の匙で受け止めた。

 それをハルとモモ、そしてふくちゃんにもちょっとだけ分けてあげる。


「……っ!! なにこれ、めちゃくちゃ美味しい!!」


 口に入れた瞬間、花の香りが鼻を抜け、疲れがスッと消えるような濃厚な甘みが広がった。


 ハルも目を丸くして

「あまい……! おねえちゃん、これ、いままでたべたなかで、いちばんあまい!」と大喜び。


モモはハチミツがついたハルの指を夢中でペロペロ舐め、ふくちゃんは「ピョイイッ!」と翼を広げて歓喜のダンスを踊りだした。


「(……焼きたてのパンに、このハチミツをかけたら……。……あ、パン作るには小麦が必要だわ。……米粉パンならいける?)」


メグミがふくちゃんの喉元をカキカキしながらどう作ろうかと考えてた



 家、湖、果樹園、菜園、そしてハチミツ


この数日で、メグミの領地(?)は、誰もが羨む「美食の聖域」へと進化を遂げていた。


「(……でも、これだけ甘い匂いが漂ってたら、本当にそのうち『人間』に見つかっちゃうかも……)」


 メグミは、幸せな甘さに浸りながらも、ふと結界の外の荒野を思い出し、少しだけ気を引き締めるのだった。

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