観測者はただ見ているだけⅡ
散らばった書類、漂うインクの匂い。そんな中で疲れきって机の上でうつ伏せになっているのが俺だ。理由は簡単。上司に仕事を押し付けられた。仕事。そう、上司の始末書を書くことが仕事だというなら、だが。しかも、上司のその役目は三千年ぶりの大役だったということもあり、多くの神、英雄が手廻しをしてくれていただけに、今の雰囲気はかなり悪い。
その原因である、グレシアは今、目の前で寝ているわけだが。彼女の始末書を書くために十年もの時間がかかってしまった。流石に体に疲れがあったためか、伸びをすると気持ちがいい。十年間も座っていたためか、座っていた椅子から心地が良い音が鳴った。
流石に音が大きかったのか、上司であるグレシアは寝返りを打った。それを見て、少しのあいだ仮眠をとろうとしていた時、
―――――コンコン
この部屋の古ぼけたドアをノックする音が聞こえた。
「開いていますよ。」
と、答えると、ドアから顔を覗かせたのは、ここでは数えるほどしかいない顔見知りのひとり。
「お久しぶりです。リノセ兄。」
ここでは珍しいツノの生えた、半悪魔だ。背中にはもちろん、悪魔のような羽が生えている。だが、体つきが逞しすぎるせいか、飛べないような印象をうけないでもない。
リノセ兄は軽く手を挙げて答えると、グレシアに気を使ってか、小さな声で、
「始末書の方はどうだ?まったく、そこのアホをたたき起こして書かせてもいいのだぞ?」
と、結構本気で言っているように見える。
「大丈夫です。いま丁度終わったところですし。」
そもそもたたき起こしたりなんてしたら、その後どんな仕打ちを受けるかもわからない。リノセ兄もそれを分かっているからか、諦め顔だ。俺はとりあえず素直に疑問をぶつけることにした。
「リノセ兄はどうしてここに?」
その言葉を待っていたのか、それとも本当に忘れていたのかわからないが手をポンと打った。
「ああ、そうだった。実は上司から始末書をそろそろ出して欲しい、と言っておいてくれと頼まれたんだが、その調子だと問題なさそうだな。疲れてるみたいだし俺が持っていこうか?」
確かに疲れが少しだけあるがそれほどでもない。が、ついでならば良いか、と思い、リノセ兄に頼もうとした時、
「くぁ…」
と、小さな欠伸をしているような声が聞こえた。その声の主はやはりグラシアで、そのまま、また寝てしまったようだ。 リノセ兄の提案をありがたく思いながら、やんわり断ることにした。
「ありがとうございます。でもそこまで疲れもないので自分で行こうと思います。」
「そうか。じゃあ俺は戻る。頑張れよ。」
「はい。ありがとうございます。」
頭を軽く下げて、彼がドアを閉めるまで待った。そして、リノセ兄が来ているあいだずっと寝たふりをしていたグラシアの方を見た。すると、彼女は面白そうに言った。
「途中で遮られると考えを変える癖、やめた方がいいと思うぞ?」
「…気をつけます。それでは、始末書を渡してきます。」
そういってドアを閉めた。廊下を歩いていると、ヒソヒソと俺に聞こえないように話しているのがわかる。ほんと、神は助けてはくれないのに喋ることはできるんだよな。神とは、観測者の地位の一番上と言われている役職だ。つまり、俺としていることはあまり変わらない。俺と神の大きな違いは、人間が知っているかどうか、だ。知られているからどうということもないが、それだけで強さが全く違うらしい。強さと言っても、権利とかではなく、純粋な戦闘能力、らしいが。だが、神になるには運が必然的に必要だ。なぜなら、観測者が観測をしている時、ごく稀に''見える''人間がいる。そこから語り継がれ、知られていく。そうするとその観測者は少しずつ力をつけ、やがて神になる。らしい。だが、もちろん、観測者だけではない。例外も多勢いる。人間が知っているというだけでどんなものも神に近づけると言われている。そのために観測者になったものも多い。だが、もちろん危険な行為でもある。人間のお陰で強くなるのだ。もちろん、忘れ去られれば自然消滅する。もともとここにいる者たちは魂を持っていない。つまり消滅すればそれこそ''死''が訪れる。こうやってここは上手くまわっている。この行為をするものは、人間が好きな者達か、昔から存在し、飽きた者達かの2者くらいだろう。俺はグラシアに頼まれたからしているだけだ。例外は探せばいくらでも湧いてくる。
ごめんね?こんなヘタクソで。まさか説明でこんなに使うとは…今度から気をつけます。あと、ちょくちょく中身を変えていくと思いますがごりょーしょーください。ではまた!




