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拍手の再掲です
■お雛サンバ
「お母さんのせいだわ……」
母が溜息をつく。
「ついつい面倒でいっつも3月に入って慌てて出して
『もうちょっと飾っておきましょ』なんて仕舞わなかったから……」
だんだん声が震えてきて。
「だから30をとうに過ぎてもあんたお嫁に行かないんだわ!」
わっと泣き出した。
いやいやお母さん、大丈夫です。
お嫁には行きますよ。
ずっと断ってたんだけど遂に絆されちゃって。
今度連れてくるけど驚かないでね。
彼、10歳年下だけど。
*3/3 ひなまつり記念
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■感染経路
金曜の夜、彼女がだるいと言い、俺は熱っぽいと言った。
熱をはかったら二人して38度だった。
絶対インフルエンザだ。彼女にうつされた。
「違う、私がそっちからうつされたの!」
お互いうつされたうつされた言いながら土曜に混んでる医者へ行くと
「A型ですね」──彼女。
「B型です」──俺。
「…………」
帰りは手は繋いでるもののマスクをしながら微妙な距離感で家路についた。
昨夜寝ながらキスしちゃったけれど、うつるかな?
*3/4 浮気はしてないはず多分
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■鼻の頭に絆創膏
待ち合わせ場所に現れた彼の顔を見て私は目を瞠った。
「何その鼻」
「昨夜会社の飲み会の帰りに酔ってコケてすりむいた」
今どき鼻の頭に絆創膏貼ってる人って……。
しかも、いい大人の男が……。
……。
「イテッ!」
思いっきり剥がしてやりましたとも、絆創膏を。
「何すんだよ~」
そうっと鼻を触る彼。
だってまるで、少年の心を持った青年、みたいに見えるんだもん。
そんな可愛い姿、他の人に見せる必要なし!
*3/5 cast:西島秀俊さん(絶対)
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■メランコリック(from 好きと言えない)
「おーい、ばんそこくれ」
あいつが私の席にくる。保健委員の私のポッケにはいつもばんそうこうが入ってるから。
「あんたよくころぶね」
私はぬらしたティシュで血のにじんだひざこぞうをふいてばんそうこうをはってあげた。
「保健室いきなよ。消どくした方がいいよ」
「あそこやだ。歯医者のにおいするから」
「ばっかじゃない」
でもほんとはちょっとうれしい。
保健の先生になった気がするから。
けっしてあいつがすきだからじゃない。
*3/6 小学生のころのかれら
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■bitten by a bug?
首が痒いなーとぽりぽりしていたら、一緒に残業してたヤツに
「プクッてなってるぞ。それ以上掻くなよ血が出る」と止められた。
冬なのに蚊に刺された。いやほんとに。どこに生きてたんだろ?
***
次の日、先輩が「やだー、キスマークなんかつけてきちゃって」とにんまり笑うので、
慌てて「蚊です!」と言ったものの通りがかったヤツが
「その痕がついたとき、俺一緒にいましたよー」と言い去った。
誤解です! ほんとに誤解です!
*3/7 確信犯がいます
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■北の果てまでついていく
彼女は高嶺の花で、狙ってるヤツはいっぱいいた。
いたはずなのに、何故か俺の隣にいる。
しかも、東京生まれの東京育ちなのに
北海道にIターンする俺についてくるという。
「だって、あなた以上に優しい人に会ったことないもの」と彼女は笑うが。
ある日、電話で話す彼女の声を聞いてしまった。
「北海道ってゴキブリもいないし、スギ花粉も飛んでないんだって! 最高!」
道産子なら誰でもよかったわけじゃないよな?
そうだよな?
*3/10 でも白樺花粉があるとか
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■転禍為福~わざわいてんじてふくとなす
友人の結婚式の二次会でやるハメになった余興で
10分の1の確率なのに、まさかのからし入りシュークリーム大当たり!
平気なフリ、しなきゃ。
でもダメ、気持ち悪い……!
そうして私が身体をはってGETしたのは
景品のディナークルーズチケットと
具合の悪くなった私の世話をしてくれたのが縁で付き合うことになる花婿の友人。
転んでもタダで起きないねーと女友達に笑われた。
*3/11 からしとわさびで迷った
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■キャンディ・ガール
小さい頃の君は
カラフルな飴玉みたいなのが付いたヘアゴムで
いつも髪を結んでいた。
でも制服を着る頃には
髪から飴玉は消えて
下ろしているようになってしまった。
「ひゃあ!」
君の悲鳴で目が覚める。
「もう、いつも言ってるでしょ!
このピアスはキャンディじゃないんだから
寝ぼけて舐めないで!」
髪にあった飴玉は今は耳に。
やっと食べることができた。
*3/12 食べたのは飴ではない筈
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■FALL(from マケズキライ)
4月1日。大学の入学式。
1度め。駅の階段でベビーカーを一緒に持ち上げてた。
うわ、よく見たらヒール靴。
2度め。誰かが投げて外した空き缶を拾ってゴミ箱へ入れてた。
大学構内。同じ新入生と判明。
とどめ。思わぬ雨に講堂入口で立っていたらその彼女にビニール傘を差し出された。
「私 折り畳みあるから!」 俺は一言も発せられず彼女の後ろ姿を見送った。
ビニ傘から雨粒がひとつ、そして俺も。
やばい。落ちた。
*3/13 でも彼女憶えちゃいない
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■恋のおわりとはじまり
卒業式が終わって友達と校門を出る前に
忘れ物したからと一人誰もいない教室へ戻る。
バッグから筆記具を取り出し彼の机へ近づくと
私はとある言葉を書いた。
もう誰も見ない。
いや在校生は見るかもしれないが、彼が見ることはない。
結局告白する勇気もなかった私の小さな恋のおわり。
校門に戻ったところで4階の窓から大声で名前を呼ばれた。
見上げて驚く。まだ校内にいたの?
彼が叫んだ。
「おれも! おれもだから!」
そしてはじまり。
*3/14 彼女は何と書いたのか?
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