屋上の感染者
ドイツ
露店街
「お!このリンゴ美味そうだね」
「おばちゃん!一個ちょうだい!!」
「金は有るのか?だゼ」
「無いけど」
「…」
露店街を歩く祭峰とラグド
祭峰はリンゴを購入し、しゃくりとかじる
「う-ん、美味い」
「流石、ドイツ」
「それは関係無い様な気がするゼ」
「…先刻、あの状態になろうとしたな?だゼ」
「仕方ないだろ-?」
「あのままじゃ負けてかも、だし」
「この国を滅ぼす気かと思ったゼ」
「あははは!そりゃ-、無いね」
「加減はするさ」
「お前の言葉程、信用できない物も珍しいゼ」
「橋唐が愚痴を言うのもよく解るゼ」
「ちぇ-」
しゃりっ
「…死んでないかね、ゼロは」
「殺し掛けたのはアンタだゼ…」
「だねぇ」
遺跡
最奥
「ゼロ…」
「…ぁ」
「ゼロ-…」
「うるせぇ…」
「生きてるんだねぇ」
「死ねるか…」
「はい、ソ-セ-…」
「…ウィンナ-」
「まだ、そのネタを引っ張りやがるのか…」
「食うけど」
もしゃもしゃ
「…どうだった、祭峰は」
「強ぇ」
「死ぬかと思ったな」
「ゼロが?珍しいね…」
「アイツに勝てねぇ様じゃ…、[隻眼]には勝てねぇな…」
「まだまだ、か…」
「精進してね-…」
「へいへい…」
「…帰るか」
「立てる?」
「どうにかな」
「発掘物は無事か」
「うん」
「…じゃ、帰ろうか」
「おう」
日本
徳島
廃病院
東病棟屋上
ギィ…
(…どうだ?)
(何も居らんぞ…?)
「…」
(!)
(待て!何ぞや居る!!)
(え!?)
(アレは…、人間か…?)
(人避けの護符術を使ってるんじゃなかったのか!?)
(アレは外からの侵入を防ぐモンや!)
(元から中に居られたら意味ないねん…)
(それじゃ…)
(肝試しに来たガキやろうなぁ…)
(どうしようか、1人やし)
(外だったら安全かな)
(やろうな)
(外に出るまで送ってやればOKや)
(一応、響さんと火星さんに連絡…)
(…あれ?)
(どないしたんや?)
(け、携帯が…)
(無くしたんか!?)
(情けな…、あれ?)
(一斑もかよ!?)
(やってもうたぁあ----!!)
(…仕方ない、携帯はあの子を送り届けてから捜そう)
(そうやなぁ…)
(無くしたら響さんに殺されるで…)
「…」
「ちょっと、君」
「…」
「ここは危ないよ」
「早く出…」
「…ぁ-」
「…え?」
ぐるりと回転する首
普通の人間には有り得ない動き
「あぁ-…」
バチィンッッ!!
「!!」
波斗の頭上で炸裂する雷
「能力者!?」
「伏せぃや!蒼空!!」
「壁、守、盾!!」
浮遊する3枚の札
それぞれが結界を張り、波斗を護る
「いけるか!?」
「ど、どうにか…」
「助かったよ、一斑」
「それ所ちゃうで!!」
「コイツ…!!」
「あぁ、能力者…」
「違う!!」
「[残骸]に感染した死体や…!!」
「!?」
出入り口付近
「今、屋上で何か光ったような…」
「[残骸]かいな…」
「東病棟やな」
「どうする?」
「どのみち、あのアホ共を迎えに行かなアカン」
「行くで」
「そうだな」
屋上
「…人、だよな?」
「マネキンとかじゃなく…」
「何処ぞの山で遭難死したか…、殺されたか…」
「何にせよ、人間の死体や」
「…封じるのか?」
「いや、逃げる」
「はぁ!?」
「人間は例外なんや」
「動物に感染するんとはワケが違う」
「器が大きすぎるんや」
「…器?」
「響さんも一回しか会うた事が無いらしいねんけど…」
「人間の[残骸]感染者は周囲の[残骸]全てを吸収してまうらしいねん」
「…って事は?」
「アイツは多重能力者も同じや」
「全ての能力を吸収したバケモンやな」
「…逃げた方が良いな」
「ほなから、そう言ようやろ」
「逃げるで」
じりじりと一歩一歩、後ろへ足を引きずる2人
「あ-?」
感染者がふらりと揺れた瞬間
「今や!!!」
一気に振り返り、出口へと飛び込む
だが
バタンッ
「「!?」」
ガァン!!
「あがっ…」
突然、扉が閉まり2人は扉に頭から突っ込んだ形になる
「痛い…」
「な、何で閉まったんや!?」
ガチンッ!ガチンッ!!
「開かん…」
「…もしかして」
「閉じ込められた?」
「…」
「…」
「…嘘だろ?」
「嘘ちゃうで…」
「あぁ-」
ボコボコボコ…
地面から這え出る岩手
「おごぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
恐ろしい叫び声と共に数十メ-トルはありそうな石像が現れる
「属性系の岩系やな…!!」
「壁、守、盾!!」
ガゴンッ!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「ぐぅ…!!」
ギリギリと硬直する石像と一斑
「蒼空!何とかしてくれぃや!!」
「任せろ!!」
バチィイイイイインッッ!!
「あ゛あ゛あ゛がぁあ゛あ゛あ!?」
ボロボロと崩れ落ちる石像の腕
「破壊も出来るんかいな!?」
「いや、今のは壊れる形に…」
「つまりは無茶苦茶な凸型に腕を変形させただけだ」
「破壊までは…」
「あがっががががっががあぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「来たで!!」
「懲りずに…!!」
ばしゃんっ
「…え?」
波斗の腹部にかかる水
「何で水が…」
「あぁ-…」
「アイツ…!!」
ずるん
水は形を変え、波斗の首に絡まりつく
「かぁ…!!」
(首を…!締め…!!)
「蒼空ぁ!!」
「あ゛ぁあ゛ああ゛ああ!!!」
ヤバい…!!
避けられない!!
このままじゃ…!!
死…!!
ガキィンッッ!!
「!?」
「いけるかいな…!!」
「い…ち…まだ…ら…!!」
波斗の数十㎝手前で、一斑はどうにか結界を張る
しかし、徐々に、徐々に押され始めている
(流石に連用はキツいな…!!)
「ぐがっ…!!」
ギリギリと波斗の首を締め上げる水
「絶対絶命…、やな…」
ガァアアアアンッッッッ!!
「「!?」」
「あ゛あ゛ッッ!?」
激しい炸裂音
石像の顔面に激突する扉
それと共に、後ろに弾け飛ぶ石像
「情けないのぅ」
「まだまだやな」
「響さん…!!」
バツンッ!!
「大丈夫かい?蒼空君」
波斗の首を締めていた水をいとも簡単に引き千切る火星
「げほっ!げほっ…」
「ひ、火星さん…!!」
「さぁ-て、調子乗ってくれたのぅ?[残骸]」
ゴキゴキと鈍い音で唸る響の拳
「お仕置きの時間だな」
首をぐるりと回す火星
「「ブッ殺す」」
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