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秋鋼  作者: MTL2
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娯楽の矢毘詩

「ああががががあああ!!」


飛びかかってくる生徒


(おりゃっ!)


ドスンッ!!


波斗の拳が腹へと食い込む


「おがっっ…」


ゴロゴロと転げ回る生徒


(あれ?弱い?)


動きが単調


真っ先に気付いたのはそれだった


確かにイスや机を潰してしまう怪力には驚きだ

しかし、動きが単調すぎる

先刻もただ真っ直ぐに向かってきた

防御など微塵も考えていない動きだ


人は誰でも1度や2度はケンカをした事や、運動をしたことが有るはずだ

波斗もケンカの経験は少ない方だったが、単調すぎる相手の動きを読み取るのは難なく出来た

ケンカの熟練者ならば一発で仕留められるかも知れない


(この程度なら拘束銃が無くても大丈夫かな…)


「あぎ…」


ゆらりと体を起こし、波斗を見つめる生徒


「あ-う-…」


空を見つめ頻りに訳の分からない言葉を呟いている


「…あうぅ」


にやりと口が歪み、波斗の方向を向く


「あがががっっっ!!!」


急に生徒が飛びかかってきた


(またか…!)


拳を構える波斗


(!?)


生徒の向かう方向が違う

自分ではなく…


(委員長!?)


生徒は一直線に委員長の方向に向かう


(しまっ…!!)


予想外なので反応が遅れてしまった

1秒程度のズレ


だが、そのズレが命取りだ


(速い!!)


元々は身体特化系の能力者

速いのは当たり前だ


「きゃぁっっ!!」


委員長が暴走した生徒に担がれる


「げっげっげ…」


まるで笑うかのような声

ノイズが掛かったかの様な声には気味悪さが感じられる


「げぁっ!!」


バゴンッ!!


「!?」


一瞬、何が起きたのかと思った

天井に穴が開き、暴走した生徒と委員長の姿がない


(屋上…!?)


暴走した生徒は屋上まで跳び上がったのだ


「チッ…!!」


急いで銃を取り、屋上へと向かう


「き、君!!」


担任に呼び止められたが無視

今はそれ所じゃない



屋上


「はぁっ…!はぁっ…!!」


「ぎひひっ…」


醜く歪んだ顔の生徒


その肩には気絶した委員長


「委員長!!」


「…」


先刻の衝撃で気絶したのか…!!


「おいおい、声出して良いんですかい?」


「!?」


生徒と委員長の影から1人の男が出てくる


「折角、そんな珍気な変装までしてますのに」

「それじゃぁ、変装が台無しですぜい?」

「蒼空 波斗さんや」


「…誰だ」


「何、名乗る程の者じゃぁございやせん!」

「ですが、名乗らせていただきましょう!!」


扇子を持ち浴衣姿の長身の男

白と黒のアサガオが咲き乱れる浴衣

若い顔立ちに似合わない白髪

そして奇妙な口調


矢毘詩ヤビシ 十全トゼンと言う者でさぁ!!」

「五眼衆が一眼!娯楽の十全たぁ-!あっしの事でい!!」


「五眼衆か…!!」


「そうそう」

「蒼空さんがお仲間!火星 太陽さんの元にも1人!!」

「織鶴 千刃さんと鉄珠 忍さんの元にも2人!!」

「あっしの仲間が向かってやすぜい!!」


「…五眼衆が、か」


「その通り!」


「何で俺達を狙う?」


「まずは末端組織から狙うのが定石!」

「将を射んと欲すればまず馬を射よ、と言うでしょう?」


「それで俺達を狙ったのか」


「如何にも!」

「我々は軍に復讐するべく立ち上がった次第!!」

「こ-んなぁ所で止まってはおれんでしょう!!」


「戦うのか」


「当然!!」

「では参りましょうぞ!!」


「1つだけ!!」


「む?」


「1つだけ聞かせろ」


「何です?」

「人避けなら…」


「委員長は何の関係が有ったんだ?」

「どうして巻き込んだ」


「委員長?あぁ、あの方ですな」

「餌ですよ」


「餌?」


「貴方という大魚を釣り上げるためのね」

「餌が良くなければ釣れんでしょう!!」

「貴方のご友人にしようかとも…」


「もう良い」


「はい?」


「喋るな」


「おぉ!怖や怖や」

「しかし、貴方に何が出来るんでしょうねぇ?」

「雑兵の情報では能力もロクに使用できない貴方が!!」


波斗が服の袖を捲る


「酷い有様ですな」

「折れたんでしょう?その腕」

「変装のために無理矢理、補助器具を外したのがツケに廻りましたな?」


「それで良いんだよ」


ピッ


波斗の腕から血が滴り落ちる


バチィイイン!!


地面から生える剣


「ほう…、面白い」


「行くぞ…!!」


ガキィイイイン!!


激しい摩擦音


「おやおや、危なっかしいですねぇ」


男はいとも簡単に波斗の斬撃を避ける


「やはり素人!残念無念!!」


そんなのは解っている

相手はどうかは解らないが、自分は間違い無く戦闘などの経験値が低い

相手は確実に油断している

だからこそチャンス


(触れれさえすれば…!!)


ゼロが言っていたあの使い方


「どうしました!?その程度ではありますまい!!」


「くそっ…!!」


ブンブンと刀を振り回す


「ハッハッハ!!」

「どうしました!?素人でも素人過ぎますぞ!?」


「このっ…!!」


「こちらです」


ゴキンッ!!


「がっ…!!」


折れた腕を掴み、メリメリと締め上げる矢毘詩


(今だ!!)


バチィイイン!!


「…む?」


凄まじい音にひるむ矢毘詩


「何です?何をしました?」


「…作戦成功」


「はい?」


ブチッ


「は…」


矢毘詩の腕が曲がり、血を噴き出す


「なあぁあああああああ!?」


「ザマァ-見ろ…!!」


腕が痛い

折れた腕を握られたのだから当たり前だろう

正直、もう右腕は使い物には…


ドガッ!!


右頬に鈍い痛み


「このガキィ…!!」

「殺す!」

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」

「殺すッ!!」


血走り狂気じみた矢毘詩の眼


「殺してやろう!!」

「血を!肉を!骨を!臓器を!!」

「全て!!抉り取ってやる!!!」


しまった

一撃で致死させなかったのはミスか…!!


「覚悟してくだせぇよ…!!」

「あっしの拷問はちと…!堪えますぜぇ…!!」


読んでいただきありがとうございました

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