暴走
屋上
「飯が食いにくいな…」
折れた右腕は使えないので、利き腕ではない左腕で飯を食す波斗
勿論、ぎこちない動きである
「あ-んってしてやろうか?」
「キモいからやめろ」
「だろうな」
「なぁ、蒼空」
「何だよ?熊谷」
「お前さ、委員長に何か言ったのか?」
「滅茶苦茶、不機嫌だったけど」
「特に何も…」
「思い当たる節も無いんだよなぁ…」
「お前って時々無神経だからな」
「後で委員長に謝っといた方が良いんじゃねぇの?」
「だよなぁ…」
「はぁ…」
大きなため息が漏れる
何か自分は悪い事をしてしまったのだろうか
思い当たる節など無い
疑問符と不安感が波斗の脳内を駆け巡る
「…まぁ、良いけどよ」
「それより!知ってっか?蒼空、熊谷」
「ん?」
「何だよ」
「朝、言ってた超能力がど-たらの話なんだけどな」
「何か超能力者が犯罪を起こしてるらしいぜ」
「!?」
「ほら、あのサイコキネンシスっての?」
「サイコキネンシスで銀行のガラス破ったり、家の鍵壊したりさ」
「炎とか出して脅したり」
「結構、犯罪も増えてるらしいぜ?」
「携帯のニュ-スでやってた」
「そうなのか…」
「蒼空のやってたアルバイトの万屋」
「あそこにも依頼来てたりすんの?」
「何!?アルバイトやってるのか!?蒼空!!」
「ま、まぁね…」
「どんなアルバイトだ!?」
「可愛い子は居るか!?」
「コイツと一緒に居たのはオッサンだった」
「天体観測が趣味なんだって」
「そんな事は言ってなかったぞ、一言も」
「居ないのか-」
「女性なら居るけど」
「どんなのだ!?」
「胸はデカイのか!?」
「で、デカイっちゃ-デカイかな」
「Eか!?Fか!?」
「そこまでは知らないけど…」
「蔵波って大きいのが好きなのか-?」
「オ-ルマイティに決まってんだろ!馬鹿野郎!!」
「やっぱり」
ガシャンッ
「?」
「何だ?今の音」
「金網の音じゃねぇか?」
「金網って…、野球部は練習してねぇぞ?」
「ボ-ルとか飛んでこないだろうし」
「鳩とか?」
「いや…、違う」
「人だ…」
「「!?」」
ゆらりと、だらしなく立っている男が金網にへばり付いている
「ここの生徒じゃないね…」
「制服が違う」
「それよりも!何でこんなトコに居んだよ!?」
「ここ屋上だぞ!?4階の!!」
「下の教室の窓は…」
「全部閉まってる」
「物置だし」
「じゃぁ…」
「あ…」
「あ?」
「あぁががががぁあああああああああ!!!!」
「「「!?」」」
突如、奇声を発する男
「あぁ!あぁああがああああ!!」
ガンガンと金網に頭をぶつけ、ただ叫び続ける
「あぁががぁあ!あがががっががあああ!!」
ガシャァン!ガシャァン!!
徐々に金網が凹凸化していく
「に、逃げるぞ!!」
「当たり前だろ!!」
弁当を放りだし、階段へと走る3人
バタン!
「何なんだよ!?アレ!!」
「変人だろ!悪魔だろ!?」
「もしくはゾンビか!?」
「ん-、超能力者じゃないかなぁ」
「超能力者…」
「ほら、屋上を走ったりする人が居るって言ってたじゃん」
「あの人は屋上まで跳び上がって来たんじゃないのかな」
「なるほど…」
「…何であんなに狂ってるんだ?」
「解らないけど…」
「…アレだろ?」
「アニメとかによく有るじゃん!凄い力を手に入れたらアホな事に使う奴」
「透視能力使って覗きとか!」
「「それはお前だろ」」
「う…」
「あがががああああああ!!」
「すぐそこまで来てる!!」
「逃げるぞ!!」
「ん-、ちょっと待って」
「何だよ!?熊谷!!」
「2人は階段を降りた所に居てくれるかな」
「そんな事したら出てきたアイツに速攻見つかるだろ!?」
「うん、だからだよ」
「「はぁ!?」」
「がああああっっ!!」
ガシャァアン!!
扉を蹴破り、男が入ってくる
「あぁ…?」
「うわ-、見つかった-」
「逃げろ-」
「あぁが!!」
蒼空と蔵波に飛びかかろうとする男
「ほいっ」
がしっ
「あ!?」
扉の影でスタンバイしていた熊谷が男に足を引っ掛ける
「あげががががががががが!!」
醜く階段を転げ落ちる男
「あげっ…」
「気絶したか?」
「…したっぽいな」
「我ながらナイス~♪」
「助かったぁ…」
「そうでもないだろ」
「え?」
「こんな不審人物が普通に学校に入ってきてるんだぞ?」
「街中は…」
「…!!」
prrrrrrr
波斗の携帯が鳴り出す
画面には「火星さん」の文字
「ちょっとゴメン!」
「もしもし?」
『蒼空君!無事かい!?』
「ま、まぁ…」
『単刀直入に言う!!』
『能力者の暴走が始まってるんだ!!』
「暴走!?」
『低能力者なら問題は無いけど、元々素質が有った物は暴走してる!!』
『理性を失ったりしてる者居るみたいだが…、厄介なのは保ってる者だ!』
『能力を悪用してる様な奴が多い!!』
「もしかして街は…」
『理性を失ってる者達によってパニックになってる!!』
『軍も全力で抑えてるけど、流石に裏での活動は限界が有るんだ!!』
『秋鋼のメンバ-は聞き込みよりパニックの沈静化を優先させると織鶴から連絡が有った!』
『蒼空君は学校を早退して万屋に戻ってきてくれないか!?』
「わ、解りました!」
『じゃ、早く戻ってきてくれ!!』
ガチャッ
ツ-ツ-…
「…戻るか」
「蒼空ぁ-!」
「悪い!俺、仕事が入った!!」
「帰るわ!!」
「はぁ!?今の先生からの連絡、聞いてないのか!?」
「全員、校舎内で大人しくしてろって…」
「早退する!」
「先生に伝えといて!!」
「蒼空ァ--!!!」
「…聞いてないぞ、アイツ」
市街地
ビル、屋上
「お-お-!暴れてる暴れてる」
「楽しいねぇ」
「黙れ、ファグナ」
「人同士が殺し合うのを見て楽しいのか」
「楽しいぜ?俺は、な」
「テメェは相変わらずクソマジメでキメェ性格だな」
「否定はせん」
「だが、死者も生者も冒涜するのは許さん」
「彼等の心意気を笑うな」
「慈愛のレットラ様はお偉いですね~」
「混沌のファグナは汚らわしいな」
「クックック…、だろうなぁ」
「さて、そろそろ俺達も動くか?」
「そうだな」
「彼等もそろそろ動き始める」
「ボスは?」
「動くと思うか?」
「クックック!予想通りじゃねぇか」
「じゃ、行こうぜ」
「ああ、この世に慈愛と安息を」
「テメェはそれがモット-だったなぁ」
「俺は、この世に混沌と崩滅を…、だ」
読んでいただきありがとうございました