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023 パフェっ娘が来た!

「パフェっ娘のエリと申します。契約先を探しているのですが、よろしければご検討頂けませんか?」


「うおおおおおおお!!!!!」


最初に吠えたのはフトシだった。


「どうぞどうぞ!入ってくれだお!ささ!」


「お、お邪魔します……」


小さな黒髪の女の子がしずしずと中に入ってくる。


サーヤと七瀬ちゃんは同い年くらいだ。彼女はそれより数歳年下だろうか?


背中に背負った大きなかごにはたくさんの種類のフルーツが入っていた。


「はじめましてここの社長のレーヤです。こちらは副社長のサーヤ」


「よろしくお願い致します。エリさんはここをどちらでお聞きになりました?」


「先程、訪問させて頂いた企業様の方で話題になっておりましたので、そこで……」


彼女が企業名を告げると、確かに俺達のクライアントの一つだった。


サーヤがすっげぇドヤ顔でこちらを見てくる。なんなら肘でつついてくる。


わかったわかった、お前本当すごいよ。


テーブルをお借りしたいのですが…とエリさんが言うので、手頃なテーブルを用意する。


彼女が風呂敷を広げるとパフェの容器がたくさん積み重なっていた。


ボーッと見ている俺の前に小さな画面が表示された。


彼女についての注意事項がいくつかあります。こちらに記載しますので、契約の判断の際、頭に入れておいてください。


サーヤが真剣な顔つきになっている。仕事モードだ。


パフェっ娘との契約。


果たしていくらかかるのか、またエリさんがどんな人間なのかもわかっていない。


サーヤにならって俺も気合を入れ直した。


フトシがるんるんで七瀬ちゃんと盛り上がっている。


おかげで室内の雰囲気が非常に明るい。


ビジネスモードに入ったサーヤと3人きりだったら絶望的な空気だったろうなと俺は思った。


エリちゃんがテーブルに4つのスイーツカップを並べた。


ーーーーーーーーーー


特記事項1.彼女は能力的に未熟な可能性が高い。


パフェっ娘スキルは成長期があり、その時期に特定フルーツの調理を繰り返し行うことで付与するバフを強化することができると言われています。


成長することができる年齢は限定されていて13~18歳です。彼女は見るからに幼く、契約下限年齢の13歳に近いでしょう。


したがってパフェっ娘としての能力は発展途上と推測されます。


ーーーーーーーーーー


多くの企業では見た目の幼さや年齢だけで門前払いすると思います、と彼女は付け加えた。


俺はエリさんのステータスを閲覧する。年齢は13歳。ふむ……


スプレッドシートに俺も書き込む。


『コンテストに出られるのって生涯で一度だけなんだよな?成長期があるなら、普通18歳で契約して出場を目指すのが普通じゃないか?』


『そのとおりです』


エリさんがテーブル越しにこちらを見る。テーブルの上には5種類のフルーツが並べられていた。


「どうぞ、一席お付き合いください」


エリさんが氷を上に投げ上げる。と、両手に持ったナイフが目に見えない速さで動き、氷を切り裂いた。


キンッという音ともに微細な氷のカーテンが広がり、輝きながら揺れ落ちた。


ーーーーーーーーーー


特記事項2.彼女は通常のパフェっ娘と異なる存在である可能性が高い


調理に使うナイフと別に腰に双剣を付けています。私でもなかなかお目にかかることがないくらいの装備な気がします。幼い女の子が持つには明らかに高級すぎる代物。


......あれいくらするのかしら?売ったらいくらに『おい』


......すみません。通常のパフェっ娘は後方支援のみであるため武器を持ちません。違和感があります。


また、パフェっ娘は生涯に一種類のフルーツのみを捌くのが一般的です。


複数種類のフルーツを捌いているパフェっ娘は、バフの効果が著しく低くなると言われているため、敬遠される傾向があります。


『かごの中、見えるだけでも7種類以上はあるな......』


はっきり言って『異常』です。おそらくパフェを食べたところで説明があると思いますが……


『そういえばヴィクトリアさんのパフェもフルーツは一種類だったか』


そのとおりです。


ーーーーーーーーーー


エリさんの手捌きは神がかり的だった。


フルーツカップの中にフレークがカラカラと音をたてて敷かれたと思ったら、4皿同時に飾り切りされたフルーツが載せられた。


生クリームの層ができたと思ったら、上にプリンがぷるるんと落ちる。プリンの揺れが収まる頃には5種類のフルーツが少量ずつプリンの横に整列していた。


フルーツがきらめくパフェが4つテーブルの上に並ぶ。


「どうぞお召し上がりください」


「「いただきまーす!!!」」


俺たちはそれぞれパフェを手に取り口に入れる。


うめぇ。いや、うん、とても美味しい。


なんだろう、ヴィクトリアさんとは違う、優しい、いくつでも食べたくなるようなあっさりとした甘さだ。


ヴィクトリアさんのパフェを形容するなら洗練された、濃厚なといった形容詞が思い浮かぶ。


扱うフルーツ自体の差もあるかもしれない。俺は食べながらそう思った。


「美味しいんだお!」


「うん、美味しいです」


「あ、ありがとうございます!」


エリさんが少し嬉しそうな顔をしている。


「でも、あれ、バフはないのかお?」


全員が思っていたことだが、空気が凍る。


フトシもやばい雰囲気を察したのか、顔から汗が流れている。


いや、正直聞いてくれてありがたいよ。


エリさんは苦笑いしながら言った。


「すみません。バフはないんです」


「八千代流ですか?」


「はい。おっしゃるとおり、八千代流で修行をしております」


サーヤの質問を肯定で返した。新出ワード、八千代流。メモメモ。


「八千代流ってなんなんだお?」


「60年前、八千代という方が、王国のパフェっ娘トーナメントを前代未聞の修行の末に優勝したんです」


エリさんが説明する。


「パフェっ娘は通常、一種類のフルーツの調理を繰り返します。そうするとバフの効果がどんどん成長していくんです」


「その反対、多くの種類のフルーツを調理すると、パフェっ娘は運動能力が伸びると言われています。それを突き詰めるのが八千代流なんです」


「ちょっと待ったお。パフェっ娘トーナメントってバフの効果を競うんじゃないのかお?」


「えっと、パフェっ娘はパートナーと組んで出場するので、バフを受けたパートナー同士で決闘をして、その勝敗でバフの効果を比べるんです。八千代流のパフェっ娘は1人で出場して戦います」


「君が戦うのかお?」


「はい」


「な、なるほどだお」


見るからに上等な武器を持ってはいるが、目の前の少女がゴリゴリの冒険者のおっさんたちと戦うとなると少し不安を感じてしまう。


話の流れ的に相手だけバフがかかっているって感じじゃないか?非常に不利に思えるのだが。


フトシも不安げにエリさんの話を聞いていた。


ーーーーーーーーーー


特記事項3.八千代流はタブー


八千代流は彼女を真似た数百人のパフェっ娘の人生を狂わせた王国のタブーです。


エリさんの言う通り、パフェっ娘が複数種類のフルーツを扱うことで一定強くなると言われていますが、か弱いパフェっ娘が多少強くなったところで戦闘スキル持ちの冒険者相手には到底歯が立ちません。


おまけに複数種類のフルーツを扱うことで、パフェっ娘の最大のメリットであるバフの付与能力が消滅します。


実際、数百人のパフェっ娘が八千代様を真似て八千代流の修行をしましたが、バフを失い、誰一人八千代様のように強くなれないままに終わりました。


ーーーーーーーーーー


地獄みたいな情報だなぁ……


まぁエリさんの話をとりあえず聞いてみようか。


「エリさんは契約にあたって私達に何をお望みでしょうか?」

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