帰ってきました
「いやあ、こんな短時間で3頭討伐とはね凄いじゃないか、はい報酬」
ギルドに帰ってきた俺達は受付けでヴィゼルから報酬を貰い、食事処に向かった。
空いている席に朝の様に座り、遅めの昼食を頼む。
なんだろう、朝よりメリカちゃんの距離が近い。
今朝は少し間を開けて座っていたが、今はピッタリくっついて座っている。
可愛いのう。
「まずは謝罪から。
ごめんなさい! セツナ君、メリカちゃん!間違えて複数討伐のクエスト受けてました!」
冷や汗をダラダラ流しながらユイリちゃんが頭を下げてきた。
どうにも最初は鎧岩熊が一匹、近隣の森に現れたので討伐してください。
というクエストを受けるつもりだったらしいが、その横に貼られていた南の森に現れた鎧岩熊を複数討伐するクエストを間違えて受けていたらしい。
「まあまあ、無事に終わったわけだし。
報酬も手に入ったから気にはしないよ、俺達も依頼書をちゃんと確認していたわけじゃないし」
「私も、初めてのパーティー戦を経験出来たので、良いです」
メリカちゃん良い子や、撫でとこ。
「いやあそれにしても、セツナ君のアレってやっぱり闘魔武神流ってやつなの?」
「いや、オリジナルだよ」
ん、でもそう言えば俺のアレを闘魔武神流として広めたと言うなら、俺も闘魔武神流とやらを使っている事になるのか?
「素手でグレートボアを倒したって話し、ホントだったんだねえ」
「冒険者やってると面白い出会いがあるものね」
ユイリちゃんとリリルちゃんの言葉に黙って耳を傾けるメリカちゃんの顔がどことなく寂しそうだ。
好きな子の寂しそうな顔はあまり見たくない。
話題を振ってみるか。
「メリカちゃん、初めてのパーティーはどうだった」
「えっと、楽しかったです。
1人だと誰かとお喋りしながらクエストはできませんので」
メリカちゃんは笑顔を向けてくれたけど、やっぱり何か寂しそう、というか残念そうというか。
「仮とか言わないでさ! このままパーティー組んじゃわない私達!」
「あの、でも私――」
ん〜、なんだろうなあ組みたいけど組めない、みたいな。
「メリカちゃん、なんでこれまでソロに拘ってきたの?
パーティー組むのが嫌だったってわけじゃないんだろ?」
もしほんとに嫌なら仮とはいえ今回のパーティーも組まなかったろうしなあ。
「私、嫌なんです。
仲良くなった人達が先に死ぬのを見るのが」
「それはクエストに負けてとかそういう事――」
「いえ、そういう事ではないんです。
私には、エルフと竜人族と人間の血が流れてます」
しかも先祖返りしてるって事は竜人族の血が濃く出たって事だ。
寿命何百年になるんだろうなあ。
あ〜もしかして、問題はそれか?
「同じパーティーになった人が、友達になったみんなが老いていくのを見なくちゃいけない、死んだ時も見送らなくちゃいけなくて。
せっかく友達になれても、過す時間が違うのが怖くて」
「分かるよメリカちゃん、よくわかる」
俺も転生を繰り返してるからなあ、友達と友達の孫を見送った時はキツかったなあ。
でもそれは仕方ない、本当に仕方ないんだよ。
「だけどメリカちゃん、もったいないよ。
せっかくこの世界に生まれて冒険者やってるんだからさ、死ぬ死なないどうこうよりも、出会いは楽しまなくちゃ」
じゃないと、見逃しちゃうからなあ。
この世界がどんなに広くて、綺麗で、面白いかって事を。




