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転生冒険者の異世界生活  作者: リズ


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33/207

対鎧岩熊戦Ⅱ

 今回はスキル“武芸の極み”は無しだ、また殴った場所が消し飛んじゃう。

 目標の鎧岩熊まで一歩、二歩、三歩と最早走っているのか跳んでいるのか、俺は鎧岩熊の前に飛び出し、一撃、握った拳を威嚇の為に立ち上がった鎧岩熊の腹に打ち込んだ。

 普通ならただの熊にすら効かない拳による打突。

 しかし、俺の一撃の痛みで鎧岩熊は体をくの字に曲げた。


 「メリカちゃん! 頼むよ!」


 「行きます!!」


 下がった頭を蹴り上げ、宙に舞う鎧岩熊。

 恐らくこの時点で熊は意識を失っていたと思う。

 ジタバタ抵抗するでなく、最後の断末魔をあげるでなく。

 宙を舞った鎧岩熊は、今朝メリカちゃんが俺に放った錐揉み式回転斬りで、首の右側から左脇にかけてを袈裟に斬撃を受け、真っ二つになって絶命した。


 「うーん、血の雨が――」


 俺の上で真っ二つになったらそりゃあ血は俺に降るよなあ。

 ベトベトになっちまった。

 あってよかった生活魔法、洗浄洗浄。

 さあこっちは終わった、ユイリちゃんの状況はどうだ。


 「この! く、コイツ!」


 1人でよく耐えてくれてるな。

 盾で攻撃を弾き、逸し、隙きを見て剣を突き出している。

 盾にこだわるなら剣よりも長い槍や鉾の方が相性が良さそうだ。

 盾を捨て、攻撃に特化するならハルバードとかも相性が良さそうだなあ。

 考察してる場合じゃねえわ、援護に行かないと。


 「グオォオオ!!!」


 一歩踏み出した瞬間だった。

 鎧岩熊が咆哮を放った。

 あまりの大声につい俺もメリカちゃんも耳を塞いでしまった。

 ユイリちゃんの前に立ち上がった鎧岩熊が地面を叩く。


 「あっ、ヤバ!!」


 魔物が魔物たる所以、ただの動物との一番の違い。

 それは魔力を体に宿している事、もう一つは魔法を使う事だ。

 鎧岩熊が発動した魔法は自分の目の前の地面を隆起させるもの。

 標的だったユイリちゃんの足元が勢い良く隆起し、俺とメリカちゃんが倒した方の鎧岩熊よろしく、宙に投げ出されてしまった。


 「メリカちゃん! 熊引き付けて!」


 「は、はい!」


 まさか、俺とメリカちゃんの攻撃を真似たのか?

 鎧岩熊が宙を舞うユイリちゃんに牙を剥く。

 このままではユイリちゃんは熊の牙に引き裂かれてしまうかも知れない。

 だが俺の方が、速い! 


 「あ、ありがとう、セツナ君」


 「危なかったな、大丈夫か?」


 間一髪、ユイリちゃんを抱えて助け出す事が出来た。

 いかんな、油断していた。

 もっと気を引き締めないとなあ。

 

 「グオォオオ!」


 今度の咆哮は先程とは違い、痛みから来る怒りの声だ。

 見ると、メリカちゃんを狙って攻撃した熊が空振った隙きに、大剣で装甲のない熊の足を斬りつけては駆け抜け、ヒット&アウェイを繰り返していた。

 

 「いやあ大剣担いでるのによくやる」


 「凄い、アレが氷剣姫って呼ばれるメリカちゃんの戦い」


 リリルちゃんが放った氷魔法、氷の槍を脇に受け、よろけたところをメリカちゃんが口に大剣を突き立てて、決着となった。


 「割とあっさり終わったなあ」


 「あ、あのセツナ君」


 「どした?」


 「そ、そろそろ降ろしてもらいたいなあって」


 「あ、ああごめん」


 ユイリちゃんを助けてからずっとお姫様抱っこしていた。

 ユイリちゃんの顔が赤い。

 怪我はなかった筈だが大丈夫だろうか。


 「ユイリさん! お怪我ありませんか!?」

  

 「ユイリ大丈夫!?」


 「え、ああうん大丈夫大丈夫、ちょっと心奪われそうになったというかなんというか」

  

 駆け寄ったメリカちゃんとリリルちゃんが心配そうにユイリちゃんの顔をみている。

 顔が赤いのは俺のせいか。

 すまん、デリカシーが無かった。

 いや、でも緊急措置だったし仕方なくね?

 もしかして抱えたときに変なところ触ったか?

 そうなら、ホントにすまん、許して。


 「セツナさん格好良いですよね」


 「うん、格好良いと思っちゃった。

 ごめんねメリカちゃん、メリカちゃんの彼なのに」


 うん? 話がややこしい事になりそうだぞ?


 「さあ、早く回収してギルドに報告しよう」


 軌道修正だ、急げ!

 回収は3人に任せるか、俺は一応、気配感知で周囲の警戒を……ん?敵対反応が森の方から向かって来るな。

 あれ? これって俺の――


 「グオォオオォオオ!!」


 後ろから鎧岩熊がもう一匹、まだいたのか! 


 「セツナさん!!」


 デカい、さっきの二頭の倍はある大きさだ。

 その熊が俺に向かって大木のような腕を振り下ろしてきた。

 避けるか?

 いや、ここは受けるか。

 好きな子に良い所見せたいし!


 「鎧岩熊の攻撃を人が受けた?」


 「しかも、素手で?」


 ユイリちゃんとリリルちゃんびっくりしてるだろうなあ。

 俺も急に熊出てきてびっくりしたもの。

 黒い体毛に幾何学な赤い模様。

 鎧岩熊の激昂状態だな。

 仲間を殺されたんだ、怒って当然か。


 「グオォオオ!」


 空いている方の腕も振り下ろしてきたか、良いぜ、力比べだ。

 

 「グ、ォオオ」


 迫力ヤバいな。

 だけどお前さんも驚いてるだろ。

 自分より遥かに小さい奴に攻撃受け止められて。

 離してほしいか、なら離してやるよ。

 引っ張っている手を離されたらどうなるか、答えは簡単、体勢を崩す。

 その体勢を崩した鎧岩熊目掛けて俺は飛び上がり魔力を手に集中さた貫手を胸に目掛けて放った。

 放った貫手は熊の胸に穴を穿ち、手を抜くと血が激しく噴き出す。

 運良く急所を捉えたようだ。

 鎧岩熊はそのまま絶命した。

  

 「セツナさん凄いです!」


 「鎧を、貫いたの?」


 「鎧岩熊って素手で倒せる魔物じゃないよね? 違うよね!?」

 

 違います、普通倒せません。

 よい子は絶対に真似しないでね。

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