再会
白いベッドの上に、全身を包帯で包れて寝ている。
まだ自分で起き上がることはできない。
顔も包れているが、左目のあたりの包帯に隙間があり、周りの様子はわかる。
口のあたりも開いていて、会話や、水、薬を飲んだりはできる。
胸の包帯の隙間から出ている紐が、見たことない光る箱につながっている。
起き上がれないので、その光る箱が何かは良く見えない。
世話をしてくれる白衣を着た侍女が、たまにその光る箱をみて、
紙に何か書き留めている。
腕には、何か柔らかい管のようなものが刺さっていて、
その管の先は、上に吊られているガラス瓶につながっている。
ガラス瓶には色のついた水が入っているようだ。
白衣の男からは管が外れないように注意するよう言われている。
その白衣の男がマリーローズを治療している。
医者ではないようだ。まず、医者や薬師のいでたちではないし、
その男の「治療」は、マリーローズが知っている、「医者の治療」ではない。
飲まされる薬も、薬草を煎じたり、煮詰めたりしたものではない。
白い豆のようなもので、味はしないし、飲むときに噛まないよう言われている。
本当に不思議な場所だ。皇国軍の研究施設だと教えられた。だから安心して欲しいと。。。
救出されたマリーローズは、皇城で応急処置をうけ、ここに運ばれた。
助けてられてすぐに気を失ったようで、その後のことは覚えていない。
目を覚ますと、今の状態だった。
それから何日たったのか、全くわからない。
一度目を覚ましても、またすぐに眠り、何日を目を覚まさなかったりしていた様だ。
それをしばらく繰り返していたが、最近は起きている時間も長くなった。
会話もずいぶんできるようになった。
死んでもおかしくない状態だったと、白衣の男は言っていた。
先日からは、寝たままではあるが、体を動かす訓練も始めた。
ゆっくりと、補助してもらいながら、腕、足、腹などを少しずつ動かして解す。
これをすれば、回復が早くなるのだと教えられた。
今日も、いつものように白衣の男が治療の為に入室してきた。
中肉中背で、丁寧な物腰の男だ。
動作に無駄な動きがなく、余計なお喋りは一切しない。
最初に自己紹介された記憶があるが、はっきりと覚えていない。
名を聞き直すのが申し訳なく思えているうちにタイミング逸し、未だに姓名を知らない。
「お加減はいかかでしょうか皇女殿下?何か問題はありませんか?」
上に吊られている瓶の中身の残量を確認しながら、白衣の男は言った。
「大丈夫です。」
マリーローズは、か細い声で答える。まだ大きな声は出しにくい。
「実は、本日は御客様が見えられています。面会は大丈夫でしょうか?」
御客様? マリーローズに心当たりはない。
「大丈夫です。通してください。」
「承知いたしました。ではそのように御伝え致します。」
一通りいつもの治療を終えた後、白衣の男は一礼して、退室した。
しばらくして入ってきたのは2ヶ月ぶりに会う、妹アレクサンドラだった。
「姉上様!」
アレクサンドラはマリーローズを見つけると駆け寄って、縋り付いた。
少し苦しかったが、かまわない。アレクサンドラの小さい肩に、右手をかけた。
「アレクサンドラ。無事だったのですね。よくぞ無事で。。」
か細い声だったが、それでも気持ちが高ぶっているのはわかる。
「姉上様も、姉上様も」アレクサンドラは堪えきれなかったのだろう、泣きじゃくった。
マリーローズが救出されたことは、最近までアレクサンドラには伏せられていた。
状態が状態だった。
その惨たらしい姿でアレクサンドラに会わせるのは、
両者にとって良いことはないだろうとの側近たち全員の配慮だった。
ようやく、体力が少し回復し、会話ができるようになったが、
当初は日常生活ができるようになるまで、あと3ヶ月程は事実を伏せておく予定だった。
しかし、皇位継承の事情から、ようやくアレクサンドラに事実が報告された。
アレクサンドラは報告が遅れたことを咎めることはなかった。
逆に側近たちの思いやりに感謝したが、
とにかく一刻も早く会いたいと、ここ兵器研究所まで来た。
「陛下 や 殿下、母上様は?」
アレクサンドラが落ち着いたのを見計らってゆっくりした口調で聞いた。
「・・・・。陛下も、兄上様も、母上様も、、あの日。。」
そう言ってアレクサンドラは絶句し俯く。
「そう ですか。。あの時、あなたはどうしていたの?
あなたを 城で 見ていない ような 気がします。」
「私は、、、あの日、早朝から市中にでかけており、難を逃れました。」
アレクサンドラはあの日からの出来事をゆっくり話し始めた。




